「MASTERキートン」(1998年作品)第30話 感想 | 深層昭和帯

深層昭和帯

映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

原作:浦沢直樹・勝鹿北星・長崎尚志、監督:小島正幸、制作:マッドハウス。

 

 

第30話(瞳の中のハイランド)

 

キートンはダグラスという名の老人を邸宅から外へ連れ出したが、すぐに追手に捕まってしまった。

ダグラスは画家だった。彼は様々な作家の新作贋作を描いて市場に出し、贋作の疑いがあるのに高値で取引されて保険を掛ける者もいた。調べてみるとその作品はフェリスという人物を通して市場に出されていた。そこでキートンはダグラスを調査に来たのだった。

捕縛されたキートンは逃げられないように脚を折られてしまった。

ダグラスは貧しい家の生まれて美大もちゃんとは卒業しておらず、古い作品の修復をして暮らしていた。ある日ゴッホの作品の模写をしているときに何かに憑りつかれたようになり、一気に筆を走らせてみると完全なゴッホの作品が出来上がっていた。

それからは有名画家の模写に取り組み始めた。彼には有名画家たちの情念が乗り移ったかのようだった。そして彼は新作の贋作を描くことを始めた。それは評判になって絵は売れ出した。金に不自由することはなくなった。

一方で彼はそれは有名画家たちの情念が絵を描いているのであって、自分はそれを傍で眺めているだけではないかと思うようになった。そこでオリジナルに挑戦しようとしたが、何を描いていいのかわからずオリジナルはいっこうに進展しなかった。彼は自分を見失ってしまったのだ。

ダグラスは貧しい故郷の風景を描き出した。そこへやってきたのがキートンだったのだ。キートンはダグラスに故郷の風景を描けばきっと自分を取り戻せると勧めた。

キートンはありあわせの道具で即席の爆弾を作った。電気のスイッチを入れるとそれは爆発し、ふたりは逃げ出した。追いかけてきたフェリスに眼を殴られたダグラスは、何故か自分の視力が回復していることに気づいた。眼が見えるようになったダグラスはフェリスを椅子で殴りつけて屋敷を出た。

隠してあったキートンの車でふたりは森の中の隠れ家を脱出した。

<雑感>

絵を描く道具も組み合わせて使えば爆発を引き起こせるという知識と、角膜についた傷がたまたま近視を治してしまう現象などを組み合わせた物語。それに模写をしているときに自分が自分でなくなるような錯覚に陥り、まるで本物の画家のようなタッチで描けるとの逸話も、感覚的に理解できるものだ。

創作の悦びとそれを失う悲しみに、科学的知識による再認識が組み合わせてあって二重に楽しめる回だった。