「メトロポリス」(2001年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

りんたろう監督による日本のアニメ映画。原作:手塚治虫。



<あらすじ>

生体人造人間製造の罪でロートン博士を逮捕するため、私立探偵の伴俊作は甥のケンイチとともにメトロポリスへやってきた。メトロポリスはロボットに仕事を奪われた労働者がテロ事件を起こす都市だった。その地下でに潜ったふたりは、レッド公の死んだ娘そっくりな人造人間の少女ティマを発見した。

レッド公はティマそっくりのロボットを自分で引き取り、世界征服に向けて動き出した。一方でロボットを激しく憎むロックは、ティマがロボットであることを証明しようとした。ところが胸を撃たれたティマが自分の素性を知り暴走状態になった。

一瞬だけケンイチのことを思い出したティマは自殺するように炎の中に身を投じた。

<雑感>

何度も見た作品だが、感想記事がなかったので手塚作品と一緒に書いておく。この映画は監督こそりんたろうだが、丸山正雄と大友克洋のプロジェクトで、手塚プロの最高傑作。変に新しいキャラクターデザインに寄せず、手塚キャラをそのまま現代風のアニメとして動かせるようデザインし直し、背景やモブに至るまで手塚的な世界観をそのまま踏襲している。

動かし方は手塚キャラをよりそれらしく見せるために初期のディズニー風になっている。まぁこれほど動かしてあるアニメは他にない。宣伝に金をかけなかったのか、不当に低評価になっていることに怒りがこみ上げる。アニメ映画のひとつの到達点ともいえる作品である。

手塚作品を原作通りに作ろうとすると、漫画の絵柄に近づける努力をしてしまい、背景などが古臭くなってしまう。古臭さを取り除こうとすると、現代風になってしまい原作の魅力が削がれる。このジレンマが難しいところであったのだが、この作品は原作の細かい点をブラッシュアップすることで手塚作品のアニメのクオリティを限界まで高めることに成功している。

こんなに手間がかかることをやり遂げたのは、細部にこだわる大友克洋の感性があってこそだろう。動きの素晴らしさだけでなく、美術の完成度の高さは信じられないほどだ。ライバル視していた大友克洋の尽力でこの「メトロポリス」が完成したことを生前の手塚が見たら、感嘆と嫉妬で大変なことになっただろう。手塚プロでは到達できなかった理想のアニメを、ひとりのクリエーターが作ってしまったのだ。大友克洋なしにこの作品のクオリティはなかった。

☆5.0。満点が5点だからこの点数になっているだけで、作品の評価は無限大にまで高まる。もうこれほどのクオリティの手塚原作アニメは作られないだろう。