「剣風伝奇ベルセルク」(1998年冬作品)第18話 感想 | 深層昭和帯

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原作:三浦建太郎、監督:高橋ナオヒト、キャラデザイン:松原徳弘、制作:OLM TEAM IGUCHI。



第18話 炎の墓標

毒胚をあおったグリフィスはその場に倒れこんだ。毒を盛った男は馬で城外へ走り出したが、フードを被った剣士に討たれて死んだ。フォスはそのことを暗殺に賛同した人々に話し、安心させた。彼は一足先に部屋を辞した。残りの者らでまた祝杯を上げようとしたところ、床から煙が舞い上がった。

フォスは彼らを裏切り、謀に加わったすべての人間を焼き殺したのだ。王妃がテラスから見下ろすと、そこにグリフィスが立っていた。彼はフォスが自分を殺そうとしていることを見抜き、彼の家族を誘拐して恫喝していたのだ。王妃は呪詛を口にしながら死んでいった。

フォスの家族は解放され、誘拐に加わった男たちは報酬を受け取った。しかし彼らも毒を盛った男たち同様にフードの男に惨殺された。男はガッツだった。王妃の葬儀はしめやかにおこなわれ、グリフィスも何食わぬ顔で参列した。

平和なまま冬がやってきたある晩のこと、ガッツは荷物をまとめて宿舎を抜け出した。その姿を認めたキャスカは、とうとうこの日が来たのかとガッツを追いかけ、出ていかぬよう説得しようとした。

<雑感>

ガッツが鷹の団を抜け出た理由は、グリフィスと対等な立場から真の友として並び立ち同じものを見たいと思ったからだ。グリフィスとシャルロット王女との会話を耳にしたガッツには、グリフィスの考える友が自分が考えている友とはずいぶんと違い、その立場とはどんなものかと興味を持ったのだ。

鷹の団にいる限りその立場に慣れないと感じたガッツは、団を抜けて放浪の旅に出た。動機は、ナリスの存在を知って、このままではいけないとリンダの傍を離れていったイシュトヴァーンと同じだ。

ここの部分を漫画で読んでいたとき、すでに三浦建太郎が「グイン・サーガ」のファンだと知っていたので、グインが中原を離れ、諸国を放浪しながらケイロニアに流れ着き、そこで豹頭王になってリンダなどと並び称される英雄になった経緯をガッツがなぞるのだとばかり思っていた。

その流れは基本的には変わらなかったのだが、レムスがヤンダル・ゾックの傀儡となってパロを魔都に変貌させたようなことは起こらないだろうと高を括っていた。ところが、ガッツの離反、グリフィスの失態と続いたのちにガッツが以前のままひょっこり戻ってきて、グリフィスを救出するというから「あれ、このまま元の鷹の団に戻るのか?」と首を傾げていたら、あれよあれよと蝕になった。

蝕により、ミッドランド王国は魔都となり、まさにレムスが支配するパロのようになった。そしてここからガッツの本当の旅が始まり、どこぞの王になってミッドランドと戦うのかと思いきやファンシーな展開になっていった。ガッツはあくまで人であり、グインのような異能の存在ではないことから、周囲にそうした人物を配したのだろう。

そしてガッツ御一行様が完成した暁には、グインがパロ解放のためにケイロニア軍を率いて侵略(解放戦争)してきたように、ミッドランドに攻め込む流れだったはずだ。キャスカがアウアウアーから元に戻り、今度こそと思っていた矢先、三浦建太郎は書きかけの「ベルセルク」を遺して死んでしまった。もうダメだ、すべて終わったと諦めていたのだがな。

ありがとう、森恒二。ありがとう、白泉社。でも、今度はオレの寿命が尽きそうだ。