「坂道のアポロン」(2012年春作品)第1~2話 感想 | 深層昭和帯

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仕事帰りに借りてきたんだけど、いいね、これ。



ジャズが好きということもあるけども、ちょうど石原裕次郎の映画でもまとめて鑑賞しようかななんて思っていたから、気分にぴったりだった。

前期から「俺物語!!」という作品がやってるけど、あの作品でほぼギャグとして扱われているナイスガイ剛田猛男みたいなのが、当たり前にクラスにいた時代のお話だよね。剛田猛男の強さや優しさは今風になってるけど、男は本来はもっと荒々しいんだよ。時代を遡ると、剛田猛男はもっと自然に描けるんだよね。

オラついてるとか、ヤンキーだとか、そんなのじゃなくて、もっとガサツで、猛々しくて、力がありあまりすぎて女の子に手を出すのを恐れるのが男なんだよねぇ。「坂道のアポロン」の川渕千太郎(かわぶち せんたろう)はいいわ。千太郎と西見薫(にしみ かおる)が通う高校の雰囲気が、凄く懐かしい。オレは高校は進学校だったけど、中学は公立でかなり荒れていたんだよな。碌でもない奴は多かったけど、ネチネチしてないから気分は楽だった。

オレの中学時代よりかなり前の、進駐軍がそこらじゅうで私生児を作りながら、日本が独立するや子供も女も放ったらかしでアメリカに帰って、親のない子供がたくさんいた時代。当時は、ハーフじゃなく、「あいのこ」って呼ばれていたはずだ。知るはずがない時代のお話だけど、映画や文学にたくさん触れてきたから、なんとなく雰囲気はわかるんだよ。

荒んだ時代だったけど、みんな必死で、活気のあった時代だよね。


作品の内容はまた別に感想を書くけど、実はこの作品に登場する高校生らが大学に入って70年安保闘争をやらかすんだよ。いわゆる団塊の世代。作品内でも描かれているけど、団塊の世代の親は、戦争に参加した世代で、戦後は闇雲に働くしかなかった世代。戦後、貧乏で米軍の兵士に身体を売って、妾になって、すぐさま捨てられたのも、団塊の世代の親たち。彼らは団塊の世代が反抗期になったとき、親の威厳を示せずに、黙ってしまうしかなかった気の毒な世代なんだ。

団塊のバカどもは、ただの反抗期なのにすぐに戦争と敗戦のことを持ちだして、親を論駁した気になっていたんだよね。反抗期に親に押さえつけられることのなかった団塊のバカどもは、そののち箍の外れた人間になってしまう。抑えの効かない、人間のクズになっていくんだ。もう70歳近い年齢になってるけど、歴史的な背景を一切考慮せず自分が見たことだけがすべてだと思ってるだろ? あれは、親と向き合わなかったツケなんだ。戦争を持ち出せば親でさえ黙ったのに、歴史を勉強した若者が平然と反駁してくることが信じられないんだよな。

反抗期って、親のことを知ろうとする良い機会で、自分を歴史の一部に置いて考えてみようとする、大事な出来事なんだ。

ということを、考えながら見ていた。

団塊の世代でも、千太郎や薫のように、心の片隅に親の影がある人間は、まともに育った。そうじゃない奴は、知っての通りのゴミばかりだよ。