「白鳥」(1966年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

西河克己監督による日本のドラマ映画。出演は吉永小百合、渡哲也、関口宏。

 



<あらすじ>

何不自由なく育った麗子は、大学卒業後の結婚も決まっていた。そんな折、運送業であくせく働く近藤と知り合った。近藤は不治の病に冒された妹千津の治療費のために必死に働いているのだった。婚約者の昭一は麗子のことが気がかりでたまらなかった。

万葉集に自分と同じようにふたりの男を愛した女が自殺する句があると知った彼女は、いったん婚約の破棄を申し出た。すると、麗子は母が叔父と浮気してできた子であるとわかった。ショックを受けた彼女は、叔父をなじったが、彼は何も答えられなかった。自分の母もまた、ふたりの男を愛したのだった。

昭一に身を委ね、近藤のところに赴いた彼女は、亡くなった妹千津の祭壇の前で呆然と佇む近藤とも身体を重ねた。そして彼女は、入水自殺をした。

<雑感>

赤いライトの中で女が身悶えると、とたんに日活ロマンポルノっぽくなるな。なんかもうそういう演出なんだな。母が嫌いだった吉永小百合作品の中ではちょっと異色というか、吉永小百合の個性が生かされていない作品じゃないかな。左翼臭いシーンもあるし、あまり好きではなかった。

当時まだ日本は貧しかったので、貧しい人間、恵まれない人間に同情することは、大学生なら当然と考えられていた。いまのように上級気取りで鼻から見下す人間ばかりの世の中よりずっとマシではあるが、貧しい人間、恵まれない人間に同情すること=共産党員になることだったから、結果として彼らの同情は意味がなかった。かろうじて意味があったのは、共産党員の医者が多かったことだろうか。

エリートっぽい昭一と、肉体派でドスの利いた声を出す近藤のふたりに股を開く麗子は、正直といえば正直であるし、渡哲也の役どころが効いていて悪くはなかった。「オレは山百合、おまえは雛菊」みたいな感じだった。

☆4.0。とはいうものの、吉永小百合にやらせる役どころだったかどうかは疑問が残る。