「栗山大膳」(1936年作品)感想 | 深層昭和帯

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池田富保監督による日本の史実を基にした時代劇映画。出演は大河内傳次郎、黒川彌太郎、鳥羽陽之助。

 



<あらすじ>

加藤・福島良家の断絶に危機感を持った黒田家は、藩主黒田忠之の乱交に心を痛めていた。忠之は側室お秀に夢中で藩政どころではない。藩士栗山大膳も心を痛めるひとりであったが、藩内の大勢は主君の意のままだった。そんなおり、お秀にそそのかされた忠之は、万石船を建造して密輸に手を染めようとした。万石船の建造は公儀の御法度、大膳は反対したが疎まれ長崎へ飛ばされてしまった。

万石船建造のために、年貢は3割も増やされた。領民の不満は日増しに募っていった。長崎にあった大膳のところにも万石船の建造は耳に入り、急ぎ戻ると彼は完成間近の船に火を放った。この一件を持って黒田家御取り潰しは免れたかに思えたが、黒田忠之は怒り狂い、栗山大膳から筆頭家老の地位を奪った。

忠義の名のもとに主君を諫めるをしない毛谷主水が変わって筆頭家老になり、遠ざけたはずのお秀を呼び戻し、さらに万石船の話を出すことから大膳は家臣でありながら主君を相手取って公儀に訴え出る挙に出た。前代未聞の出来事であったが、公儀は大膳の忠義を認め、黒田家の騒動は不問に付せられたが、改めて不忠の人間を遠ざけるよう言明された。

大膳の忠義は認められたが、主君を訴える所業は許しがたく、流刑と相成った。

<雑感>

1936年といえば昭和11年。祖父母が尋常小学校に通っていたころの作品だ。そう考えると感慨深いものがある。祖母は芸事が好きな人だったので、この作品も観ていたかもしれない。

日活の大スターだった大河内傳次郎は、戦前から昭和60年代まで現役で活躍。時代劇スターのひとりだった。与太者から剣豪まで幅広く演じられる役者であったが、この作品では主君の乱行に苦悩する家老を重厚に演じている。

☆4.2。黒田家は安泰だったのに、自分は流刑になり、不満があっても良さそうなものだが、御家安泰に涙し「ありがたき幸せ」と口にするところが泣かせる。