「敗れざるもの」(1964年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

松尾昭典監督による日本のドラマ映画。出演は石原裕次郎、十朱幸代、小倉一郎。

 



<あらすじ>

橋本鉄哉は高村家のお抱え運転手として雇われた。高村家には才気煥発な俊夫少年がいた。ふたりは仲良くなったが、俊夫の様子がおかしい。彼は難病だった。手術は成功したが、完治には程遠く、鉄哉は俊夫少年の冷静な観察と現代医学でも及ばない病に胸が張り裂けそうになった。

橋本鉄哉には昔のワル仲間が付きまとった。彼らは普通の暮らしを手に入れた鉄哉が疎ましかった。鉄哉は嵐の中で彼らを殴った。俊夫は静かに死んでいった。仕事を追われた鉄哉も、高村家に未練がなくなり出ていった。

<雑感>

この映画は昔WOWOWで初めて見て感動した作品。日活なので石原裕次郎が悪漢をぶん殴るシーンも入っているのだが、静かに生命が消えていく場面を石原裕次郎がそばで見つめているところが肝心な部分だ。

裕次郎演じる鉄哉は、頭は悪いが生命力に溢れている人物。彼にとって生きていることはごく普通のことに過ぎない。そんな彼が、天体観測が大好きな活発な少年の命が小さくなったり、消えかかったと思ったらまた大きくなったり、消えてなくなるのをじっと見ているのである。

その裕次郎の演技がまた何とも言い難いいい味を出している。

そしてラストシーン、彼はお抱え運転手として過ごしたガレージのシャッターを閉じて去っていく。シャッターは自動でガラガラと降りていく。それは物語の終わりであり、高村家と鉄哉との関係の断絶であり、男と少年の別れであるのだ。

☆5.0。この作品は確か兄の石原慎太郎も大好きだったと聞いたことがある。