「どろろと百鬼丸」(1969年作品)第8話(妖刀似蛭の巻・その二)感想 | 深層昭和帯

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仁木田之介という侍から妖刀似蛭を奪ったどろろは、剣の持つ霊力にあてられ、誰彼構わず斬りつけるのだった。



剣を取り戻すために数年ぶりに村へと戻った田之介は、妹おすしとの再会に喜びもせず、黙ってどろろが立て籠る小屋へとやって来た。彼にはどうしても刀を取り戻さなければならない理由があった。

村を出て主君に使えた田之介は、砦の普請を任されるまでに出世した。ところが主君は、砦の秘密を世に漏らさないように、仕事に従事した大工や工人を殺すように命じ、田之介に妖刀似蛭を授けた。

しばらく逡巡した田之介だったが、意を決して大工たちをすべてなで斬りにした。彼は戦場にも妖刀似蛭を携えて参陣し、多くの人間を斬った。するとこの剣は更なる血を求めて人を操り出した。それから田之介は流浪の身となって辻斬りを繰り返したのだった。

彼は責任を感じていた。似蛭に霊力があるのはわかっていたが、育てたのは自分だと思っていた。だからこそ彼は剣を傍らに置き、罪を背負う覚悟をしたのだった。

村人を先導してどろろから刀を奪った田之介は、次第に人が変わっていった。どろろを気狂いの子だと思って責め立てた村人は、駆けつけた百鬼丸が言う通り剣こそが妖鬼なのだとようやく理解した。狂った田之介は家に戻り両親を殺そうとした。

間に入った百鬼丸は、妹のおすしの制止を振り切って兄を助けようとしたが、兄はもうこの世のものではなくなっていた。田之介は百鬼丸と戦い、その強さに驚いた。だが妖刀似蛭はさらに血を求めて彼を狂わす。田之介はわずかに残った良心に従い、自分の首に刃を突き立て、これが最後の御馳走だと叫びながら自分の血を吸わせた。

百鬼丸は残された剣を叩き折った。すると剣から妖鬼が煙のように立ち上り、やがて消えていった。妖刀似蛭はこうして霊力を失った。

妖怪を倒した途端、百鬼丸は苦しみ出した。彼の義眼が地面に落ちた。その跡には本物の目玉が戻ってきていた。

百鬼丸は初めて見るどろろの顔に興奮した。だが、兄を殺されたおすしは百鬼丸を許すつもりはなかった。百鬼丸とどろろは、またしても村を追い払われた。

という話。これが50年前の作品ですよ。なんという面白さか。

悪いのは田之介に人殺しをさせた殿様や、いくさそのものであるのに、元来善人であった田之介には出世のために罪のない人間を手にかけた自分が赦せず、あえて我が身を捨て、流浪の狂人と悪評を受けながら決して勝てない相手を探して旅をしていたんですなぁ。

妖刀似蛭を他の誰かが持てば、その者に妖鬼が憑いて人を斬る。そうなれば、刀を譲った自分の罪になる。それならば自分が持って妖鬼に操られながら自分より強い者を探し出し、剣を交えて勝てぬと見込めば、必ずや血を求める似蛭は自刃を受け入れるだろうとの発想が良い。さすがは手塚である。

手塚作品などにこうして触れると、いまの深夜アニメはバカバカしくて観ていられなくなるな。