「桜桃の味」(1997年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

アッバス・キアロスタミ監督によるイランのドラマ映画。出演はホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ。

 



<あらすじ>

自殺志願者のバディは、墓穴に横たわった自分に声を掛け、返事があったら助け、なかったら土をかけて埋めてくれる人を探していた。声を掛けた人物はみんな不気味がって引き受けようとしなかった。神学生には自殺は誤りと諭され、それでも彼は諦めずに自分を埋めてくれる人を探し続けた。

トルコ人老人のバゲリは金が必要だったが、話を聞いて「悩みを打ち明けねば誰も君を助けられない」と説いた。彼自身も若いころに自殺を考えたが、首を吊ろうと登った桑の木でふと実を食べたことがきっかけで世界が違って見えたときのことを話して聞かせた。バゲリ老人は日常の中の美しさを彼に教えようとした。

バディはバゲリ老人に仕事を依頼すると睡眠薬を飲んで穴の中に横たわった。

<雑感>

バディがどうなったのかは重要ではないので描かれていない。この映画は世界が変わってしまう瞬間がこの世にあることを訴えるために作られているので、その目的を果たした後にバディが死ぬかどうかは問題ではないのだ。タイトルにある桜桃の味は、バゲリ老人が自殺志願者に伝えた鮮烈に感覚を刺激するものの中のひとつ。

☆5.0。これも良い映画だった。福島の白桃はもっと旨いぞ。