「千年女優」(2001年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

今敏監督による日本のアニメ映画。脚本は村井さだゆき。音楽は平沢進。



<あらすじ>

往年の大女優藤原千代子にインタビューを申し込んだ立花は、撮影中に拾った彼女の宝物の鍵を返した。それは大戦中に匿った画家が持っていた鍵で、彼は満州に逃げたきり消息不明であった。彼の行方を追いかけ満州に旅立った彼女は、映画の中の役のまま時を生き、彼を匿っていた蔵の中で自分の似顔絵を見つけた。

戦後結婚話が持ち上がったとき、千代子は鍵の男性に未練があって結婚に踏み切れなかったが、鍵をなくしたと思い込んで映画監督の大滝の元へ嫁いだ。ところが鍵は大滝が持っていた。そのことで諍いが起きた。鍵の君を追いかけていた特高が彼が北海道出身であることを教えてくれ、矢も楯もたまらず北海道へ旅立っていった千代子は、映画の中のシーンで月面で彼のイーゼルを見つけた。

映画のロケでロケットに乗った彼女は、撮影中の事故で鍵をなくしてしまった。立花が鍵を拾ったのはそのときであった。事故をきっかけにして彼女は銀幕から姿を消した。インタビューはそこで終わったが、本当は鍵の君はすでに特高に拷問にかけられて死んでいた。立花はそれを知っていたのだった。

鍵を再び手に入れた千代子は、再びロケットに乗り込むと、鍵の君を探す決心をする。ずっと想い人を追いかけていたからこそ、彼女は女優であることができた。

<雑感>

映像的にレートが高かった前作から万人受けする方向にシフトしたこのがこの作品。衝撃的なシーンがなくとも今敏は素晴らしい映画を作れると証明した。この作品も彼の精緻な描写と細かい演出が光っている。細部にこだわる姿勢は本当に素晴らしい。

アカデミー賞は今敏を見逃した時点で終わった。バカな連中である。この作品は引っ越しがあった年だったために、劇場鑑賞はできずにのちにDVDを購入した。当時ちょっと絵を描いていたので、コミッカーズという雑誌に宣伝がたくさん載っていたのを思い出す。あんなマイナー雑誌に広告を出してどうなるものでもないと思うが。

☆5.0。個人的に今敏の最高傑作はこれだと思っている。しかし好みの問題もあるので、異論はあろうし、好きな作品を支持すればいい。遺された4本の長編はいずれも傑作である。