「雄呂血」(1925年作品)感想 | 深層昭和帯

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二川文太郎監督による日本の時代劇映画。サイレント作品、弁士付き。出演は阪東 妻三郎、関美沙尾、環歌子。

 



<あらすじ>

正義感の強い久利富平三郎は、卑劣なことが許せず心の汚い人間を懲らしめているうちに師匠の勘気を買い破門されてしまった。1年の流浪のうち、彼はすっかり落魄し、かつての彼ではなくなった。やることなすこと上手くいかず、知り合った男はろくでもない人間。しかも彼が強姦しようとした旅の女はかつての彼の恋人奈美江であった。彼女は結婚していた。

かつての綺麗な心を取り戻した平三郎は、男を斬って捨てた。集まってくる岡っ引きたち。彼は多勢に無勢で捕まったが、奈美江夫婦は必死に彼を拝んでいた。

<雑感>

戦前のサイレント映画でこうした剣客ものはかなり珍しい。しかも全編残っているとは。

さらに講談風の弁士の音声が入っていることで分かりにくい字幕を追う必要もない。落魄という言葉が当たり前のように使われていて、前後の文脈から意味も分かるので、子供でも落魄という言葉を理解して覚えることができる。難しい言葉を使わない昨今の風潮は子供をバカにしますなぁ。

☆5.0。貴重なうえに、この上なく面白い。清廉であるがゆえに嫌なことばかり背負い込む人間はいつの世にもいるもので、普遍性も高い。