第93話 矜持にかけて
<あらすじ>
惑星ウルヴァシーにおける反乱の報がノイエラント総督ロイエンタールに届いた。
彼は一刻も早く皇帝ラインハルトを探し出して身柄を確保するように命じた。もし皇帝がフェザーンに戻ってしまえば自分は罪人である。身に覚えのないことで罪人扱いされるのは彼の矜持が許さなかった。
彼の元に更なる凶報が届いた。それはルッツの死である。ルッツが死んだことでノイエラント総督として彼の責任は免れなくなった。少なくとも彼はそう受け取った。
反逆者になることを彼は怖れなかったが、反逆者に仕立てられることは彼のプライドが許さなかった。すでに1度反逆の嫌疑を受けている身で、さらに2度となると少なくともオーベルシュタインは彼を粛正するためにあらゆることをやるだろうと思われた。
彼は自らの露悪趣味と矜持の高さが徒となり、ついに本物の反乱者となる決意を固めた。
まず彼が手を打ったのは、イゼルローン要塞に対して帝国からの侵入を防ぐよう要請することであった。今回の戦争はフェザーンとハイネセンによるものだったので、彼は己が目的を旧帝国領と定め、ラインハルトに勝利したのちは旧同盟領を彼らに明け渡すという大胆な版図形成を描いた。
ロイエンタールの命を受け、惑星ウルヴァシーの暴動鎮圧と真相解明を行ったアルフレット・グリルパルツァーは、武断的手法ですぐさま惑星全土を制圧したものの、真相解明の方は組織的な証拠隠滅によって思うに任せないでいた。更なる調査によってどうやら地球教団が関係しているらしいと分かったものの、なぜかグリルパルツァーはその事実を隠蔽してしまった。彼のこの振る舞いによってロイエンタールは逆賊となることが確定してしまった。
すべての交信を遮断してフェザーンへ向かっていたラインハルトは、ようやく味方に保護された。永井逃避行とルッツの死が、彼から寛容さを奪い去っていた。
<雑感>
という話。
とうとうロイエンタールがラインハルトに反逆する。この問題の背後にいるルビンスキーはいまだに正体を現さず、ハイネセンにいるヨブ・トリューニヒトは惨めに監禁状態になってしまった。