リダンという言葉をご存知でしょうか。
アンティーク時計ファンであれば知らない人は少ないと思いますが、念のために申し上げると、文字盤再生になります。
簡単に言うと、アンティーク時計を中心に古い時計は今ほどの製造技術はなく数十年もすれば文字盤には錆が浮いたり変色したりという個体が多くみられます。
そういう個体に対してオリジナルの風合いに戻そうというのが目的だった工程となりますが、リダンは悪い印象がとても強く、時計ファンでも敬遠する人が多いです。
主な理由は
・時計の価値が下がる
・保証が効かなくなる
・偽物扱いに見られる
あたりとなります。
敬遠する理由で一般的なのは時計の価値が落ちるということでしょう。資産的な価値というよりは歴史的な価値の喪失を危惧することが多いのかなと思います。
オリジナルでなければ修理を受け付けないという時計メーカーが殆どで、そういったデメリットを避けるためということも考えられますが、大体のメーカーは製造からある程度を過ぎた時計は修理を受け付けないので、アンティーク時計にはあまり関係してきません。
偽物扱いに見られるというと語弊も残りますが、ケースやベルトといった年季を感じるパーツと相対して、綺麗な文字盤のアンバランスが雰囲気を崩してしまい妙な時計に見えてしまうという意味合いの表現です。
僕はリダンは推奨派です。
アンティーク時計を持つと、当然ですが綺麗に経年をしている文字盤もあれば、そういかなかった文字盤もあって、もちろん手に入れた状態を受け入れる懐の深さがあればリダンにこだわる必要もないのですが、もう少し綺麗に整えたいと迷っているならば検討してもいいのかなと思います。
以前へりに少々のサビが見え始めた文字盤のアンティーク時計をリダンしてほしいんだけど…といつもお世話になっている時計技師の北國さん(仮名)に相談してみると、このくらいであればしない方がいい、(オリジナルが持つ歴史の風合いという意味で)価値が下がると返されたこともあり、個体の状態の主観は人それぞれでした…ので、有識者の意見を聞きながら文字盤再生を決断する方がいいと思います。
少々不服ではありますが一度手を加えると戻せないので、いずれおっしゃる意味が分かる時が来ると思って、一応北國さんの意見に従ってそのままにしております(^^;
やっぱり一番の困りものなのが、リダン = 偽物扱いをされることです…。これは罪深い事例があります。
レア時計のひとつであるエクスプローラー1016はエアキング5500とマシンが同じという事で、リダンが横行したという過去があり、それが『リダン=偽物』のイメージを強く植え付けているのではないかなと感じます。
”お金にしようとよこしまな思惑を持つ者たち”の悪影響を受けているのは今も昔も変わりませんね(--
これは時代が進んでも、「時計には資産価値はある」という事が続く以上は治せない価値観なのかもしれません…。
『古い時計への思いやり』という本来の目的に、世の中の常識が気づいてくれることを願います。