資本の一般的範式 | 草莽崛起~阿蘇地☆曳人(あそち☆えいと)のブログ

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資本の一般的範式

 現代社会は、資本主義社会である。すなわち資本第一、資本中心の社会という意味である。しかし、私たちがこの社会の経済現象を観察した場合に、真っ先に目に映るのは、資本というよりは、商品であり貨幣であった。ウィンドウ・ショッピングをしていて資本を意識する人は少ない。何よりも商品を見、そして、そこについた値札を見ながら貨幣を思い浮かべるだろう。あるいは、「今日は見るだけのつもりだったんだけど、どうしようか」と思いながら、財布の中の貨幣を実際にのぞき込むかもしれない。
 私たちは、この見た目に現れる商品や貨幣を単に表面的に観察するだけでなく、それを理論的に分析した。その結果、価値と使用価値、貨幣の直接的な一般的交換可能性などについて知ることができた。いま私たちは、この商品と貨幣についての理論的な知識を、この社会経済的仕組みの中心にある資本というものについて常識的なイメージと、照らし合わせてみることにしよう。
 「資本」と聞いて私たちは、具体的にどのような""を思い浮かべるだろうか。たいていの人が、「資本」とはどんな""なのかと問われたら、それは「お金」、すなわち「資本金」だと答えるのではないだろうか。そして、その答えは、決して間違いではない。ただ、すべて貨幣が資本であるわけではない。消費者の財布の中の貨幣は、資本家が従業員に支払う賃金として用意した貨幣や原料の仕入れのために用意した貨幣や工場の建設のために用意した貨幣のような「資本金」とは、違っている。姿かたちは同じ貨幣であるにもかかわらず、消費者の財布の中の貨幣は資本とは区別されるのである。実は、両者の違いは、その運動の仕方にある。消費生活で使われる貨幣は次のような運動をする。
 
 








 
 

商品W1   ——     貨幣G       ——   商品W 
〔手持ちの商品1〕 〔商品1を売って得た貨幣〕   〔その貨幣で買った商品2〕


 
 
 

 これは、何かを売って貨幣を得て、使用することを目的とした商品をその貨幣で買うという行為である。この行為によって引き起こされる貨幣と商品の流通を単純な商品流通と呼ぶ。単純な商品流通は、人々の買うために売るという行動よって生まれる貨幣の運動である。
吹き出し: 円形: Gの増加分 しかし、「資本金」としての貨幣は、これとは違った運動をする。
 
 
 

貨幣G  ——     商品W      ——   貨幣GG 
〔資本金〕    〔なんらかの商品〕       〔その商品の売上金〕
 
 
 
 

 貨幣で何かを購入し、それを転売するなどして利益を上げるという行為によって引き起こされる貨幣と商品の流通を資本流通と呼ぶ。資本の流通は、売るために買うという行動によって生まれる貨幣の運動である。資本流通は、貨幣に始まって貨幣に終わる。だからもし、この運動の結果としての貨幣の量と出発点の貨幣の量に全く違いがないとしたら、つまり上の図で言えば、⊿Gが付け加わらなかったとすれば、この運動は、ただ時間の無駄でしかない。つまり、100円を用意して何かを購入し、その何かを100円で売っても意味はないのである。売るために買うという資本流通が意味を持つためには、100円で買ったものは100円+⊿100円でつまり、100円よりは1円でも多い金額で売られる必要がある。とはいえ、
仮にGで購入したものが、G+⊿Gでは売れず、GG-⊿Gで売らざるを得なくなる場合も現実にはありうる。しかし、この場合でも、G-W-Gという貨幣の運動は、単純な商品流通とは異なる独自の運動、資本流通である。
 二つの流通の違いを列挙しよう。まず、売りと買いの順序が違っている。単純な商品流通は、売ってから買う。資本流通は買ってから売る。単純流通の目的は、商品を入手し消費することである。他方資本流通の目的は、投入した以上の貨幣を回収することである。単純流通は、購入した商品が消費過程に入ることで流通としてはそこで終結する。しかし、資本流通は、回収された貨幣で再び商品購入できるのだから、その気になれば何度も繰り返し、貨幣を資本として流通させることができる。資本は、繰り返し繰り返し、投下された価値以上の大きさを持つ価値として回収されることを目指している。これが成功すれば、資本の価値は、雪だるま式に増大する。資本は、自己増殖[を目的として運動]する価値に他ならない。
 G-W-G'という運動範式は、商品を仕入れて転売する商業資本にだけ当てはまるもの用に見える。しかし、実際はそうではない。産業資本の運動も、G-W-G'の「-W-」部分がより複雑になったケースである。逆に、利子生み資本のG-G'という運動は、「-W-」部分が外部に押し出され引き渡されたケースである。つまり、G-W-G'という範式の中には、他の二つの範式が含まれている。それゆえ、G-W-G'という範式は、資本の一般的な範式と捉えることができるのである。
 
産業資本の運動範式
           Pm
G――W    …P… W'――G'
           A
 
           Pmは生産手段、Aは労働力、…P…は生産過程
 
 資本家は、商品Wとして労働力と生産手段を購入する。それらを生産過程で消費して新しい商品W'を生産する。G-W-G'の「-W-」部分が上の赤枠で囲った部分としてより複雑に展開されるのである。
 
利子生み資本の範式
  
      G ――――――――――――――G'
       貸出              回収
 
           Pm
G――W     …P… W'――G'
           A
 
 資本家は、資本金を貸付金として貸出する。灰色の四角の中は、利子生み資本の運動の外部、つまり他の資本(上の図では産業資本)の運動である。外部の資本は、その運動によってGの価値を増殖させる。そして利子生み資本家は、この増殖した貨幣を元本+金利として回収する。



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