東芝臨時株主総会の内容! | マルメンライトのブログ
東芝は30日、臨時株主総会を開き、半導体メモリー事業の分社を決議した。
29日には米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したことに伴い、2017年3月期の連結最終赤字が1兆100億円になる見通しを発表。
製造業としては過去最大の赤字となるだけに、30日の株主総会では株主が会場入り口で列をつくるなど関心は高かった。財務体質は厳しく、稼ぎ頭のメモリー事業を売却して再建できるのか。緊迫の1日を追った。

■午前7時50分

 東芝の臨時株主総会が開かれる幕張メッセ(千葉市)の周辺では、東芝側の担当者らが無線機器で連絡を取り合いながら、会場を指し示す看板を手に慌ただしく配置についていた。

■午前8時20分
 会場前に株主が並び始めた。船橋市に住む89歳の男性は「4月11日に決算発表できるのか心配。経営者には本当に原発と切り離して再建できるのかと言いたい」と話す。

■午前8時30分
 東芝側の関係者が「お待たせしました。おはようございます」と声をかけると、約30人の株主が会場に入っていった。株主の88歳の男性は「初めて株主総会に出席する。妻は東芝株を売れ、売れというが取りあえず総会を見てから決めようかと思っている」という。株主総会の会場の入り口には株主が列をつくり、関心の高さを裏付けた。

■午前8時40分過ぎ
 会場内では数十人の黒スーツの担当者らが株主を出迎えた。株主にはお茶や資料、うちわなどが入った紙袋が渡された。座席はパイプいす。会場には2000席以上が用意され、株主が次々に席に着いた。

 東芝社員だったという柏市在住の71歳の男性は「東日本大震災で世の中が変わった。(東芝が)生き延びるのは難しいが、半導体を売るのは仕方ない」と話す。元社員という60代女性も「海外はやむを得ないが、国内で原発をつくったメーカーとして、廃炉などの後始末をどうするのか知りたい」と言葉を絞り出すように語った。

 三重県四日市市から訪れた27歳の男性は「四日市市にとって東芝のメモリー事業は重要な産業。どうなるのか気になって休みを取って来た」と心配そうだった。都内に住む57歳の男性は「メディカル事業のように良いものから売却していってどうするのか」と厳しい表情を見せた。

■午前9時
 東京株式市場で東芝株の取引がスタートした。東芝の経営再建を巡り、先行きを懸念する売りが広がり、朝方は下落して始まった。

■午前10時
 いよいよ株主総会が始まった。綱川社長は「度重なるご迷惑、ご心配をおかけしていることをおわび申し上げます」と株主に謝罪した。WHが米連邦破産法11条の適用を申請したことについて「破産法11条の申請に伴い、当社の連結対象外になります。一連の流れを説明させていただく所存です」と述べた。

 硬い表情の綱川社長ら役員は冒頭の説明を終えた後、全員起立し、株主に対して一礼した。原子力事業を統括していた志賀重範前会長は健康上の問題を理由に欠席した。

 綱川社長は財務基盤について「大変厳しい状況。健全な経営に向けて債務超過の解消と財務体質強化に取り組む」と述べた。半導体メモリー事業の分社については「今日承認されたらメモリー事業の外部資本注入により債務超過を回避する」と説明し、株主に理解を求めた。

■午前10時30分過ぎ
 東芝幹部らの説明が終わったタイミングで、男性株主が「動議、動議。なんで無視するんだよ」と発言。綱川社長が遮るが「なんで受けないんだよ」と男性株主が食い下がる一幕もあった。

■午前10時45分
 成毛康雄副社長が事前質問に対し、一括で回答。巨額損失の原因となったWH買収については「経営判断に誤りはないと考えている」と明言した。

 その後、株主質問がスタート。綱川社長は動議を繰り返し求めた株主を2人目に指名。「一問一答で、1人2分で質問しろなんておかしいですよ」と話すと、会場からは拍手も聞かれた。怒号が飛び交うなか、綱川社長は「できるだけ多くの株主の意見を聞きたい。誠意を持って議事を進めて参りたい」と答え、議事を進行した。株主の質問が始まると、怒号やヤジが広がり、壇上では明らかに顔をしかめる幹部も。午前11時15分を過ぎると、綱川社長の表情にも疲れが見え始める。

■午前11時30分前
 男性株主から議長解任動議が出された。それに対し、綱川社長は「私は質問を丁寧に聴いていると考えているし、動議には反対です。それでは、賛否はいかがでしょうか」と採決を取った。反対の声が上がったことから「反対多数と認め、動議は否決されました」と議事を進めた。

■午前11時30分
 東芝株の午前の終値は2%高の224円だった。朝方は小安く始まったが、徐々に下げ幅を縮小。臨時株主総会が始まってから30分ほど経過した午前10時半ごろに上昇に転じ、一時5%高を付けた。

■午前11時35分過ぎ
 志賀重範前会長の任命責任を問われた小林喜光社外取締役は「経済産業省や他社との交渉のためには志賀氏の知見が必要だと判断した。結果としてこういう形になったのは遺憾」と話した。

■正午過ぎ
 総会が始まって2時間が過ぎたが、株主の不満の声は相次ぐ。「事前調査に瑕疵(かし)はなかったのか」「買収当時の経営陣への損害賠償はどうなっている」。巨額損失を招いたWH買収に対する批判的な意見表明が続く。質問が個人的な感情にまで脱線する株主も多く、綱川社長は「申し訳ありません、ご質問は簡潔にお願いします」と議事を進行するのが精いっぱいだった。

 「役員の皆さんはどれだけの覚悟を持ってこの場に臨んでいるのか」。会場が一瞬、静まりかえったのは、個人株主からこうした質問が飛びだしたときだ。「東芝を本当によみがえらせることができるのか。心配するな、やるぞ、と綱川社長が明言してほしい」。綱川社長はきょう何度目かの謝罪とともに声を絞り出した。「役員一同、責任を持って再生に向けてやっていきます」

 再延期した16年4~12月期決算を予定通り4月11日に発表できるかどうかについても、質問が集中した。「3度目はなしです。上場廃止もあり得る」。株主らの先行き懸念は強く、綱川社長自ら精いっぱいの慰謝を重ねた。「上場廃止にならないよう、ここにいる全員が努力していきます」

■午後1時過ぎ
 席を立つ株主が目立ち始める。一方、株主からは「血判状を作るくらいの気持ちで」「中小企業でも半年先くらい見えるのに、こんなむちゃくちゃは考えられない」などと厳しい意見がとどまる気配がない。

■午後1時25分前
 綱川社長が「審議は尽くされた。あと2人の質問を受けたら採決に入りたい」と提案し、承認へと動いた。「質疑はここで締め切らせていただき、採決に移らせていただきます。賛否、いかがでしょうか」と呼び掛けると、会場からは拍手がわき起こった。半導体メモリー事業の分社について原案通り、承認可決された。

■午後1時30分
 綱川社長が閉会の言葉を述べた後、壇上の幹部が立ち上がって頭を下げたところで時計の針は午後1時30分ちょうど。3時間半にわたった臨時株主総会は幕を閉じた。

 3時間半に及んだ株主総会が終了し、株主は疲れた表情を浮かべながら会場を後にした。埼玉県に住む57歳の男性は「あれだけの損失がなぜ発生したのか、納得できる説明はなかった。再建は不透明に思える」と帰り際につぶやいた。




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