”大阪のオバチャン”にも…… | 明日通信

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 “大阪のオバチャン”というのはね、陽気でよくしゃべり、気がよく、余分なところまで首を突っ込んできて、他府県の人たちには「おせっかい」に映るんですが、長年住んで接してみると周りへの配慮を忘れず優しいのがよく分かり、僕は大好きなんです。

 

 ところが……昨日午後、大阪の月に一回の眼科へ行く、電車の中での話です。いつも家内と二人連れ。乗り換えの京阪枚方駅で特急待ち。並ぶのは休憩ハウスのすぐそば、優先席ドアの前。列に従って乗りました。

 

 僕と同年齢の男の乗客が、僕の顔を見るなり、隣りの空席を示しながら手招きしてくれました。お礼を言って後ろいる家内に座らせ、僕はドア近くに戻りました。若い人も座っておりそばに立たれると落ち着かないだろうと思ったのです。

 

 その時、家内の手前隣りの席のアジアからの旅行客らしいキャリーバックを前に置いた男性が素早く立って「僕に席を変わりましょう」という仕草をしてくれた。僕は「ありがとう、大丈夫ですよ。ゆっくり座って休んでください」と通じたかどうかは分かりませんが、そう言ってもう一度座るよう促しました。

 

 そのやりとりをぼくのうしろにいて聞いていたのでしょう。初老のオバチャンが、僕と旅行客とキャリーバックの小さな隙間を潜り抜け、「私、足が悪いから……」と言って座り込み、瞬間目を閉じてしまいました。

 

 あっけにとられてしまいましたが、もう、どうもこうもなく、旅行客の男性に「すみません」とお詫びをしました。旅行客は僕の連れと思ったようでした。その男性は、向かいに座る小さな子どもの連れのところへ移動していきました。下車は終着駅のひとつ前の駅でした。

 

 気づいたので下車の際、「ありがとう、わるかったね」と頭を下げたのですが、そのオバチャン、不思議なものを見るような目で旅行客が下車するのを追ってました。

 

 それはそれで一区切りになる話と思ってたら、終着駅に着いた途端、足が悪いと言ってたオバチャン、スタスタと早足で地下鉄へ歩いて行きました。

 

 それを見てた家内が「オトーサン、気の毒でした」と。いやいや僕は「混雑の中で席を譲って座らせてもらう気持ちなんかないから何とも思ってないけど、あのオバチャン、言葉が通じるかどうかは別にして譲ってくれた旅行客に『ありがとう』くらい言ってあげてほしかったな。大阪のオバチャンにもあんな人がいるんだね」だった。