僕の車庫入れの教訓「徒然草109段」 | 明日通信

明日通信

あすへ...

 「オトーサン、車を車庫に入れるのすごく丁寧ね。それに後ろ、エアコンの室外機に1㎝、2㎝くらいピッタリ。どうしてそこまで丁寧に納めるの?」と家内に言われる。

 

 「そうやねん、自分に言い聞かせてるねん。長年、バックで入れて馴れてるから30秒もかからなかった。でも、歳とってきて、高齢者がコンビニなどでバックで駐車するのにブレーキとアクセルを間違えて店に突っ込み事故を起こしたニュースよく耳にするので、僕もどこかでちょっと事故ったら『また高齢者が…』といわれるやろ。まだ運転に不安を感じたことないし、歳やなあと思ったことはないけど、まず一番雑になる家の車庫入れで『慎重に』を言い聞かせてるんや。徒然草の109段の戒めな」

 

 「それナニ?」

 「記憶ないかな。高い木から下りる時、高いところでは何も注意せず足の届くほどのところまで下りて来た時、『気ィつけや』と言われて、言われた者が『何でやねん』と聞き返す話」

 「そういえば聞いた、いや読んだことあるわね」

 「そう、その話、詳しく覚えてなかったんだけど6、7年前、思い出して調べ、それから何かの場面で『徒然草109段、ツレヅレクサ109段』と自分に言い聞かせ、ウチの車庫入れを試してるねん」

 「ヘー、りくつのオトーサンの面目躍如ですね」

 「ハイ、お褒めにいただいてありがとうございます、です」

 

 ところで、皆さん、徒然草109段、覚えてますか。

 

 高名の木登りといひし男、人を掟てて木に登せて、梢を切らせしに、いと危く見えしほどは云ふ事もなくて、降るる時に、軒長ばかりに成りて、「あやまちすな。心して降りよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。如何にかく云ふぞ」と申し侍りしかば、「その事に候ふ。目くるめき、枝危きほどは、己が恐れ侍れば、申さず。あやまちは、安き所に成りて、必ず仕ることに候ふ」と云ふ。

 あやしき下臈なれども、聖人の戒めにかなへり。鞠も難きところを蹴出して後、安く思へば必ず落つと侍るやらん。

 

 ・高名=名を成す ・掟てて=指図して ・軒長(のきたけ)=軒の高さ ・鞠=まり