”盛り”のコスパは長続きしない | 明日通信

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 毎日、朝の間、新聞を読みながらテレビもチラチラ見ているのだが、多いのが各地のグルメの店の紹介だ。グルメ雑誌の記者や料理のエキスパート、グルメを趣味に探し歩く人たちが、新規オープンの店、行列のできる人気店などの食べ物を紹介するのだが、時々この人たちの視点は刹那的で、お客さんはいいけど店の立場からすると、この人たちの評価を真に受けていると店は3年、5年も持たず潰れてしまうかもなと思うことがある。

 

 今朝も新規オープンして間もない店のどんぶり料理からはみ出し崩れないか心配するほど料理を盛り上げ、価格は千数百円。開店以来の売りで客が絶えず繁昌していると、その料理のアイデア、コスパを褒め上げていた。

 

 しかし、グルメの店を20数年、続けて来た我が家の立場からすれば、「グルメレポーターさんたち、あまり無責任に持ち上げたらダメだよ。店の人、そんな人たちのお褒めに乗ったらダメだよ」といってあげたくなった。

 

 仮にドンブリにてんこ盛りして1800円、間違いなく「安いな」となる。喜んで食べるのは“欠食児童”まがいの若者だろう。美味しいけど間違いなく女性は食べきれない。食べきれず代金1800円より、女性は食べきれる量で800円の方がいいにきまっている。

 

 我がグルメの店はオープン時、厳しい経営を迫られた。しかし売り上げを多くするために量や価格を上げることは絶対しなかった。それより、4品、5品と一度にオーダーするお客に、「量が少し多いかも。まず先に食べたいものを2~3品オーダーしていただいて、それでもとなったら追加オーダーしてください」と説明させていただいた。

 グルメ情報に「3人で何品食べてこの価格と安くて美味しい。良心的な店」と数多く紹介され、7年連続でミシュラン・ビブグルマンの店に選ばれるまでになった。

 

 そうしたことによる注目でテレビなど採り上げようとの話が次々舞い込んできたが、よほどでない限り辞退させていただいた。一時の注目でお客の行列ができると売り上げは飛躍的に上がるが開店時の苦しい時、店に通い支えていただいた常連客の席がなくなるからだった。

 

 奇を衒うより、真にグルメを愛する客のために「見合う価格と席を確保すること」が長く店を続けられる奥義と知るべきと思うね。