紅腐乳と豆腐じい(続豆腐百珍より) | 発酵食品アドバイザー・アジアの発酵食品研究家 大西孝典のブログ

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昨日、毛豆腐を仕込み、明後日に紅方腐乳の代表格、紅麹を使った紅腐乳を作るべく、準備をしていたのだが、ふと、以前から気になっていた、江戸時代に日本でも食されていた紅腐乳の「紅豆腐」を再現しようと思い立ち、天明2年(1782年)に出版された豆腐料理本の「豆腐百珍」を調べていたのだが、どうやら、件の紅豆腐は、続編である続豆腐百珍に掲載されているらしい。この豆腐百珍は豆腐料理が1番から100番まで番号を打たれて掲載されており、江戸時代の豆腐料理本のベストセラーであったようだ。なので、続編も出たのだと思う。この辺りは現代人の感覚と同じだ・・・(笑

 

僕が持っているのは現代語訳の「豆腐百珍」で、続編ではないことから、お友達の料理研究家、豆腐の研究家でもあり、僕のFB発酵グループ「アジアの発酵食品」のメンバーにもなって頂いているYoshieさんに真夜中にもかかわらず、ご存知かどうかメッセージを送ったら翌朝にはさらっと答えが送られてきた・・・もう本当に感謝です・・・。

 

お調べいただいた内容ではなんと、この続豆腐百珍の料理番号63番の紅豆腐の記述、料理本にも関わらず、書かれていたのは「其製、一家の秘にして、世に伝えず」つまり、秘伝なので門外不出だよって事である。料理本のくせに門外不出って何だよ(笑

 

      熟成中の腐乳

 

実は僕も昨夜遅くまで調べていたら、どうやら63番の紅豆腐は門外不出と書いてあり、65番の腐乳(豆腐じい)が、紅腐乳に近い、という事までは分かったのだが、肝心のその記述が全く見当たらなかったのだ。Yoshieさんはその記述も調べて送ってくれ、加えて65番の豆腐じいが紅腐乳に近いのではないかと記述も含め、わざわざ送ってくれたのであった・・・・(さすが!としか言えません、ほんとにほんとに頭が下がります・・・)

 

 毛が生える前(発酵前)の毛豆腐

 

その記述は「腐乳(とうふじい) 乳酒(しろざけ)に麹を入れ、磨(うす)にてよくひき、さて紅麹(からものなり)と泰椒の末を入れ、紅麹は、容易(たやすく)えがたければ、なきもくるしからず」とあるではないか・・・・これらは黄酒がしろざけになったり、唐辛子を入れたり、使っている豆腐が毛豆腐ではなく、醤油で味をつけたおし豆腐という違いはあるが、基本的には中国の紅腐乳の作り方に近い。白酒に麹を入れ、唐辛子の粉を少々入れる。紅麹(唐物とあるので入手が難しかったのだろう)はなければ無いで構わない、という事である。

紅麹に関しては豆腐のタンパク質を分解するというよりは、色付けの

ため、と考えた方が妥当だろう。この辺りは中国の色付けとして使う紅麹、色曲の使い方と同じだ。豆腐のタンパク質を効率よく分解するためにしろざけにプロテアーゼを含む日本のバラ麹を加えているという事だと思う。不思議なのは今から200年以上も前の日本でこの紅腐乳が食されていたという事であり、その後ほどなく、消え去ったという事である。沖縄(琉球)の豆腐ようも紅腐乳をルーツとしているが、気候や文化背景などで独特の進化を遂げたものであり、逆に日本ではその食文化自体が消え去ってしまったという事なのだろう。ならば200年ぶりに再現し、200年前の江戸人が食べた紅腐乳(とうふじい)を味わってみたいと思う。