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皆さんはパイロットと聞くと、年収が高い職業かと思われるかもしれません。

 

しかし、実際は会社やランクによってかなりの差があることをご存知でしたか??

 

今日は皆さんも興味があるかもしれない、日本、そして世界のパイロットの年収はどれくらいなのか、詳しく書きたいと思います!

 

前置きが結構長くなるので、収入が気になる方はここをクリックしてスキップ!

 

※ここで書く給料は、実際に自分が経験したりネットで調べた結果の上での数字です。あくまで参考として読んでください。

 

基本給だけじゃない!給料の種類!

パイロットに限ったことではありませんが、給料には基本給以外にも種類があり、最終的な年収にも大きく関わってきます。また、勤続年数国内線/国際線を担当するかで給料も大きく変わってきます。

そこでまずはパイロットが、給料明細で目にする事がある単語を見ていきたいと思います。

 

基本給(時給/月給)

パイロットの給料全体の、だいたい7割から8割を占めます。

会社にもよりますが、時給は機体がゲートを出発してから、目的地のゲートに着くまでの時間で計算されます。なので、出発前の遅延の場合、パイロットやフライトアテンダントはお金を稼いでいない状態なのです。また、遅れて出発しても飛行時間は変わらないので、ただ労働時間が長くなるだけで、給料増には結びつかない時の方が多いです。

一刻も早く出発したいのは、お客さんだけでなく、パイロットやフライトアテンダントも一緒なのです!もちろん安全が第一なので、必要な遅延はしょうがないですね。

 

会社によっては、出勤するだけで最低でも数時間分の給料を払ってくれるシステムがあります。これは、例えば国内線1フライトを担当するような、生産性の低い日でも、元が取れるようにするためです。組合がしっかりしている多くの航空会社が、1日最低4時間から4.5時間の給料を保証してくれます。これはあくまで「最低」なので、4.5時間以上飛べばもちろんそれ以上の勤務時間も時給がもらえます。

 

自分が以前働いていたリージョナルの会社は組合が強く、会社との労働契約も業界ではトップレベルでした。その会社での日給の計算方法が:

①最低4.5時間

②飛行時間の合計

③一日の労働時間の半分

そして①②③の中で一番多かった時間の分が日給になりました。そして、この時間のことをBlock(ブロック)」や「Credit(クレジット)」と呼びます。

つまり、出勤しただけで最低4.5時間分、合計で5時間フライトしたら5時間分、12時間労働したら6時間分の給料をもらえることになります。フライト時間が短く、空港での待ち時間が多い新入りのリージョナルパイロットには、③が結構当てはまる場合が多く、先輩になり好きなフライトを選べるようになると、飛行時間が長い=少ない労働時間でブロックが稼げるスケジュールを選べます。そして月の終わりに稼いだブロック数×時給が月給として支払われます。

 

また、飛ぶ予定だったフライトがキャンセルになっても、多くの航空会社はそのフライト分の給料は払ってくれます。例えば、羽田⇔福岡の往復を担当するはずだったのが、故障などでキャンセルになったとしましょう。そういう時、会社は代わりにできるフライトがないか探し、新しいフライトを割り当てることもできますが、もしこちらのフライトが短く、飛行時間が少なくなっても、最初の予定していたフライト分は給料を保証してもらえるのです。また、代わりに担当できるフライトが見つからず「帰っていいよ」と言われた場合も、最初の予定していた分のブロックが保証されます。

 

1日の最低保証時間が決まっているように、1月ごとにも最低保証時間が決まっていて、どの会社もだいたい65~80時間(ブロック)ぐらいに収まってくる感じです。また、この数字は月ごと変動する物でもあり、忙しい夏季はフライトの数も増えるので最低保証時間も増えてきます。後でもう少し詳しく書きますが、会社はスケジュールを練るとき、各パイロットがだいたいこの最低保証時間ぐらい働くようにフライトを割り当てるのが基本です。

 

こういう労働契約は各会社で全然違ってくるので、参考までに書いたのですが、このように給料をしっかり保証してくれる会社を選ぶことは、パイロットにとってとても大事になります。

知り合いには、労働契約が自分の所ほど良くない会社で働いていて、例えば短い国内1路線の往復するだけの1日だったら、45分フライト×2=1.5時間分しか給料をもらえない日もあります。また、せっかく出勤しても、悪天候で一日の日程がすべてキャンセルになったら、労働時間が0なので、日給も0です。

自分の以前の会社だったら、最初のケースだったら最低でも4.5時間分、すべてキャンセルでも元々の分は給料がもらえる計算なので、労働契約、そして組合の大切さが分かるかと思います。

 

日当/パーディアム(Per diem)

パイロットの仕事の特徴として、家を離れる日数が多くなるのは必然な事です。その分、交通費や外食などで食事代がかかるので、その分を会社側が日当として出すのが一般的です。

金額としては、勤務時間1時間につき270円~350円が相場だと思います。これは、国内線、国際線で違ってきたり、滞在地の物価にも左右される会社もあります。

だいたい、一ヶ月で10万ほどになります。そして嬉しい事に、日当なので所得税法上非課税の収入になります!リージョナルの新入りで基本給が少ないパイロットの場合、この非課税の日当が手取りの1/3から1/4ほどになることもあり、とても助かります!家からお弁当を持参し、外食を控えることによって、この日当分を貯蓄や趣味に回す新人パイロットは多いです。

 

オーバータイム

他の業界で言う残業に当たるのでしょうか。

例えば他のパイロットが病気で飛べなくなった時、その分のペアリングを誰かがカバーしなくてはいけません。時間的余裕がない時は、後でも出てくるスタンバイのクルーが担当するのですが、数日後に始まるペアリングの場合、もっと働いて稼ぎたいパイロットのために、オーバータイムとして余分に働いてもらうこともできます。複数のパイロットが名乗り出た場合は会社によりますが、年功順だったり早い者勝ちだったりします。

各社とも、「80ブロック以上働いた分は給料が1.5倍」などという基準を設けていて、それ以上はオーバータイムといって、その分の給料が増えるのが一般的です。

また、スタンバイのパイロットも使い果たして、休みのパイロットを呼ばなくてはいけない時は、月の労働時間が80ブロック以下のパイロットも、その日の給料が1.5倍から2倍になるのが普通です。

 

その他・手当・ボーナス

会社にもよりますが、国際線手当てが3%ぐらい上乗せされる会社が多い気がします。他に日本では職務手当深夜勤務手なども出るようです。

海外ではあまり習慣になってないですが、日本ではボーナスも出るのはいいですね。

たくさん海外からのパイロットを雇っている会社は、住宅手当教育手当も出してくれます。

 

 

スケジュール決定までの流れ!

毎月のスケジュールが不規則なパイロットの給料は、その月その月のスケジュールとこなすフライトの量で変わってきます

 

各会社には乗務員のスケジュール部門があり、各月の全体のフライトの数を見ながら最低保証時間が決まります。先ほども書きましたが、大体65から80時間ぐらいの場合が多いです。そのあと、ひとつひとつのペアリングが作られていきます。以前、パイロットのスケジュールを紹介する記事で詳しく書きましたが、ペアリングとは、乗務員が担当することになるフライトがいくつもセットになったスケジュールで、ベースとなる空港から始まりまり、最後にはその空港へ帰ってきます。一日で終わるペアリングもあれば、4日から5日と長くなるペアリングもあります。

ペアリングは、先ほど基本給の所でも書いた、一日一日のブロック数が書いてあり、それを足したペアリング自体のブロック数も書いてあります。

公開されたペアリングのリストの中から、パイロットやフライトアテンダントは自分の好みに合ったペアリングをリクエストします。1日のペアリングで最低保証時間の4.5時間から良いペアリングは10時間、3日から4日の長めのペアリングだと、18~25時間ぐらいのブロックが稼げ、一か月で最低保証時間ぐらいのブロック分の仕事をすることになります。

 

このひと月の最低保証時間が大事になってくるのが、スタンバイのクルー達です。スタンバイとは、もし病欠などで急にパイロットやフライトアテンダントが必要になった時に、自宅や空港で待機していることを言い、会社によってはみんながスタンバイのスケジュールを分け合ったり数人のスタンバイ専用のクルーとしていつも待機していて、急なスケジュール変更にも対応できるようにしています。

スタンバイのクルーは不測の事態が起きない限り飛ぶことがないので、どうしてもブロック数が稼げません。そのため、会社はスタンバイのクルーも最低保証時間を適応して、きちんと月給がもらえるようにしています。極端な場合、ずっと家で待機していて、一か月で一回も飛ばなくても最低保証時間分は給料がもらえます。

 

日本のパイロットの給料!

それではパイロットの給与体系が少し理解できたところで、具体的な数字を見てみましょう!

 

日本では、先ほど紹介した基本給が、基本給+乗務手当(フライトタイムでの時給)に分かれているようですが、基本的な「飛んだ分稼げる」という所は同じでしょう。

 

厚労省の資料による2018年の、賞与なども合わせたパイロットの平均年収は、2217万円でこの平均年齢は43歳勤続年数は18年でした。(厚労省:賃金構造基本統計調査

ちなみにこの数字は企業規模は1000人以上の会社なので、小さい航空会社は含めていない数字になると思います。

 

それでは、会社ごと見ていきましょう!

 

まずJALANAの大手二社。

副操縦士:

訓練生:300-450万

一年目:800-1000万

10年目:1500-1800万

 

機長:

一年目:1500-1700万

10年目:2500-2800万

 

数字に数百万の開きがあるのは、会社によっての差もありますし、国際線/国内線などで差も出てきます。やはり一番稼ぐのは、国際線に乗務している機長になってきます。昔は4000万とか稼いでいた時期もあったようですが、最近は3000万稼いでいたら「おいおい、ちょっと働きすぎで体壊さないか」と心配される数字かと思います。

 

次にスカイマークLCCなどの中堅会社。

大体JALとANAの80%の給料が目安になると思います。ただし、短いフライトが多くなるので、その分労働時間も増えることになります。

副操縦士:600-1200万

機長:1300-2300万

LCCなどは海外からも機長を呼び込むために、機長の給料は大手2社にもそこまで引けを取らないと思われます。逆に、会社側として給料削減できるのが副操縦士で、長年副操縦士をやっていても、大手ほどの給料増は見込めないでしょう。

 

最後に、各社のリージョナル

副操縦士:500-1000万

機長:1000-1500万

リージョナル航空会社は、大手航空会社が費用削減のために作られた会社であることが多いです。本社のパイロットだと、いくら小さな飛行機で短いを路線を飛ばさせても、それなりに給料も払わなくてはいけないので、リージョナル会社を立ち上げて、そこの会社の全体の給料も安めに設定するのです。

 

海外のパイロットの給料!

次に海外に目を向けてみましょう!

といっても、日本は世界的に見ても平均的な市場と見ていいと思います。

 

でもアメリカは近年になってパイロットの給料がものすごく良くなりました

例えばこちらが、AirlinePilotCentralというサイトに載っている米デルタ航空の時給です。左列が勤続年数で上列が機種となります。

 

資料:AirlinePilotCentral

 

ちなみに、パイロットの給料は、時給に0を3つ足した額がだいたいの年収になると言われています。

B777の12年目の機長となると、時給は$354!毎月70時間飛ぶとしたら、基本給だけで$297,360、その上に手当などが付いて、年収が先ほどの法則通りのだいたい$35.4万ドル、日本円にして3800万円にもなります!(1$=107円)

オーバータイムなどで少し余計に働けば、軽く4000万円に届くことになります。

 

小型機のB737の機長でも、12年目となると時給は$286。年収で3070万近くなります!

副操縦士でも、新入りの時は1000万ぐらいですが、12年目以降は小型機でも2000万大型機では2600万円にもなります!

 

リージョナルは業界が成熟している北米やヨーロッパ、日本などでは初任給がかなり低い所もあります。自分も実際、リージョナルでの一年目は年収300万円ほどでした。税金や保険料などを取られた後の手取りはもっと低かったです!パイロットになるのに1000万円もかかるのに、ようやくリージョナルまでたどり着いてこの金額...ということで、アメリカでは大手と同じように、リージョナルの初任給もに直されて、さらに入社した際に100万円ほどのボーナスを出す会社も出てきました!

 

給料が高くて有名なのが、中東のエミレーツ航空カタール航空です。

2017年の記事では、エミレーツ航空の機長は一か月で米ドル$16,013、年収にすると2070万円ぐらいと書いてあります。何年目かの機長の年収かは分かりませんが、あまり多くないように感じますよね?でもエミレーツ航空が拠点としているUAEは個人所得税がないので、給料が丸ごと銀行に入ってきます!2000万円も稼ぐと、日本では税率が40%アメリカでも35%税金として持っていかれるので、高収入なパイロット達には所得税がないのはとても魅力的なのです!

副操縦士でも、1500-1600万円ぐらいもらえるみたいです。

 

最近、特に高いお金を払って海外からパイロットを集めているのが中国です。中国では、近年の航空業界の目覚ましい発展によってパイロット不足が深刻で、特に経験豊富な機長が全然足りていません。そこで高額な給料を条件として海外の航空会社から次々とパイロットたちを引き抜いています。自分も以前、CRJの機長に昇格したとたん、中国のエアラインへのお誘いが来ました。

あるパイロット転職業者のサイトに出ている宣伝だと、ある中国の航空会社で年収4000万円でA320の機長を探しています。しかもこの金額、会社側が所得税を負担するので、パイロットの手取りが4000万円です。すごいですねー(笑 もう笑うしかないですね。

 

他も航空会社も参考までに書いておきます!給料の範囲が書いてないのは、その年収が1年目なのか10年目後なのか分からないものです。(カッコ内)に詳細が書いてない数字は、手当なども合わせた年収になります。あくまでもだいたいの数字で、細かい手当てや報酬が含まれていない場合もあります

 

キャセイパシフィック航空(香港)

副操縦士:1150万円

機長:2500万円

 

ルフトハンザ航空(ドイツ)

副操縦士:750-1580万円

機長:1500-2630万円

 

エールフランス航空(フランス)

副操縦士:840-1400万円(手取り)

機長:1200-1850万円(手取り)

 

エティハド航空(UAE)

副操縦士:960-1100万円(所得税なし)

機長:1300-2100万円(所得税なし)

 

中国南方航空(中国)

副操縦士:データなし

機長:2320-2800万円(基本給)

 

中国国際航空(中国)

副操縦士:データなし

機長:2500万円(1年目)

 

厦門航空(中国)

副操縦士:データなし

機長:2950万円

 

これらの数字はPilotJobsNetworkを参考にしました。他に気になる航空会社があったら、こちらのリンクからサイトにアクセスしてみてください。

 

 

どちらが大事!? 給料vs生活の質

このように世界の航空会社には、破格のお金を払ってパイロットを雇っている会社もあります。

しかしその一方で、そういう会社で働いているパイロットたちは、労働時間も長く、家に帰り家族に会う時間も少なくなるなど、生活の質高くないことがあります。生活の質のことを英語ではQuality Of Life (QOL)といい、パイロットにとってはお金とQOLのバランスをどうとるかが業界共通の課題となっています。

 

例えば中東の会社では給料は良いですが、毎月100時間ものフライトをこなすのが普通です。更に、目的地での休憩を定休日と数えることで、実際に家で家族と過ごせる休日の日数が少ない航空会社もあります。

それに比べ北米などの会社は、毎月75時間ほどで、国際線ばかり飛んでいるパイロットになると月の半分は休みなのが当たり前です。

そのためか自分の会社にも、中東やアジアの会社の大型機で、長年機長をやっていたパイロットが移ってきます。こちらの航空会社では年功がすべてなので、給料もスケジュールも新入りレベルから始めることになり、副操縦士という立場に逆戻りになりますが、それでも家族の近くに居れることで、QOLは前の航空会社よりも向上することが理由のようです。

 

もう一つ大事なのは、雇用の安定さです。今の中国のように数千万円もの給料を提示してまで、海外から機長を呼び込んでいる会社は、大抵の場合数年契約で海外のパイロットを雇います。例えば、3年毎に会社側がまだ必要なようなら、契約更新を打診される形です。先ほども書いた通り、現在アジア地域、特に中国では経験豊富な機長が不足しているので、海外から雇ったパイロットに頼っています。上記していた航空会社の給料にも、副操縦士の欄がデータなしになっていたのも、それが影響しているのかもしれませんね。

しかしその反面で、世界中のフライトスクールを利用して毎年数千人規模で新たなパイロットを育成しています。そうした新しい中国人パイロット達が経験を積み機長職を任されるにつれ、海外からのパイロットも必要なくなります。もうすぐ定年を迎えるパイロットには問題ないかもしれませんが、30代で大金を稼ぎにアジアに渡り、40代で職を失うようなリスクもあります。

 

自分は中国の会社でのお誘いが来たとき、お金よりQOLと雇用の安定さを選び、今の会社に勤めています。現在の給料は、世界で見ても下の方ですが、今の年齢から勤続年数を増やすことによって、将来のQOLを向上させられると考えたからです。

 

皆さんの中にもパイロットになることを夢見ている方がいたら、将来どのような生活をしたいか、お金とQOLのバランスをどうとるかを考えてから、しっかり時間をかけて就職先や訓練先を決めることをお勧めします。

 

まとめ

●多くのパイロットはゲートを出発してからしか給料が発生しない。

●ブロック数×時給=基本給。その上に様々な手当や日当が上乗せされる。

●国際線の方が手当も良。そのうえ、待機時間も少ないため効率的に稼げる。

●現在、アメリカ、中東、そして中国系の航空会社が給料高め。中には所得税を払ってくれる会社も!

●しかし、お金だけで会社を決めるとQOLが良くない場合も。

お金とQOLのバランスが重要!