以前、「海外でパイロットになるには」というテーマでブログを書きました。

 

日本国内だけに限ってパイロットを目指すよりも、就職の幅が広がり、少しでも多くの人がパイロットの夢を実現する役に立てていれば嬉しいです。

 

今日は、その記事を読んだ方も含め、前からもリクエストが多かった、日本国内でパイロットになるにはどういう方法・進路があるのか、2020年現在の状況を書きたいと思います。

 

パイロットライセンスの種類

自動車免許のように、パイロットライセンス/パイロット免許にもいろいろ種類があり、パイロットとしてやりたい事によって取るライセンスの種類も変わってきます。

ライセンスの種類は3つあり、それぞれ:自家用、事業用、そして定期運送用になります。

 

1.自家用操縦士

パイロットの訓練をする中で、もっとも基本となるライセンスです。

自分の娯楽・または旅行などのため、報酬を目的としないライセンスで、人を乗せて飛ぶこともできますが報酬はもらってはいけません。

17歳以上で、試験を受け合格する必要があります。総飛行時間も40時間必要なのですが、それは訓練中に達する時間数です。

 

2.事業用操縦士

自家用のライセンスでできる事報酬を受け取ることができます。副操縦士としてはどの機体にも乗務できるのですが、機長として操縦できる飛行機は1人のパイロットで操縦できる物に限られます。例えばニュースなどで空から撮影したい時に報道関連者を乗せて飛んだり、小型機で貨物や少ない人数の乗客を乗せて飛ぶこともできます。

18歳以上で、試験に合格するとともに、総飛行時間200時間以上が必要になります。この200時間という数字も、夜間飛行や陸上多発、計器飛行証明の訓練で達する数字なので、心配する必要はないでしょう。

 

3.定期運送用操縦士

航空会社で働いているほとんどのパイロットが持っているライセンスです。

事業用操縦士でできる事 + 2人以上パイロットが必要な飛行機に機長として乗務することができます。

21歳以上で、総飛行時間が1500時間以上必要になります。副操縦として飛行時間を稼ぐか、小型機を運行している会社で機長として働いて、飛行時間を稼ぎます。

 

おまけ.准定期運送用操縦士(MPL)

現在日本ではANAとJALしか許可されていない方法です。従来では、自家用→事業用→定期運送用という過程で、一人で操縦し一人で判断する技能も養えます。しかし、最初から大きな航空会社に雇われ、操縦にパイロットが2人必要な大きい航空機しか操縦しないのであれば、最初から機長を補佐する技能の取得に重みを置いた訓練をすることで、航空会社として訓練効率化を目指す事を目的に作られたライセンスです。従来の事業用ライセンス取得には、機長としての飛行時間が必要でしたが、そういう部分がパイロット2人で操縦する環境(マルチクルー)のための訓練に置き換えられるなどされています。

ただし、もしその航空会社を辞めた場合、MPLだけで再就職できるかは未知数で、訓練をしてくれた会社に束縛される可能性が指摘されています。

 

 

総飛行時間も、夜間や計器飛行の時間などいろいろと分かれており、各ライセンスに必要な時間数も変わってきます。詳しいことは、国土交通省のページ「パイロットになるには」を参照してください。

 

 

日本でパイロットになる道!

パイロットの仕事といっても、たくさん種類がありそれぞれ必要になってくるライセンス、学歴、または経験も違ってきます。

もし南国の方で遊覧飛行のようなパイロットを目指しているのであれば、巨額な大金をはたいて大学へ行く必要はありませんし、逆にANAやJALのような国内最大手に入るのであれば、それなりに実績がある所を選ぶ必要があります。

 

その上で、日本でパイロットになるには、大きく分けて4つの方法があります。

それぞれを、費用、難易度、パイロットになるまでの時間の観点から見てみましょう!

 

自社養成プログラム

費用:  ☆☆☆☆☆

難易度:☆★★★★(難しい)

時間:  ☆☆☆☆☆

 

ANAJAL自社でパイロットを養成しています。最近はスカイマークも自社養成プログラムを発足させて話題になりました。国内大手航空会社のパイロットは、多くがこの形で採用されています。社員として訓練するので、費用は勿論掛かりませんし、逆に給料がもらえます!さらに訓練終了と同時に、ジェット旅客機に乗務することになります!

 

応募資格としては、どこの会社も4年制大学の新卒であることが条件となっています。

でもANAのリージョナルであるANAWingsにも自社養成プログラムがあり、しかも新卒でなくても応募できるようです!

 

難点なのがその倍率の高さ。日本国内、どの航空会社でも100倍以上と見ておいた方がいいでしょう!ANAやJALなどの大手の場合、5次面接まで行くのはかなり限られた人になってきます。英語だけでなく、周りの人との調和性、コミュニケーション能力、複数のことを同時にこなすマルチタスク能力なども必要になってきます。各会社の歴史はもちろんのこと、各社のビジョン、社風、最近のニュース/動向などもしっかり予習する必要があります。

 

他にも、ジェットスターにはFirstOfficerUpgradeProgram(FOUG)があり、実際に卒業生も飛んでいるようですが、詳細がネット上では見つからないので現在もやっているかは不明です。すでにA320のレーティングを持っている人の採用ならしています。

 

ピーチはパイロットチャレンジ制度といって、訓練生が費用を1300万円ほど負担する形で、自社養成プログラムを行っています。

 

各社とも応募事項や、訓練の過程が違ったりするので、しっかりとリサーチしてから応募することが大事になってきます。

 

 

航空大学校

費用:  ☆☆☆☆★

難易度:☆☆★★★(やや難しい)

時間:  ☆☆☆☆★

 

航空大学校は日本唯一の国が設置したパイロット養成機関で、エアラインパイロット養成を目的として国土交通省によって1954年に設立されました。パイロットを目指す学生は6月、9月、12月、3月の4期に分かれて入学し、2年かけて事業用操縦士(陸上単発・陸上多発)、そして計器飛行証明を取得します。このライセンスで航空会社で働く準備は整い、多くの卒業生がANAやJALを含む国内大手へ就職していきます。

こちらが同大学のサイトにアップされている過去5年の卒業生の就職状況です。

資料:航空大学校

 

同サイトでは「卒業生の大半はエアラインに就職しており、主要エアラインパイロットに対し 航空大学校の卒業生は約40%を占めています」との記載もありました。それにしても、43%がANAに就職しているのはすごい割合ですね!ANAウィングスも含めたANAグループへの就職割合は実に65%!それに比べてJALは1.8%... この違いも面白いですね!

 

出願資格は19歳から24歳で、高卒または4年制の大学に2年以上在学、または専修学校の修了者になります。もっと詳しくはこちらを参照してください。

 

気になる倍率ですが、同大学の資料によると大体8倍ほどとなっています。

資料:航空大学校

 

ちなみに1次試験が、英語のリスニングを含む総合(筆記)試験で、2次試験が身体検査、3次試験が面接及び飛行訓練装置による操縦適性検査となっています。

航空会社の自社養成プログラムよりは、はるかに倍率が低いです。しっかり勉強して健康を意識して生活していれば、入学も夢ではない数字だと思います。また、近年のパイロット不足のおかげで、定員も108人に増やされたようなので、今がチャンスではあると思います!

 

費用の方は、入学金、2年間の学費、国家試験費用、制服代、身体検査費など諸々含めて380万円ぐらいになり、その上に寄宿料月額が1500円、移動費、寮生活での光熱費、水道料金、食費等などがかかります。

 

 

私立大学のパイロット育成コース

費用:  ☆★★★★

難易度:☆☆☆★★(やや簡単)

時間:  ☆☆★★★

 

近年のパイロット不足の対策として、私立大学がパイロットの育成コースを立ち上げるケースが目立ってきました。海外ではすでに一般的ではあったこの方法は、パイロットのライセンスを取得するのと同時に、大学からの学位ももらえます

 

その育成コースの先駆けとなったのが、ANAと東海大学の航空操縦学専攻です。今では東海大のほかにもよく聞くのが、桜美林大学崇城大学法政大学などがパイロット育成コースを提供しています。どのプログラムも4年制で、東海大と桜美林大学は海外でも訓練することになります。どの大学も国内の大手航空会社への就職実績もあり、パイロットの夢をかなえた卒業生もたくさんいます。

 

私立大学で一番のネックになってくるのが学費です。学費はだいたいではありますが、東海大が1500万、桜美林大学と崇城大学が1900万、法政大学では2600万にもなります!しかもこれは生活費などを含めない額なので、卒業までにどの大学でも2200万~2500万、法政大の場合はそれ以上の資金が必要になってきます。もはや調べているだけで親には頭が痛くなるような金額ですね...

 

次に倍率ですが、大体4~6倍あたりが平均になると思います。航空大学校よりは低い倍率なので、入学できる可能性は上がるかと思います。

 

この他のにも、パイロット育成コースがある学校もあります。調べる中で見つけられたのが、千葉科学大学東京工学院専門学校第一工業大学大阪航空専門学校日本航空大学校などがありました。

 

先ほども書いたように、パイロット不足の中でこのようなパイロット育成コースを提供する大学も増えてくると思われます。しかし多くの大学は飛行機を所有しているわけではなく、国内外のパイロット養成機関に訓練を委託している所も多くあります。それは悪くないのですが、自分が心配しているのは、学費だけ取って生徒を国内や海外のフライトスクールへ留学・訓練させて、ライセンスを取って終わり、というような形だけのプログラムが出てくることです。また、訓練機関との関りが深くなく、訓練を投げやりにしてしまう大学もあるようです。海外では日本とは違う基準で訓練が行われることもあり、各大学がしっかりと訓練課程を見守ることが大事になります。

 

自分では、どこが良いなどはっきり言えませんが、もし自分が学校選びをしている立場なら、就職先へのパイプがしっかりしている所を選ぶと思います。そういう面で、ANAと提携している東海大は理想かと思います。他の大学のプログラムもANAやJALへ卒業生を送り出しているようですが、東海大のような直接的な結びつきがあるプログラムはやはり就職率も高いようです。

 

もちろん、ANAとJALの2社がすべてでなく、ジェイエア、ANAウィングス、スカイマーク、ソラシドなどへ就職できることはとても良い事で、自分もひとつ前の会社(リージョナル)ではとても満足していました。

 

 

民間のパイロット養成機関

費用:  ☆☆☆★★

難易度:☆☆☆☆★(簡単)

時間:  ☆☆☆★★

 

次に紹介するのが、民間のパイロット養成機関を利用してライセンスを取得する方法です。年齢制限なども緩く、入学できる幅は広いです。このうちの数校は、国内の大学のプログラムの訓練も請け負っています。

 

民間のパイロット養成機関の魅力は、大学に比べて費用と時間をいくらか抑えられることだと思います。多くの大学のプログラムは4年制という決められた期間ですが、民間の機関では自分のペースで訓練を進められる事もあり、より短い時間で集中的に訓練を終わらせることも可能かもしれません。また、大学を通さないので、余計な学費を払わずすみ経費を抑えられます。

 

大手では朝日航空IBEXフライトトレーニングアカデミー本田航空などが挙げられます。他にも新日本航空JPAフライングクラブ岡山航空民間航空操縦士訓練学校などが見つかりました。

 

航空会社への就職の面で、IBEXの場合は卒業生にIBEXエアラインへの推薦機会を得ることもできるようです。他の会社も、ソラシドやスターフライヤー、エアドゥや、リージョナルで活躍している卒業生もたくさんいるようです。

 

気を付けたいのは、民間なので最終的にはビジネスが目的です。就職実績など良い面だけを全面的に宣伝して、実際に入ってみたら想像していたのとまったく違った、などとならないようにしっかりとリサーチして、できたら実際に足を運んでから決める事をおすすめします。リサーチする際、自分ならば重要視するのが、就職実績(卒業生の就職先だけでなく、実際の数も)、飛行機の数/種類、教官の数/質/人柄、そして整備の質などに気を配ります。

 

費用についてもバラツキがあるので、訓練費だけでなくライセンス登用費身体検査費など、後から付け足しされそうな費用についても、事前にしっかり確認しておきましょう。

 

 

海外で訓練→帰国

費用:  ☆☆☆★★

難易度:☆☆☆☆★(簡単)

時間:  ☆☆★★★

 

ここで提案というわけでもないのですが、可能性として書いておきたいのが海外で訓練をして、日本のライセンスに切り替えることです。ICAOに加盟している国のライセンスであれば、日本のライセンスであるJCABへの切り替えはそう難しくないようです。

海外に視野を広めることによって、訓練費の削減などの可能性も出てきますし、将来の就職先も可能性も広がるでしょう。

実際に海外で訓練をして、そのままその国でパイロットになった人たちもたくさんいます。自分もその一人です。

 

逆に難しいと思われる点は、JCABへの切り替え後に就職先がうまく見つかるかという点です。もし事業用ライセンスだけを取得後帰国、そして日本でJCABへ切り替えた時、経験、推薦もなく、就職のパイプもないパイロットを雇ってくれる航空会社がいるのかは未知数です。もしかしたら、教官などの仕事をしながら飛行時間を稼ぎ、そこの学校からの推薦などの形で航空会社へ行けるかもしれませんが... そこらへんは何も保証できません。

 

逆に海外でジェット機を運航している航空学校で数年働き、日本でも海外からパイロットを雇っているエアジャパンやスカイマーク、ジェットスターなどへ就職する方がいいかもしれませんね。

 

海外でパイロットになる方法は、以前の記事でもっと詳しく書いているので、こちらを参考にしてみてください。

 

まとめ

●航空会社の自社育成プログラムは、ほとんどの会社で費用もかからず就職先の心配をしなくてもすむが、倍率100倍の難関。

●私立の大学のパイロット養成プログラムは莫大な費用が必要。卒業生の国内のエアラインへの就職率はOK。

●唯一公立の航空大学校は、私立よりは入るのが難しいが、学費もかなり抑えられるうえ、国内のエアラインへの就職率はANAを含め高め。

●訓練費を抑えたい人は、国内外の民間のパイロット養成機関を利用する手も。しかし、しっかりとしたリサーチをした上で学校選びは慎重に。

 

 

おしまいに

先ほども書きましたが、やはりパイロットというとJALやANAで働くパイロットに憧れる方も多いかもしれませんが、パイロットにも色々な種類や業種があり、それに合った方法を見つけるのがベストだと考えます。

自分が働いていたリージョナルでも、たくさんのパイロットが定年までその会社で働けるような環境もできていて、本当に楽しかったです。パイロットを目指す皆さんにも、そんな素敵な会社と出会えるといいですね!

 

パイロット不足の今、この職業に興味を持たれる方もいるかと思います。そういう人も含め、パイロットを夢見ている人のお力になれたらうれしいです!もし質問、またはシェアできる情報がありましたらコメント欄までよろしくお願いします。