皆さんは「パイロットのスケジュール」と聞くと、どんなことを想像しますか??

 

海外の都市へ飛んで、何日もバケーションみたいに観光して、休みも多い、なんてことを想像したりしている方もいるかと思います。

全く間違いでもないのですが、実は話で聞くより結構過酷な部分もあるのです。

 

そこで今回は、国際線ばっかり飛んでいる自分の一か月のスケジュールをお見せして実際どのような生活をしているのか書いてみたいと思います!

 

 

大公開! パイロットのスケジュール表!!

ということで、こちらが2019年11月の実際のスケジュールです!

フライトの出発・到着時刻は会社ばれしないように、大まかにしました(いまさら何を...)アセアセ 

 

時間はすべて現地時刻で、行きと帰りでフライトの長さが違うのは、時差のせいで到着時刻も変わってくるからです。

 

こう見てみると、働いていた日数はたったの10日間のみ!!完全に仕事がなかったのが20日ですが、深夜発の日や早朝に帰ってきた日などはだいたい休日みたいに感じます。しかも、渡航先でも一日ほど休みがあるので、実際に働いている時間はもっと少なくなります。

 

ペアリングとは??

ここでもっと詳しくスケジュールを見る前に、「ペアリング」という言葉を紹介したいと思ます。

 

パイロットとキャビンアテンダントのスケジュールはいくつものペアリング(Pairing)から成り立っています。

ペアリングとは、クルーが担当することになるフライトがいくつもセットになったスケジュールで、ベースとなる空港から始まりまり、最後にはその空港へ帰ってきます。ほとんどのペアリングは機長と副操縦士が同時に割り当てられ、そのペアリング中は一緒に行動します

一日で終わるペアリングもあれば、4日から5日と長くなるペアリングもあり、自分の好みでどういうペアリングがやりたいとリクエストすることもできます

 

例えば、家族との時間を大切にしたくて毎日家に帰りたい人は、朝早く始まって1日で終わるペアリングを沢山やります。逆に子供もみんな独り立ちし、自分の自由な時間が欲しい人は効率の良い3日から5日のペアリングの長距離国際線ばっかりやって、月20日の休みを楽しんでいます。

 

クルーは、大抵の場合飛んでいる時しかお金がもらえないので、一気にたくさんの飛行時間が稼げる長距離のフライトの方が効率よく稼げてより少ない日数で仕事を終えられます。逆に国内線など短いフライトは、空港で待つ時間がどうしても長く、効率も悪いのでその分働か無くてはいけない日数も増えてきます。

 

ここで、実際のペアリングの例を見てみたいと思います!

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ベース空港 - ウィーン

18:10発 - 08:05着 (それぞれ現地時刻)

☆18:10 - 02:05 ベース時刻

 

~現地滞在:24時間~

 

ウィーン - ベース空港

10:10発 - 13:35着 (それぞれ現地時刻)

☆04:10 - 13:35 ベース時刻

 

TAFB: 44時間45分

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この1ペアリング、たったの2フライトだけ17時間20分の飛行時間が稼げます!だいたい毎月70時間から80時間飛ばなくてはいけないので、このようなペアリングを4回ぐらいやれば後は休みです

更に長いアジア線などは、ひとつのペアリングで28時間ぐらい稼げるので、それを2回やって、後は1日、又は2日間の国内線で月が終わる人もいます。

 

国際線パイロットはいつも時差ボケ?!

「月20日も休みなんて最高じゃん!」って思われても仕方ないスケジュールですが、それなりのマイナス面もあります

 

まず注目していただきたいのが各フライトのベース空港での時刻、つまり自分が普段生活して体が慣れている時刻です。ウィーンへ夕方出発して到着するのがベース時刻の深夜の2時。しかし現地では朝8時を回っているのでもちろん太陽も出ていますし、現地の人達にとってはその日が始まったばかりでホテルの外も賑やかな時もあり、眠りに付きにくい事もあります。

 

この時クルーは結構眠い状態なのですが、ここで寝すぎてしまうと大変です!というのも、翌日の朝にはまた飛ばなくてはならないので、その日の夜にきちんと寝れないとフライト中に睡魔と戦うことになってしまいます。なのでクルーは夜にもきちんと眠れるように、着いてすぐの睡眠は短くする人が多いです。数時間の睡眠後、ちょっと眠い状態で外に観光、食事、買い物、またはジムで運動する人がほとんどです。

 

また、夜寝ようとする際も簡単ではありません。翌日の出発時刻が10:10の時、ホテルでのピックアップが大体2時間前になります。このピックアップの時間は都市にもより、大都市で渋滞がひどいところだと3時間以上前という所もあります。

ピックアップの1時間前にはフロントから目覚ましコールが入るので、7時には起きて準備し始めます。

自分はいつも8時間睡眠を目指しているので、夜の11時には寝るように努力するのですが、この時ベース空港の時刻は午後の5時!まだまだ夕方です!幸い一晩前は寝ずに働いており、それなりに睡眠不足なので眠りにつくことはできるのですが、大抵の場合夜中に起きてしまいます

こうなると大変!体は昼寝をしたと勘違いして目がさえてしまい、また眠りに付くことが難しくなってしまいます。

こうなると大抵は数時間起きていて、体内時計が夜に入り眠くなるのを待つぐらいしかできません。そしてようやくまた眠りに付くのが目覚ましコールの1・2時間前というのはよくあることです。

 

飛んでいる時刻を見ると、さらに過酷な状況がわかります。ペアリング初日はベース時刻の18時10分から02時05分まで飛んでいて、24時間後にはほぼ真逆の04時10分から13時35分まで飛ばなくてはいけません。これだけ生活リズムがめちゃくちゃな仕事も珍しい気がします。自分も生活リズムだけは気を使っていたのですが、この生活を始めてから目の下にクマができることが多くなった気がします。毎回仕事に行くたび、一晩分の睡眠が削られている感じなので、「まぁ そうなるよな」って感じです。

めちゃくちゃになった生活リズムを直すのに、自分はだいたい帰ってから2日ぐらいかかります。

 

もちろん人それぞれな所がありますが、国際線を長年やっているパイロットたちと話をしても、多くの人たちが苦労しているようです。

 

国内線と国際線では全然違うスケジュール!

ここまで紹介してきた国際線のペアリング。実は効率の良い国際線のスケジュールは、若手のパイロットには手の届かない存在でもあるのです。

 

海外では年功がとても重要な会社が多く、スケジュールからどの機種にのれるかも、すべて会社にどれくらい務めているかで決まります。各ベース各機種年功順パイロットのリストがあり、上位のパイロットたちは自分の好きなペアリングを選べリストの下の方へ行くほど残り物のペアリングから選ぶ、又は割り当てられます

 

会社に勤めたばかりの若手は小型のB737やA320から始めて、大型機の副操縦士まあまあなスケジュールをもらえるまでは10年から15年ぐらいかかります。

国内線パイロットのスケジュールは先ほど書いたように、もっとたくさんのフライトをこなさなくてはならず、就航先での滞在も短いです。

 

例えば、4日間毎日のように2・3フライトして、滞在も13時間から18時間ぐらいで、稼げたのは21時間ほどの飛行時間です

 

その上、大型機の方が給料も良いので、年功の高いパイロット達国際線を好んで選ぶのも納得ですね。

 

日本と海外の違い

海外の会社、特に北米では、年功が大変重要になると書きましたが、そればかりがすべてではない国もあります。

 

欧州のある大手会社のパイロットを夫に持つフライトアテンダントに聞いたのですが、そこの会社では自分の好みのペアリングをリクエストすることもできず会社側が割り当てたペアリングを淡々とこなす感じだと言われ、クルーみんなで驚いたことを覚えています。

 

日本の航空会社の事情は分からないのですが、北米ほど年功が物を言うとはちょっと想像できません。

 

また、北米の会社でも、すべてのパイロットがフェアになるように、平等にスケジュールを割り当てる会社も出てきています。そうすることによって若手のパイロットにも魅力的な仕事場を目指しています。

 

 

おしまいに

いかがでしたか?想像していたパイロットのスケジュールとちょっと違っていましたか?

良い所だけでなく、大変な面についても書きましたが、少しでもパイロットの事で新しいことを知っていただけたら嬉しいです!