※こちらの記事は海外の情報を中心に書いてあります。日本国内でパイロットになるには、こちらのパイロットになるには?総合ガイド!(日本国内編)を参考にしてみてください。

 

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お久しぶりです。

 

以前、カナダでパイロットになるには?という記事を書きましたが、結構反響が多くて驚いたと同時に、皆さんの関心が高いことがわかりました。

そこで今回はカナダだけでなく、海外でパイロットになるにはどのような道があるのか、大まかに4つの方法を「費用」、「難易度」、そしてエアラインパイロットになるまでの「時間」の3つの点で評価してみたいと思います。

 

 

世界中でパイロットが不足?!

いま世界では非常にパイロットが不足しています。それは航空業界の発展につれパイロットの需要が増えているのに、供給が追い付いていないのが原因です。それと同時に、1940年後半~1960年前半頃生まれの団塊世代が定年を迎えているのも、このパイロット不足に拍車をかけています。

 

航空機メーカーの大手ボーイングのCEOは、次の20年で約80万人のパイロットが世界中で必要とされると予想しています。そしてパイロット不足が航空業界が抱える大きな問題のうちの一つだと言っています

 

その中でもアジアはパイロット不足が深刻で、世界中からアジアの航空会社にパイロットがリクルートされています

 

自分自身もCRJの機長になり、オンラインの情報を更新したらすぐに中国の転職会社から、中国本土の航空会社へのお誘いが数件届きました。

あまり興味がなかったので断らさせていただいたのですが、各航空会社の必死さが伝わってきました。

 

日本でも大手2社以外は、海外からパイロットを雇っている所も結構ありますが、逆に日本人パイロットがアジア諸国の待遇の良い航空会社に引き抜かれることが多くなっています。

それではこれからパイロットとしてのキャリアを始めたい人にはどういう道があるのでしょうか?今回は、「自社養成/Cadetプログラム」、「航空学校」、「フライトクラブ」、「自衛隊/空軍」の4つの方法を紹介します。
 
※自分はカナダの情報が主なので、他の国の情報はネットで集めてみました。あくまでも参考として読んでいただけたらと思います。
 
 

自社養成/Cadetプログラム

費用:  ☆☆☆☆☆

難易度:☆☆★★★(難しい)

時間:  ☆☆☆☆☆

 

日本でもよく聞くパイロットの自社養成。全日空や日本航空、スカイマークが採用していて、航空会社が訓練費用を負担してパイロットを育てるプログラムです。自社養成は海外ではCadet(キャデット)プログラムと言われています

 

日本では狭き門...

まずネックとなるのが、その難しさ。日本ではどの会社も倍率100倍以上といわれる狭き門で、健康面、学力、英語力など、いろいろな分野をチェックされます。その上、日本航空のように、事業用パイロットライセンスを持っていると応募さえできないなど、どの会社も一からパイロットを育てる事にこだわっているようです。

 

海外では少しはチャンスが...?

それでは、海外ではどうなのでしょうか?

実は日本以外にも、自社養成があるところは沢山あります。例を挙げると、香港のキャセイパシフィック航空、それからシンガポール航空など、アジアの大手の航空会社も自社養成プログラムがあります。しかし、そのほとんどがその国の国籍か、永住権所持者を対象としています。

 

そんな中、シンガポールのスクートのキャデットプログラムの応募事項には、「Legally entitled to work in Singapore upon completion of training.」、つまり訓練終了時にシンガポールで合法的に働けれるのであれば応募資格があることになります。

 

また、欧米を見てみると、すこし制約が軽くなるように見受けられます。多くの航空会社は応募資格として、合法的に働けることを条件としています。つまり、自国民のみならず、就労許可さえあれば応募できる会社もあります。代表的なのは、イギリスの格安航空会社大手のイージージェットあたりです。イージージェットの応募サイトへ行くと、「すべての人を平等に扱う」ことをアピールし、年齢、人種、宗教、国籍など関係なくチャンスがあると書いてあります。

 

カタール航空もSelf Funded(自己資金)ではありますが、キャデットプログラムがあります。国籍に関する記述はないのですが、応募事項の中に「Must be able to obtain official police clearance from home country(出身国から警察証明書を得られること)」と書いており、また提携している航空学校も海外から生徒を受け入れているので、問い合わせる/応募してみる価値はあるかと思います。

 

ここのサイトにキャデットプログラムがある航空会社のリストがあるので、参考にしてみてください。ただし、応募資格が若干正しくないところもあるので、個人で各航空会社のページへ行ってチェックすることをお勧めします。

 

航空学校

費用:  ☆★★★★

難易度:☆☆☆☆★ (やや簡単)

時間:  ☆☆☆★★

 

日本では敷居が高いイメージのある航空学校ですが、海外ではビジネスとして捉えているところも多く、入学するのはさほど難しくありません。アメリカやカナダへの航空留学はよく聞きますが、ヨーロッパにも実際に航空学校へ留学し、エアラインで飛んでいる日本人もいます。

なぜ航空学校??
航空学校へ行くメリットは、数あるコースの中から自分のニーズにあったコースを取れることです。多くの大手航空会社は、パイロットの応募資格の中に大学卒業の資格を含めることが多いです。航空学校は、パイロットになる訓練を受けながら、その航空学校で、または提携している大学で大卒の資格を取ることができます。

航空学校が提供するコースの中には、エアラインで働くのに必要なATPL(Airline Transport Pilot License/定期運送用操縦士)ライセンスを取得できるエアラインコース(Integrated Airline Transport Pilot Course (IATP))や、PPL(Private Pilot License/自家用操縦士)、CPL(Commercial Pilot License/事業用操縦士)など別々に取得できるコースもあり、個々の時間と費用に合ったコースを選ぶことができます

エアラインまでのタイムライン
航空学校のエアラインコースを修了する際、卒業生はだいたいライセンス取得に必要最低限の飛行時間しかありません。前の記事にも書きましたが、大手航空会社の大抵が数千時間の飛行経験を必須としています。
卒業生は、私も含めて、教官として最初の数百時間を稼ぎ、数人乗りの飛行機を運用する小さい会社でターボプロップ機での飛行時間を稼いでから、ようやく大手エアラインのリージョナルの会社へ雇われる形で昇進していきました。現在はようやく大手航空会社で働くことができていますが、ここまで来るまでに卒業から5年ほど要しました。

ここで言っておきたいのは、卒業から大手エアラインまでかかる時間は、時代とその時その時の状況により大きく変わってきます。今一緒に飛んでいる機長たちの多くは、リージョナルに入るために5年から10年ほど飛行時間を稼ぐ必要があったと言っています。それに比べて、現在のパイロット不足はリージョナル航空会社の運行に支障をきたすほど深刻になっており、リージョナル航空会社は採用するパイロットの飛行経験を数百時間まで低くしたり、航空学校と提携して優秀な新卒を直接採用するなど、あの手この手でパイロット不足を乗り切ろうとしています。

 

費用

さて、ここまで航空学校について色々と書きましたが、肝心な費用の方はどうなのでしょうか?

エアラインコースになると、どこの学校でも学費だけで550万~700万ぐらいは見積もっておいた方がいいでしょう。その上さらに1~2年ほどの生活費などがかかってきます。

 

各種ライセンスごと取得できるコースの費用は参考として、あるカナダの学校の学費はPPLが大体110万~130万CPLが150万Night Rating(夜間飛行)が25万Multi/IFR(多発/計器飛行証明)が130万ほど。その上に、ATPLの試験代などが必要になります。エアラインコースは、これらをすべてと航空関連座学をまとめて一つのコースとして提供するので、もう少し費用がかかる感じです。これはあくまでも各種ライセンスの費用で、私個人では経験していない方法なのでかならず航空学校へ直接聞いた上で検討してください。その上、大卒の資格やエアラインコースを卒業していないので、就活では不利になる可能性も十分あります。

 

費用を削減するには...?

ここで、少し時間はかかるかもしれませんが費用を抑えたい方へお勧めしたいのが、PPLとCPLを取った後に教官のライセンスを取り、その航空学校で働き始めることです。学校によっては、雇っている教官は割引レートで飛行機を借りれる上、友達の教官に頼んでタダで多発/計器飛行証明の訓練をしてもらえるかもしれないからです(飛行機のレンタル代はかかります)。しかしこればっかりは学校にもよるので、事前に確認が必要です。

またこの方法は、数年前までみんな教官としてパイロットのキャリアをスタートさせなければいけない時代にはあっていたかもしれませんが、現在のように多くの生徒が少ない飛行時間でリージョナルには入れるチャンスがある時代には向いていないのかもしれません。ここも、卒業生の最近の動向を含めて、学校側に聞くのがベストだと思います。

 

必ずチェックしたいこと

海外の航空学校を考えるうえでとても大事なのが、卒業後その国で働けるのかという点です。学校にいる間は「生徒」なので、ビザの取得も簡単な場合が多いのですが、働くとなると別問題です就労ビザ、または永住権などの取りやすさも含めて下調べが必要です。

また、ライセンスは取った国での就職が難しい時、ほかの国へ行く手もありますが、その場合のライセンスの書き換えやすさも考えておきましょう。例えば、アメリカのライセンスは世界中でも認知度が高いので書き換えも難しくないかもしれませんが、アジアで取得したライセンスを持ってアメリカで書き換えをしようとすると、追加のテストなどでさらに費用と時間がかかると思われます。

 

まずは行動!

先ほども書いたように、海外では航空学校はビジネスです。学校側としては生徒を受け入れるために、フレキシブルな対応をしてくることが多いです。まずはメールで自分の状況を説明し、そのニーズに学校側が対応できるか聞くのがベストでしょう。

 

フライトクラブ

費用:  ☆☆☆★★

難易度:☆☆☆★★(少し難しい)

時間:  ☆☆☆★★

 

フライトクラブとは、所属する会員が飛行機を借りれる非営利の組織です。飛行機のライセンスを持っているけど自家用機を持っていない人たちが、比較的に手頃な価格で飛行機を借りれます。大抵のフライトクラブは、訓練もやっており、所属の教官たちからレッスンを受けることができます。

 

メリットは?

フライトクラブの一番のメリットは、訓練費を抑えられることです。パイロット訓練で一番お金がかかるのが、飛行機のレンタル料です。フライトクラブでは小型プロペラ機を借りるのに、だいたい一時間8000円~9000円で、その上に教官への授業料が教官個人/クラブにもよりますが、4000円から5000円ぐらい加算されます。大抵の航空学校がレッスン一時間で1万6000円ぐらい取るので、そちらと比べてお得になります。数千円ぐらいの違いかと思われますが、ライセンスを取るにはそれなりの飛行時間がいるので、最終的にはPPLだけで40万ほど得した人もいます。

 

その上、フライトクラブにいる教官は長くやっている人が多く、質の高い訓練が受けられます。航空学校の教官は、エアラインへ行くための時間を稼いでいる人も多いので、教官の入れ替わりが激しく、訓練の途中で教官が代わることもしばしば。せっかく気に入っていた教官が途中で抜けていくと、訓練の質も一定ではなくなりますし、余計に時間もかかることもあります。

 

また、教官個人との繋がりを利用して、フライトクラブを通さず、授業料を安く抑えることも可能かもしれません。つまり飛行機はフライトクラブから借りるのですが、教官は自分で連れてくる感じです。フライトクラブによっては許可しないかもしれないので、そればかりは事前のリサーチが必要です。

 

フライトクラブ vs 航空学校

いいこと尽くめに聞こえるフライトクラブですが、デメリットもあります。

まず、大手エアラインが重視する学位が取れないことです。なので、エアラインが最終目的の人はどこかの大学で資格を取る必要があるかもしれません。

他にも、航空学校は訓練することが目的なので、国が定める訓練課程の変更点などにも学校として素早く対応しますが、フライトクラブはどちらかというと教官任せの部分もあるので、訓練を受ける側としても注意しながら訓練を進めることをおすすめします。

 

自衛隊/空軍

費用:  ☆☆☆☆☆

難易度:☆★★★★

時間:  ☆☆☆☆★

 

これは番外編と言っていいいくらい大変かもしれませんが、じつは世界のエアラインで働く多くのパイロットは空軍出身だったりします。

 

軍隊に入るメリットは、訓練費用面はすべてカバーされる上、給料も入ります。さらに国によっては、過去に軍隊に所属していた人は学費の援助を受けられるなど、手厚い手当てを受けられます

 

しかし、大抵の国は、軍に入るのにその国の国籍が必要になります。その上、どこの国でも空軍でパイロットになるには大変な苦労と努力が必要になります。

更に、元空軍のパイロットは長い年月のあいだ一人で飛ぶことに慣れており、複数のクルーが操縦に携わるエアライン業界で重視されるCRM(Crew Resource Management/クルー・リソース・マネジメント)が不足しているというレッテルを貼られていた時期があり、航空会社によっては元空軍パイロットというだけで応募もできないこともあります

 

 

 

 

おわりに

いかがでしたか?少し長くなりましたが、少しでもお役に立てればうれしいです。

先ほども書いたように、まずはメールで問い合わせてみてください。どこも「Contact Us」ってかんじで連絡先が出ているので、気軽に相談できます。最初の一通目は緊張するかもしれませんが、そのあとはコピペでどんどん質問しましょう!