総集編のその先に:大人の麦茶第22杯目公演『その贈りものの酒は封が開いていた』(前) | あるさの日々これ出会い

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先週の水曜日(5/11)から日曜日(5/15)までの5日間、下北沢のスズナリで、大人の麦茶第22杯目公演『その贈りものの酒は封が開いていた』が上演されました。

自分も、もちろん観に行ってきました。

行けたのは残念ながら、初日、二日目夜、千穐楽の3公演だけでしたが、今回の公演もまた、いい舞台でした。

以下ではいつものように、勝手な思い込み満載で、少し観劇感想を書きたいと思います。



初日の劇場の客席に入ってまず嬉しかったのが、オトムギ公演定番の、田中敏恵さんが建てた美術セットです。

田中敏恵さんのお仕事は毎回、自分の中にある美的快感中枢を刺激してくれます。

それは過去に何度も書いたように、うまいとか美しいとか言うより、「気持ちいい」と表現したくなるものです。

自分は彼女の作ったセットだけで、ごはん3杯は食べられます。



さて、今回のオトムギ22杯目公演には、いままでのオトムギの舞台と比べて、ある特徴があるように思えます。

それは劇中に、作演出の塩田さんが過去に手掛けた作品からの(広い意味での)「引用」が、数多く登場することです。


例えば、池田稔さん演じる工務店『越瀬(こわせ)』の瀬川社長(代表取締役)と、全原徳和さん演じるその店の若頭(かしら)赤池榮二は、2013年上演のオトムギ大人の特別公演『ベッドにもなるソファー』に登場したコンビ。

傳田圭菜さん演じるリフォーム会社『間に合ップ』店長の鳴滝翼翔(なるたきせすな)は、2014年に塩田さんが脚本を書いた、傳田さんの属する劇団「激嬢ユニットバス」の旗揚げ公演に登場したキャラクターです。


このような直接的な「引用」は他にもあるのですが、さらに今回の舞台の中には、作演出の塩田さんが意図したものかどうかは別にして、過去にオトムギとなんらかの関係があった舞台からのイメージが、投影されていると思われる部分があります。

例えば今回の物語の舞台となる「舌足らず」という居酒屋は、白旗そよこ・たかみという姉妹が切り盛りしていますが、それは大人の麦茶第12杯目公演『ちがいますシスターズ』でお店をしきっていた姉妹を思い出させます。

また、並木秀介さん(なみちょうさん)演じる清広という人物が、地元商店街のステークホルダー(企業や地域の利害関係者)を自称して登場し、劇中でその商店街を1艘の海賊船に例えるのですが、これも、なみちょうさんが2014年に奔走して実現させた自主公演『海賊屋万次郎がゆく』と響きあいます。


そういった関連性は、長年大人の麦茶やその劇団員たちを見てきた人間にとっては、なかなかに楽しいものです。

しかしもちろん、この舞台ではじめてオトムギの芝居を観る方々にとっても、この作品は、そんな過去のあれこれを知らず思わずとも、十分に楽しめる内容になっています。



ここまで、過去作との関連性について書いてきましたが、今回の22杯目公演には、新しい側面もありました。

このブログの後半では、特になみちょうさんと岩田有弘さんの芝居を中心に、新たなオトムギの可能性について書いていこうと思います。


(中につづく)