期限の切れた

定期券を夏雲に預けた

 

もうその青い列車には乗れない

窓の外を見ている横顔

風に髪が揺れている

 

蝉の声から

花を落とした向日葵の改札を抜けると

もう空は高くなっていた

 

新しい定期は

どこまでを買おうか

 

自転車で走っていたら

沢山の秋桜が風に揺られていました

 

誰かが植えて整えたというよりも

自生して広がった感じのする

乱雑さだったのですが

 

思わず自転車を止めて

花に近づいてみました

 

風が吹くたびに

いっせいに頭を揺らす

秋桜でした

 

(Tanka)

a breeze blows -
the cosmos swaying,
lost among the flowers,
an autumn afternoon
just as it is
 

秋の夜長ということで

久しぶりに家でゆっくりと

本を読んでいました

 

子供たちも眠りについて

騒ぎの主たちが消えると

家の中は随分と静かです

 

その静けさが集中力を

高めてくれるのでしょうか

本の言葉が頭に入ります

 

やがて

僕がページをめくる音だけが

家の中に響き

 

秋の夜はそのままに

更けていきました

 

(Haiku)

deep into the autumn night -
the rustle of turning pages
through the stillness

 

 

二人だけの

秘密の指切りをそっとほどいた

 

君の小指に触れたい

 

手紙に綴るそれからを

秋風が白く吹き消して

 

まっさらな

空白に虫食われた紙が

羊雲に食べられている

 

秋の夕暮れが景色を染めるころ

電車に乗っていました

 

吊革につかまり

窓の外を眺めていると

寄り添った家々の屋根が

次々と遠ざかってゆきます

 

その屋根のそれぞれに

誰が暮らし

どんな思いでいるのか

僕が知ることはありません

 

それぞれの一日が

穏やかに暮れてゆけばいいなと思いました

 

(Tanka)

from a passing train -
rooftops drift away one by one,
each day within
held in the fading gold
of an autumn evening