U1ブログ「そば、かけで」 -35ページ目

闇歴史Ⅲ




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異国の男性というからには、我々東洋人とは趣の違った顔立ちをしているのであろう。
おそらくは、鮫に近いはずである。
この猫の額のように狭い町で、鮫のような顔をした異国人がいるような場所はひとつしかない。
駅から10678歩ほど離れた場所に立地している、ライオンの哺乳類としての弱さをモチーフにしている寂れたバーである。
鮫のような顔をした異国人は生涯に一度、必ずそのバーに訪れるのだ。
私は、まさに今日がその日であるということを知っていた。
なぜならば、銀行員の家政婦が自転車を借りているからである。







闇歴史Ⅱ




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今日は自転車で行こう。
私はそう決めた。
そうと決まれば、まずは自転車を探さねばならぬ。
なにせ私は自転車を持っていないのだ。
私はちょうど通りかかった銀行員の家政婦に、すいませんが自転車を貸してもらえませんか、とお願い申してみた。
申し訳ございませんお貸しすることはできません申し訳ございません。これは先ほど異国の男性よりお借りしたばかりなのです申し訳ございません。
銀行員の家政婦は、それはそれは身を縮こまらせ、たいそう申し訳なさそうに言葉を並べた。
珠のように純白の色の肌に透明な冷や汗をかき、何度も何度も頭を下げる。
そして塩をかけたら溶けてしまうのではないかと思わせるほど小さくなり私の前からすっぽりと姿を消してしまった。
おそらくは仕事場へと向かったのであろう。
しかし、異国の男性というのは気になる。あの銀行員の家政婦は異国の男性から自転車を借りたと言っていた。
それはつまり、その異国の男性が自転車貸し屋であるということを意味しているのではないだろうか。
世の中にそのような職業があるのかは私に知るところではないが、金銭を貸すという職業があって自転車を貸す職業がないという道理もあるまい。
私は、そう思い立つとその異国の男性なる人物を探すことにした。





                                 つづく


闇歴史Ⅰ。これなら怒られない。






私は大学へ行かねばならぬ。
もちろん勉学を学ぶためではない。
友のお見舞いに行くためである。
幼少の頃より病気がちであった友は幾度となく命を落としかけた。
そして、そのたびに大学に入院するのである。
大学に入院という表現は、なんともおかしなものではあるが、それは真実以外のなにものでもなく、またそれ以外に適切な表現がないのでそう書き表すしかないのだ。
私は友が通算13回目となる入院をしたことを虫の知らせで知った。本当は知りたくもなかったが知ってしまった以上お見舞いには行かなければならない。
たとえそれが虫の知らせでもだ。
その日は3日前に亡くなった父の葬儀の日であったが、しかたがない。
私は大学に行かねばならないのだ。
私は悲しみに浸っている家族を背中に我が家を出た。
大学まではおよそ1時間ほどの距離である。
1時間ほどという時間を距離として表現することが、日本語として正しいか正しくないかは別として、とても不思議なことにどのような交通手段を用いても、我が家を出発して大学に着くのは常に1時間後なのだ。





                                     つづく