一人暮らしの同僚が、こう言っているのを耳にしたとします。
「ゆうべテレビでお笑い番組をやっていて、思わず爆笑しちゃったよ」
この発言を聞いて、違和感を覚えるでしょうか?
おそらく多くの人は「番組がとても可笑しくて、大声で笑ってしまったのだな」と思うでしょう。
ところが、この「爆笑」という言葉の使い方は誤りとされる場合があります。
「爆笑」の意味を「大勢が大声で笑うこと」と解説している辞書が多く見られます。
「大勢が」という部分がポイントです。
言葉の意味を忠実に捉えると、「爆笑」は一人で笑っていることではなく、大勢で笑っていることを指しているのです。
もし一人でものすごく笑ったと言いたいのであれば、「大笑い」と表現すべきでしょう。
ところが、この「爆笑」の意味は近年少しずつ風向きが変わっています。
広辞苑は第7版より、「爆笑」の意味を「はじけるように大声で笑うこと」としました。
「大勢で」という意味は含まれなくなり、人数に関わらず勢いよく大笑いすること全般を「爆笑」と表現する、と示しているのです。
では、なぜそもそも「爆笑」は「大勢で」笑うことを指すとされてきたのでしょうか。
実は「爆笑」という言葉の起源や由来はよく分かっていません。
少なくとも古語として使われてきた言葉ではなく、比較的新しく登場した言葉と考えられています。
昭和時代に「ドリフの大爆笑」という歌のフレーズがテレビから流れていたように、人々の間で気軽に使われるようになり、広まっていった言葉なのではないでしょうか。
辞書に「爆笑」が掲載されたとき、理由は定かではありませんが「大勢で」笑うという意味が記されました。
そのため、爆笑の意味は「大勢でどっと笑う」が本来であり、一人で笑う場合には使わない、と考えられるようになった可能性があります。
しかし、前に挙げた広辞苑が記述を改めたことからも分かる通り、すでに「爆笑」は「大笑い」とほとんど差異なく使われる言葉になりつつあります。
言葉は時代とともに変化していくものですが、今回取り上げた「爆笑」のように、そもそも「正しい言葉」「正式な言葉」が存在するのか怪しいものもあるのですね。