怒りの感情が高ぶり、声を荒立てることを何と言いますか?
「声をあらげる」と表現したことがある人がいるのではないでしょうか。
実はこの言い方は間違っています。
どの部分が間違っているのか、説明できますか?
正解は「声をあららげる」です。
漢字で書くと「声を荒らげる」となります。
漢字で表記した場合も「ら」が送り仮名として必要な点に注意しましょう。
平成22年に調査が行われた、文化庁「国語に関する世論調査」では、本来は誤りの「あらげる」を使う人が約8割にのぼる結果が出ています。
「あららげる」を使う人は11.4%と、全体の1割強ほどの人しかいないことが分かっています。
つまり、多くの人が間違えている言葉なのです。
では、なぜこのような誤用が広まったのでしょうか。
考えられる原因としては、「あららげる」よりも「あらげる」のほうが言いやすいからでしょう。
「らら」とラ行を続けるのは言いにくく、「ら」と1回にしたほうが言いやすいと感じる人が多いはずです。
また、「〜らげる」という表現は、「あららげる」以外であまり目にする機会がありません。
強いて挙げるなら、苦痛などを「和らげる」という表現があります。
「やわ+らげる」なので、「あら+らげる」と考えれば納得がいくでしょう。
ここでまぎらわしいことを言います。
食べ物などをすっかり食べてしまうことを「平らげる」と言いますよね。
なぜ「たいら」+「らげる」で「たいららげる」ではないのでしょうか?
これを解明するには、古語の知識が役立ちます。
古語では、「平らぐ」「荒らぐ」という言葉が存在していました。
どちらも「ぐ」を「〜げる」に変化させることで「平らげる」「荒らげる」という言葉になります。
先に挙げた「やわらげる」も、正しくは「やわらぐ」の「ぐ」が「げる」に変化しているのです。
一方、現代の日本語には「広げる」という言葉もあります。
なぜこの場合は「〜らげる」ではなく「〜げる」なのだろう?と疑問に思いますよね。
これも上と同様に古語の成り立ちで説明できます。
「広げる」は古語で「広ぐ」と言っていました。
「ぐ」を「〜げる」に変化させると「広げる」になるのです。
中学・高校時代、「古文なんて何の役に立つのだろう?」と疑問に感じた人もいるかもしれません。
実は、こうしたところで言葉の由来を理解するときに役立つことがあるのですね。
「あらげる」ではなく「あららげる」。
「あらぐ」「たいらぐ」「ひろぐ」という古語をセットで覚えておくと、間違いを減らせるはずです。