分かりやすい文章を書く上で重要なテクニックの1つに「指示語」の使い方があります。
指示語は「こそあど言葉」とも呼ばれます。
「これ・それ・あれ・どれ」「この・その・あの・どの」などの言葉のことですね。
指示語の使い方がうまくいっていないと、かなり高い確率で文章が分かりにくくなります。
たとえば、次の文を読んでみてください。
「iOS14.3ではApple ProRAW撮影ができるようになりました。
これは現状iPhone12 Proのみで使用できる機能で、これ以外の機種では選択することができません。」
2つ目の文中で「これ」という指示語が2回使われているのですが、それぞれ指し示しているものが異なっています。
1回目の「これ」は「Apple ProRAW」を、2回目の「これ」はiPhone12 Proを指しています。
注意深く読めば「これ」が何を指し示しているのかが分かりますが、ざっと目を通しただけだと一瞬何を言っているのか分からなくなりそうです。
このような文章を書いてしまう原因として、「書き手は分かっているつもりになっている」ことが挙げられます。
書き手の頭の中では、1回目の「これ」からApple ProRAWに向けて矢印が出ていて、2回目の「これ」からiPhone12 Proに向けて矢印が出ているのです。
よって、書き手にとっては「ごく普通に分かる」文章として認識されているはずです。
しかし、読み手には矢印が見えません。
1回目も2回目も同じ「これ」なので、どちらが何を指しているのかを考えながら読み解く必要があります。
おそらく、多くの読み手にとって負担にもなるはずです。
指示語を使うときには、「矢印」の代わりに使っている感覚を持つことが大切です。
矢印の代わりですが、本物の矢印のように「これはこの言葉を指しています」と図解することはできません。
指示語は便利なようで、実はとても曖昧で不便なものなのです。
指示語によって文章の意味が取れなくなるのを防ぐには、書き終えてから次の観点で見直しをするといいでしょう。
- そもそも指示語を使いすぎていないか
- 指示語が指し示すものを具体的に当てはめられるか
- 指し示すものが指示語と離れすぎていないか
- 別の言葉を指し示しているように誤解されないか
指示語は指し示すものを表す矢印の代わりと思って使いましょう。
矢印の役割をきちんと果たしているか、書き終えてからしっかりとチェックすることが大切です。
「自分では分かっていても、読み手にとって分かりにくいのではないか」と疑いの目を持って見直すようにしましょう。