【対話】事例の列挙 | 早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

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こんにちは。
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 人と話をすることで、忘れていたことを思い出す。日常生活で、誰しも経験したことがある瞬間だと思います。

 顧問先を訪問して、経営者の方と話をする中で、「それで思い出しましたけど……」と会話が紡がれていく。経営者にも税理士にも、どちらにも起こりうることで、そういう瞬間に立ち会えると、今日も訪問してよかったと実感します。

 右ですか、左ですか。政治的な立場について、単刀直入に聞かれたことがあります。まず返した言葉は「話を聞いてくれますか」。右でもない。左でもない。そもそも単純に左右で分類できるとも思えない。自分が真ん中にいるつもりでも、時代が右に振れれば、立ち位置としては左になってしまう。ということを丁寧に説明したいとは思いますが、果たして、相手にゆっくり話を聞く意思と時間があるのかどうか。右か左かに安易に分類して安心したいという思いがないか。結論を急ぐ風潮には、いつもためらっていたいと思っています。

 ミシマ社が定期的に発行している『ちゃぶ台』という雑誌。今読んでいる第10号に、美学者の伊藤亜紗さんが「会議の研究」という論考を寄せていました。「そこにいる人が観客や観察者ではなく、あくまで発言権をもった参加者であるかぎり、どんな会議であったとしても、議事の結論を事前に言うことはできません」(P.36)。つまり、会議は生モノなのだと。そうでない退屈な会議が多いのも事実ですが、構造的には生モノといっていいのでしょう。

 ある育児系雑誌の編集会議。特集として「入眠儀式」を取り上げようとしていて、編集長のIさんが進行役として会議を仕切っています。「重要なのは、Iさんが、「入眠儀式を扱うことについてどう思いますか」とは問いかけていないことです。つまり、案に対する賛成/反対を述べるようには呼びかけていない。あくまで「みなさんはどんな入眠儀式をもっていますか」と具体的な事例を問いかけているのです。事例の列挙が議決の代わりになる。言葉にすると意外な感じがするかもしれませんが、少人数の会議では自然に行われていることであるように思います」(P.46)。

「それで思い出しましたけど……」も、事例の列挙に他ならないのだと思います。相手の言葉や経験に触れて、自分の感覚や経験を思い出す。そうやって会話を重ねていくことで、なんとなく方向性が見えてくることもあるでしょう。

 白か、黒か。賛成か、反対か。二者択一の議論は分かりやすい反面、結論を急いでしまい、そこからこぼれ落ちてしまう思いを生むような気がします。そのこぼれ落ちそうな思いに敏感でいたい。そのためには、互いにゆっくり耳を傾けあう関係を築く必要がある。第一歩として、人の話をゆっくり聞く意識は持ち続けたいと考えています。




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