納税の減額請求 | 早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

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【本文】-----------------------------------------


 「納税の減額請求 延長」


 きのうの日経新聞一面です。


 税務署による事後的な増額請求が3~7年認められているのに対し、納税者が減額を請求できる期間が1年に限られている。だから不公平だ、と。


 そうだ、不公平だ!と思われた方は、以下の文章をお読み下さい。



 法人税や所得税を思い浮かべて下さい。日本は申告納税方式を採用しており、納税者自らが自らの計算で所得を計算し、それに対する税額を計算し、税務署に申告書を提出します。

 その提出された申告書は、提出時点では「受理」されただけで、「承認」「お墨付き」をもらった訳ではありません。法人の場合、3年に1回程度の税務調査が行なわれ、税務署がいろんな資料を見たり、質問をしたりして、申告内容の妥当性を検討する訳です。


 さて、冒頭の文章に戻りましょう。


 税務署による増額請求:3~7年
 納税者による減額請求:1年


 実は、この間に、重要な一文が省略されています。法人の場合に限定し、言葉を少し置き換えると以下になります。


 税務署による増額更正:5年
 税務署による減額更正:5年
 納税者による減額請求:1年


 まず1つ目の指摘として、税務署は、自らはやりませんが、減額更正をすることができ、その期限は増額更正をする期間と同じ5年です。つまり、増額も減額も5年間することができ、そこに不公平はありません。


 ただ問題は、税務署はすすんで増額はするけれど、すすんで減額はしない、ということですね。これは簡単です。納税者が自ら、こうです、と申告したのですから。もし間違っていて、減額して欲しいのなら、納税者からお願いするのが筋、ということです。


 で、今、不公平だ、と言われているのは、納税者から減額をお願いできる期間が1年しかない、という点です。



 ここで2つ目の指摘です。税務署が増額をするのは仕事であり、権利ではありません。一方、納税者が減額を請求するのは、権利です。全く性質の異なることであり、それを同じ土台で、片や5年だ、片や1年だ、と論じるのはナンセンスだ、ということです。


 納税者の請求期間を5年にする、という案もあるようですが、逆に税務署の増額期限を1年に合わせることを考えるとイメージしやすいかもしれません。毎年税務調査が必要になる、ということですね。


 申告納税方式の場合、資料は全て会社にある訳です。そうでなくても、会社の状況は会社が一番よく分かっている。


 その状況の中、税務署は、申告書の内容を書類で調査し、税務調査の対象先を選定し、事前調査を行い、実際に税務調査をし、場合によって裏づけ調査を行なう。そのために必要な期間を5年と定めているわけです。情報があまりにも非対称なことを考えると、単純に5年だ、1年だ、と論じれる問題ではないことはご理解頂けるのではないでしょうか。


 まあ、とはいえ、納税者有利の改正ですから、税理士がとやかく言うことでもないのですが、ただ何でもかんでも権利拡張が望ましいとする風潮には、疑問を呈しておく必要があるかな、と思った次第です。