泉鏡花の原作!杉原邦生が演出?
というわけで
世田谷パブリックシアターに行ってきました。


三軒茶屋は仕事帰りだと少し遠く、20分の休憩を挟7む2時間25分はやはり疲れました…。

舞台は中央に客席へ伸びた矩形の花道のような場所があり、その先は1階客席の下に降りて行く階段で、ここからも俳優は出入りする。

最初に黒衣のようなスタッフが黒い袋(遺体収容袋のような)を両袖から次々に引いて置いて行く。袋の上部からは花が一輪伸びており、やがて一輪の花を握った手が伸び袋を剥いで登場人物が現れる…この演出好きでした。

こんもりとした黒い土、植物が人間の魂を糧に不思議な物語を紡ぐようで。
ヒロインの雪は、洪水にのみ込まれ死んでしまうのですが、最後にこの袋がまた登場し、袋から伸びた手に勇美子が黒百合を手渡すと中から雪が起き上がり花道に去って行く。その背後では盲目の恋人・拓が、滝太郎らと共に、海賊(?)として船出をするところで終わる。全体的な感想としては、今月は歌舞伎座「積恋雪関扉」と共に「植物系」だなと(笑)。墨染桜も黒百合も土の中から伸びてその内に生命の焔をたたえていて、不思議なエネルギーが人々を翻弄するかのようなイメージを持ちました。

雪の清純な魅力を演じた岡本夏美、モウセンゴケをひたすら見つめ負の力を感じさせる勇美子の土居志央梨、伝法な若様、滝太郎をミステリアスにも見せた木村達成、繊細さの中に実は本来の自分の迷いを隠していた拓の白石準也。こうした彼らを隣家の老女(拓と雪の守り神のような)の白石加代子と若頭・拓を探しにきた外山誠二の存在感、滝太郎の幼い頃を知る盗人・お兼の村岡望美らの存在感が締めていました。

杉原邦生の演出は滝太郎、雪、拓の三角関係に絞って壮大な物語を纏め上げたが、物語の中にある欲望と清浄、死と再生などのエネルギッシュな感じが今一つかなとも感じた。山(立山)の持つ魔性のエネルギーを感じさせた装置(堀尾幸男)は常に舞台奥で存在感を放っていたと思います。




原作は、1899年の新聞連載の長編小説。
富山・神通川流域の洪水と立山、「石滝(いわたき)の奥」に咲く幻の花黒百合伝説を背景にした冒険小説ともピカレスクロマンともいった風情の小説で「鏡花初期の意欲作」とのこと。

富山の県知事邸に出入りする花売りの娘・雪(岡本夏美)は、県知事の令嬢勇美子(土居志央梨)に、「石滝」という足を踏み入れただけで暴風雨が起こるという「魔所」に咲く幻の花「黒百合」を採ってくるよう命じる。雪は盲目となった恋人・拓(白石準也)の治療費を得るためその依頼を受ける。
浅草で孤児として育ち、子爵・千破矢家の血を引くことが分かりこの地に引き取られた滝太郎(木村達成)は、生まれついての盗癖があった。花や植物が好きな勇美子に、どこで手に入れたか分からない「モウセンゴケ」(食虫植物)を届けた滝太郎は、雪に心惹かれる。「誰も成し得ないものを盗みたいという衝動」にかられ、彼もまた「石滝」へ向かう。一方、雪の恋人拓は、彼女の想いを突き放してしまう。彼もまたその出自を隠していた。「石滝」に足を踏み入れた滝太郎、雪と、2人を追ってきた勇美子、雪に横恋慕する者たちが向かう中、山は風雨に見舞われ洪水となる。
全てをのみ込み荒れ狂う神通川、その中で手に入れた幻の黒百合がもたらした運命は…。

原作 泉鏡花
脚本 藤本有紀
演出 杉原邦生
音楽 宮川彬良
美術 堀尾幸男
照明 北澤誠
世田谷パブリックシアター
2026. 2.4~22日

昨日、衆院選の期日前投票を済ませ、

今日は幕見で「積恋雪関扉」を見て来ました。


久しぶりの幕見、ネットで購入できるのは、

寒い冬は特に助かります。並んでいたのが懐かしい。


勘九郎の関兵衛実は大伴黒主、

吉右衛門のような大きさにシャープな身のこなし、

全体に力強さ。


七之助の小野小町姫、少しほっそりとした?

傾城墨染実は小町桜の精、

廓話の件りを見ていたら、叔父である福助の雰囲気も

感じる。


最後、安貞の片袖を手に黒主に迫るところの

気迫の七之助らしさもいい感じ。


菊五郎の良峯少将宗貞は品のあるやわらかさ

関の扉の三役を全て演じてるのか…。

兼太夫さんが熱く熱く語る。


家を出る時に降っていた雪は上がり、 

空もだいぶ明るくなっていたけれど

空気はひんやり。

銀座の町もいつもより人出は少ないか。


初日の初午祭でゆゆっくり撮れなかった地口行灯

素朴な感じで良い。






最初に薪を切った斧が関兵衛のそばに置いてある。

これはのちに櫻を切ろうとしてふりまわす

大まさかり🪓と同じ。


同じものを、使う時の都合で大きくしたり

小さくしたりするところに

歌舞伎のおもしろさがあるのだそう。


また墨染の廓話のくだりで

道中の傘の代わりに使う型もある。

(見たことないなぁ)


序ながら、この大まさかりには

天地五寸、左右三寸、深さ一寸五分の

(15.15×9.09×4.54センチ)

窓が仕掛けてあり、

墨染が下手で振りをしている時に、

この蓋(窓)をあけて鏡を見ながら、

黒主が化粧直しをすることになっている。

(あ、これは初日に見た!そうだったなぁと

青い隈を入れたのかな)


「実によく活用されている小道具である」

と戸板康二は解説に書いている。


~歌舞伎名作選第15巻より~




上 関兵衛 七代目幸四郎、小町 歌右衛門

  宗貞 宗十郎

下 黒主 七代目幸四郎 墨染 六代目菊五郎


全てが何だかファンタジー。古風な狂言。