企業におけるコンプライアンスとは。その一面を垣間見て。 | 名古屋市の相続・シニア問題に強い弁護士のブログ|愛知県

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コンプライアンスは、コーポレートガバナンスの基本原理の一つで、法律や規則といった法令を守るだけでなく、社会的規範や企業倫理を守ることも含まれます。ところが、日本語では、しばしば「法令遵守」と訳され、一般には法令を遵守してさえいればコンプライアンスは成立すると考えられています。従って、「法の抜け穴」を突いたり、過剰に法律を振りかざしたりすることも許されると少なくとも現場では理解されているケースが多々あると思われます。

 昨年、大企業に内部統制システム構築が義務付けられて以来、企業のトップがコンプライアンスを強調するようになり、大企業の子会社、孫会社を含めて「コンプライアンス」「法令遵守」の徹底のため下請取引の見直しが進められました。特に自動車業界では徹底しており、「コンプライアンスの徹底」「法令遵守の徹底」をスローガンにして、「下請代金支払遅延等防止法」(いわゆる下請法)の遵守、職業安定法違反である二重派遣、偽装請負禁止の徹底がはかられました。

 ところが、トップが言っている「『コンプライアンス』『法令遵守』の徹底」を、現場では、その真意を汲み取って徹底的に単価切り下げを図ったのです。

 下請法第3条には、親事業者に契約内容を記載した書面の交付義務が、第4条には、例えば、契約後の下請代金の一方的な減額を禁じたり、同種又は類似の内容の取引に対し通常に比べ、「著しく低い」下請代金の額を不当に定めることを禁じたりして、親事業者の遵守事項が定められています。ところが、「コンプライアンス」の徹底、「法令遵守」の徹底のために、適法な契約手続の実践として、各下請けを競わせて相見積もりを取り、『今までの歴史は関係ない。安ければいい。』と徹底してコストカットを競わせ契約前に下請代金を大幅に減額させたり、「『著しく』低い下請代金にいたらない程度の『生活していくのが困難な非常に厳しい』低い」下請代金を合法的に承諾させました。契約手続の見直しは、二次下請、三次下請、四次下請と上から下に玉突きの如く「コンプライアンス」「法令遵守」の徹底をスローガンに、適法な契約手続の実践がされ、多くの段階で競争見積もりが繰り返されたのです。

 昨年(平成19年)12月17日(日)の中日新聞朝刊社会面(26面)に、「世界一のしわ寄せ 厳冬トヨタ下請け」のタイトルのもとで、中小・零細企業の悲鳴が記事になっていました。「トヨタの四次下請工場で、作業服の社長が『灯油が高くてストーブもたけない』と苦笑した。作業員はパートと外国人研修生を含む計40人。業績が伸びず、五年前から冬のボーナスの支給を凍結している。」とのことです。その下請けの下の五次下請、六次下請の零細事務所はどんなものか容易に想像できます。

 「コンプライアンス」「法令遵守」の徹底は、その本来の理念とは異なって、寡占により莫大な利益を受ける大企業のグループの構成員(その子会社を含むグループ企業の株主、本社員とその家族)と末端の使い捨てに等しい中小・零細企業の勤労者群に区分して、日本の社会の階層化を推し進めている一面があるのです。

 この中日新聞の記事とほぼ同じ時期の平成19年12月10日に、「コンプライアンス」「法令遵守」の徹底を推進しています日本経団連二代目会長(キャノン会長)御手洗冨士夫氏の知人がキャノンとの取引(キャノンとの直取引のみでなくキャノンから受注した鹿島建設との取引を含む)で数十億の裏金があることが毎日新聞等によりスクープされました。(その裏金使途については、御手洗冨士夫氏の経団連会長選挙の資金であったとか、その他諸説が流れましたが、実態は解明されないで終わってしまいました。)



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