戦後のジャズ歌手について【女性編】

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先日の戦後ジャズ歌手の男性編に引き続き、今回はジャズ歌手の女性編を書いていきたいと思います。

まずご紹介するのは、やはり江利チエミさんを置いてほかにないでしょう。

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江利チエミさんと私の縁は前回、ちょっぴり書かせていただきました。
まだ江利チエミさんの義母さま・久保多紀子さんがお元気だった頃、目をかけていただきまして、テレビに出演すると激励のお手紙をくださったり、とても優しくしていただきました。
その時にいただいた多くの手紙が今では形見となってしまいましたが、私の高校生時代からの青春の良き思い出です。
チエミさんは1937年、東京生まれ。
実母は浅草オペラ〜吉本の喜劇女優として活躍された谷崎歳子さんです。
チエミさんの踊って歌えて、コメディもこなせる器用さは、実は突然変異ではなく、母親譲りの遺伝だったのでした。

そんなチエミさんは戦後、笠置シヅ子のモノマネとして活動をはじめ、進駐軍キャンプやクラブで人気を集めるようになります。
そこで母は、アメリア兵に名前を呼んでもえるよう「エリーチエミ」という名を与えます。
今では伝説のようになっているエピソードですが、私が所蔵している1950年の芸人一覧表には、しっかりと「エリーチエミ」と記載されています。

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そして1952年「テネシーワルツ」でレコードデビューの際に「江利チエミ」と改名をしたのでした。
「テネシーワルツ」の大ヒットによって、たちまち少女ジャズ歌手の第一人者となり、その後はひばりさん、雪村いづみさんと共に三人娘、または実写版「サザエさん」のサザエさん役で新境地を開拓しました。
1963年には日本初のブロードウェイミュージカル「マイフェアレディ」で主役を演じ、ミュージカル女優としても大活躍。
私生活では若手俳優だった高倉健さんとの結婚と、充実した日々を送られています。
そして1982年、45歳という若さで亡くなられました。
今も愛され続けるのは、チエミさんの生前の人柄の賜物なのでしょう。

そして続いて、直近では柳澤慎一さん主演の映画「兄消える」に特別出演している雪村いづみさんを紹介しないわけにはいきません。

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雪村いづみさんもチエミさんと同級生、実父はハワイアンバンド・カルアカマアイナスでマンドリンを演奏していた朝比奈愛三氏。
やはり音楽を愛する家系にお生まれになっています。
チエミさんと同様、進駐軍キャンプの舞台で歌いったのち、1952年に日劇で本格的デビュー。「青いカナリア」「遥かなる山の呼び声」「思い出のワルツ」などのヒットを飛ばし、スターの仲間入りを果たしました。
そして、その後の活躍は周知の通りだと思います。

次にご紹介するのは、前のお二人よりも数年先輩、実力派ジャズシンガーとして通をうならせた、ナンシー梅木さんです。
ナンシーさんは1930年北海道生まれ、ビクターレコードの専属歌手として多くのレコードを発売しています。
アイドルのような存在ではありませんでしたが、なによりも日本初のアカデミー賞女優という栄光を手にしていることから、今でも伝説的な存在としてその名が語られています。
こちらはナンシー梅木さんが進駐軍のクラブに出演中の、貴重なるスナップ写真です。

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渡米後、長らく行方不明とされていましたが、新聞に訃報が掲載されていたことを覚えています。

進駐軍のキャンプやクラブで行われるのはジャズオンリーのような印象を受けますが、実は多岐に渡っており、ハワイアンも非常に愛されたジャンルでありました。

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こちらはハワイアン歌手、エセル中田さんが率いるバンドになります。
ハワイアンのみならず、子供が童謡を歌ったり、ダンス、曲芸、奇術、影絵、紙切りなどが、米兵に人気の出し物だったそうです。
ただ今回はジャズ歌手についてのブログですから、それ以外については、また別の機会に譲りたいと思います。

次にご紹介するのは、フランキー堺とシティスリッカーズの女性歌手だった川島まり子さんです。

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川島まり子さんはコロムビアレコードJL盤から「セブンティーンロンリーデイズ」をリリースしており、当時としては知られた方のひとりでした。
このプロマイドは、プロダクションが進駐軍に売り込む時に使用した台帳のアー写で、裏面には「ジャズメンクラブ」の印が押してあります。

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そして今回最後にご紹介するのは星野みよ子さんです。

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星野みよ子さんも昭和20年代後半からコロムビアの専属歌手になられているようで、多くのレコードを録音している経歴があります。
なかなか魅力的な歌唱をする方で、一部で人気が高い隠れたる名歌手とでもいいたい方です。

他にも多くの女性ジャズ歌手の方々がいらっしゃいますが、網羅すると延々と長くなってしまいますので、今回はこの辺にしておきたいと思います。