フォールアウト4をやっていて少々ショックな事があり、他に書く場所も無いのでここに記す。



文明は尊い。
核戦争後の荒廃した世界。
最早秩序も失われ、無法無頼の徒が跋扈する末法の世。
だが、そんな世界にあって、僅かに生き残った人々の住まう居留地には文明の光が灯る。
それは小さな輝きだが、確かな希望である。
そうした廃墟から生まれる文明の営みに正義は宿る。
開拓し、収穫を上げ、水を汲み上げ、大地を潤し、水を汲み上げ、人々に職を行き渡らせ、水をアホほど汲み上げ、商店・医者・バー・服屋・武器屋に水を売りつけて大量のキャップを得て308口径とか山のように買いこんで、サプレッサー付きなんちゃらライフルからサプレッサーモジュールだけ取り外して後は捨てる。なんと文明的な暮らしである事か。
文明とは、金儲けの為のシステムの構築に他ならないのではないか。そして、その構築こそが文明の愉悦であろう。有り体に言えば、金生み出して増やすの楽しい。


そんな文明大好きな自分であるから、文明の香り高き事業に資金を投じるに吝かでない。
街角に突っ立っていたとある青年実業家からクレジットカード事業への投資を持ちかけられた際も、自分は大いに感銘を受けた。
持ち運びにかさばるキャップからの人類の解放。人は今後、キャップ等というわずらわしい代物に囚われることなく、クレジットカード一枚で文明の恩恵を得られるようになるのだという。
自分は検討の結果、彼の事業の先進性・有用性を認め、100キャップ(+手数料10キャップ)を都合する事とし、彼からクレジットカードと「このアフォが……」という言葉を受け取ることに成功したのだった。
以来、自分はこの文明の証したるクレジットカードを各店舗でひけらかしては「冗談だろ?」「うちはキャップオンリーだよ」「あー……いや……使えない」などの賛辞を受け続けてきた。文明の利器を理解できない労働者階級諸子に己の先進性を見せつけるのは意外と楽しいものである。おやおや、この店ではクレジットカードも使えないのかね? なんともはや……ああ、いや失敬失敬、てな感じであった。


だがしかし。
自分のこの密かな喜びを打ち砕く事態が発生し、大変困惑している。
ファーハーバーの土産物屋のおっさんにいつものようにクレジットカードを提示した所、
「あーキャップの方がいいんだが……はい100キャップ」
みたいに軽く100キャップ渡してくれやがったのだ。クレジットカードが通用してしまったのである、そして、自分はその100キャップの代わりにクレジットカードを失った……。
なんてことすんだ!クレジットカード返して!お店の人達から、ばーか(^-^)みたいな反応されるのが楽しみだったというのに!ほんとにクレジットカード使えるようにするなんて。そんな罠仕掛けるとはまったくもって卑怯である。
フォールアウト4にファーハーバーを導入する際は以上の点を気をつけられたい。


. 武と名誉を重んじるドラゴンボーンの戦士へカチンであるが、一党は今、色々あってデーモンとデビルの支配する街にいる。そこは危険な街である。
 そこには唯一安全だとされている魔法学院がある。結界が張られ、良き師が良き学び手を導いているという。でも、実際の所そうでもなかった。
 ともかく、一党はそこに逗留している。
 と、そこの校長から相談事を持ちかけられた。
 何でも、生徒の1人が学院から飛び出して行ってしまったのだという。
「あの子は皆様方の勇気ある行動に感化されたようです。自分も悪魔達など恐れぬ、悪魔達の陰謀を砕く力とならん、と飛び出して行ってしまいました」
 英雄志願の少年といったところか。
「この近くに悪魔が屯しているという東屋があります。彼は、そこの悪魔達の企みを探ってくる、と言い残して行きました。どうか、彼を連れ戻してくれませんか」
 なんで?
「よし、では一緒に参ろうではないか」
 高貴なるエラドリンがいつものように持ちかける。
「いえ、私ではあそこにいる悪魔達にはとても歯が立ちませぬ。皆様方にお願いするほかないのです」
「いや、あんたで歯が立たないものを俺達でどうこうできるわけないじゃん!」
 前回のセッションにて、校長先生は1人でデーモンの巣に特攻し生き残っているのだ。吾等は校長先生の通った後(屍が累々)を進んだりして大分楽だった。
 そこで校長先生、秘密を打ち明けるように、
「実は私のデータが今のマスターの手元に無いので、今の私は一撃で死ぬ雑魚扱いなのです」
 勝手な設定すんな。
「という訳で一緒に行くわけには参りません」
「大丈夫! この前のセッションでちらっと見たけど、そのときの校長先生のデータ、レベル22の○○○○のところを参照してたよ!」
 高貴なるエラドリンが大変なことを言い出すのだった。それネタばれではないのか。
「じゃあ、レベル22○○○○の雑魚で」
 どうあっても校長先生は一撃で死ぬという。そこは譲れないところであるようだった。
 今更ながら、これ書いてよかったんだろうかという思いが尽きない。でもきっと伏字にしているから大丈夫であろう。


 仕方ないのでその生徒を助けにいってやることとする。
「報酬は?」
 敬虔なるグエドベが親切に尋ねてあげた。無償で吾等善なる一党に働いてもらっては校長先生も気が引けるであろう、それが元で心労のためやせ衰え死に至るかもしれぬ。無私公平で知らるる善なる者としてそれは避けねば、というグエドベの心憎い配慮である。
 もちろん、その意は校長先生に通ず。グエドベの深い配慮に声を震わせながら、
「+2フレイミング・モールの魔力をロングソードに移し替えてあげたじゃないか。それで」
 前回のセッションで一党は+2フレイミング・モールを手に入れたのであるが、それを高貴なるエラドリンが使えるようにロングソードへ移し替えようということになったのである。それができるのは校長先生だけだったのだ。レベルの関係で。
 校長先生は土蔵の奥から小汚いロングソードを引っ張り出し、それに+2フレイミング・モールの魔力を移し替えた。こうしてできあがったのがかの名刀、フレイミング小汚いロングソード+2である。
「で、魔力の無くなったモールはどうする?」
 グエドベの問いに高貴なるエラドリンは言ったものだ。
「僧侶であるグエドベが持っとけば? メイスよりはるかに悪っぽいし」
 高貴なるエラドリンにとってセイハニーンはどのような神に見えているのか、議論の余地があろう。


 更に一党は校長先生に尋ねる。
「ところでその生徒の名は? 例のあいつ?」
「例のあいつじゃない奴」
 誰だ。
「じゃあ、ヘカチンの弟ってことでそいつの名前ポ○チンにしよう! ポ○チン! ポ○チン!」
 一党がそう声高に言うので、校長先生厳かに、
「じゃあ、それでいいよ。という訳でポ○チンが向かった東屋は……」
 いい年した大人がポ○チンポ○チン大合唱するの図。


 そんな名前ではないということで双方の同意を得た。
 こうして話が纏まったので、一党は生徒が向かったという東屋へ急ぐ。
 ここで、止せばいいのに吾は余計な提案をするのだった。
「今回は、今日来ていない人のキャラクターとか使わないで、自分のキャラ1人だけを使って戦ってみない?」
 自キャラ以外のキャラを別に受け持つと、どのパワー・どの能力を使えばいいか考えこむことが多く、プレイヤーの負担が大きいのである。自キャラだけに集中してプレイした方が内容の濃いものになるであろう。
 というのは建前であって、実際の所はレベルアップした吾の無双っぷりを見せたかったのである。パーティ人数が少なければそれだけ目立つ。吾がたった1人で大勢の敵をなぎ倒すところを見て見て! てなものだ。
 ここはヘカチンさん1人で超カッコいいところを見せるチャンスであろう。
『出たー! さすがヘカチンさんだ!』
『カッコイイ!』
『素敵! 抱いて!』
 はっはっはありがとうありがとう市民諸君、となることを期待しての提案であった。
 そういったわけで、今回戦闘に参加するのは高貴なるエラドリンと敬虔なるグエドベ、そしてヘカチンであった。
 ペンテルとスプマンテは一党がピンチになったら都合よく即登場する予定である。


 さて、件の東屋へと辿り着く善なる一党。
 と、東屋から苦痛の叫びが漏れてくるではないか。加えて、下卑た笑い声も。
 よくよく見れば東屋内に幾つもの人影が見える。ローブをすっぽり被った者が2名中央に立ち、その周辺をヒャッハーな連中が取り囲んでいる。そのローブの男達のすぐ足もとには倒れた人影あった。その小柄な姿は、学院を抜け出した少年のそれに相違あるまい。少年は彼等に酷くいたぶられているようだ。
 そのローブの男の1人が吾等の姿に気付く。そして、僅かに覗く口元をにやりと歪めると、手にしたナイフを何のためらいもなく少年に深々と突き刺した。
 治療のロールをしてみた結果、3ラウンド以内に少年の容体を安定させなければ死ぬと判明。
 ぐずぐずしてはいられぬ。すぐにこの悪党どもを討ち倒して少年を救わねばならぬ。
「じゃあ、フリーアクションで話しかけよう。貴様等は何者だ」
 一刻の猶予を争う話し合いが始まる。
 高貴なるエラドリンの問いかけにローブの男がはらりと顔を見せる。それはどう見ても悪魔の血を引く者のそれであった。カンビオンという種族である。
 カンビオンは嘲笑う。
「くっくっく……今の内に惰眠をむさぼるがいい。間もなく、この地上に地獄が誕生するのだ! 九層地獄におわす大悪魔にして大貴族たるかのお方の目覚めは近い!」
「悪魔に傅く者は来世で報いを受けるぞ」
「貴様らこそ、この現世でレビストゥス様に帰依するがいい」
「よし、わかった。帰依してやるからまず貴様等は来世へ行け」
 話し合いになっているようでなってなかった。
「お互い、言いたいこと言ってるだけだよね? 自分の持ってるボールを投げつけあってるだけだよね?」
 敬虔なるグエドベが、会話のキャッチボール不成立を認定した。
 こうして実に生産的な話し合いが終わって、生産的な殺し合いへと移行す。


 早速吾の秘技『来たな馬鹿ども』が炸裂す。近くの敵達を自分の周囲に引き寄せて、一気に切り払うのだ。カンビオン以外の連中は下っ端だったらしく、一撃である。さらにマイナーアクションで火を吹いて焼く。
 見て見て! 僕ちんヘカチン強いでしょ?
「これヘカチン1人いればいいんじゃん?」
 高貴なるエラドリンと敬虔なるグエドベのフィギュアがマップ上からマップ外へと遠ざかっていくのであった。
「ここはヘカチンに任せた」
 さようなら。


 というようなことはなかったのである。なぜなら、吾等は絆で結ばれた一党であるからだ。まさか仲間を置いて帰っちゃうとかあるわけがない。あったとしても3回に2回くらいだ。今回は3回に1回の方だったのでよかったよかった。
 さて、カンビオン2名は雑魚ではなく、というより精鋭であってHPが高いのであった。火力が高いのであった。それに比して吾は火力が低いのであった。高貴なるエラドリンの火力の高さは相変わらずだが、スプマンテ&ペンテルがいない分、やはりいつもより格段にパーティの火力は下がっているのであった。ダメージが全然いかないのであった。
 結果、ものすごーく戦闘終了まで時間がかかった。
 3ラウンド以内に少年を助けないといけなかったので。グエドベがヒーリングワードで少年を回復させたのだが、その少年を戦闘に巻き込まない所へ移動させるのに注意しなければならなかったり、それにも時間がかかった。5人で戦って3ラウンド以内に敵を全滅させていればもっと早く終わってたのに。やっぱり1つのチームとして機能しているパーティを、わざわざ人数減らして戦ってみるとか、誰も得しないのであった。
 で、この時点で改めてペンテルとスプマンテを加えた状態で先へ進めばいい物を、いやいやまだいけるっしょ? などと呑気なことをいう奴(なんかドラゴンボーンっぽかったよ)がいたため、そのまま進んでしまう。
 強く言いたいが、そんな主張をした責任者は糾弾されるべきである。パーティの負担、特に吾の被攻撃回数が増すことについて、是非責任を取っていただきたい。
 そして、世の中とはよくできたもので、この後その責任者は報いをしっかり受けるのであったが、それは後の話として、さて、助けた少年である。
 少年はこの東屋の地下にて悪魔や悪魔の崇拝者達が恐ろしい儀式を行っていることを告げるではないか。
 なんでも、九層地獄の階層の一つを統べるアーチデビル・レビストゥスの配下であり大貴族であるとあるデビルを呼び出そうとしているらしい。
 これは見過ごせぬ。
 吾等は悪魔達の企みを挫くべく、地下へと歩みを進めた。
 すると、地下は尋常ならざる冷気に包まれていた。石畳に霜が降り、氷のひび割れる音が地下室に木霊す。
 その凍てつく部屋で待ちかまえたるはフロストハウンド達の群れにティーフリングの欺き手2人であった。
 早速戦闘開始である。
 吾はまた呼び寄せて斬りはらったが、今度はそう簡単には倒せない。雑魚ではないのだから当然だ。敵の攻撃回数はまるまる残ったままなわけで、しかもスプマンテがいない分、攻撃が吾に集中する。
 そんなもん、当たらなければどうということは無いのである。
 ガンガン当たるのであった。敵のサイの目が酷過ぎる。ダメージロールも。こっちはアクションポイントに一日毎パワーまで使っているのにダメージロール1ばっかとか。死にそう。助けて。でも、人数が足りないのでエラドリンもグエドベも自分のことで手いっぱいなのであった。
 ……あれ? これ死ぬんじゃね?
 というところで時間が無くなってしまったので、今度はペンテル&スプマンテが何故か突然現れた状態で再開することを心に誓って次回に続く。

これまでのあらすじ

 あとはレバーさんを押し倒すだけ。さすれば、めくるめく秘密の扉は開かれん。

 というわけで恒例の、レバーさん(NPC)を吾等善なる一党に同道させようという算段が始まるのだった。
 おそらく、レバーさんはホムンクルスか何かの人造人間であろうから、きっとそれなりに強いのではないか。
 でも拒否されるのだった。
 高貴なるエラドリンのこれまた恒例、友達じゃないか! 攻撃も通じぬ。仕方が無いので、怜悧なるペンテルがレバーさんにマジックミサイルを撃ち込むことで吾等は気を鎮めるのだった。


 扉の先の街道は暗黒であった。日の光の届かぬトンネルである。
 高貴なるエラドリンがサンブレードを掲げて進む。とてもまばゆい。
 と、受動知覚で道の先に人型の物体が倒れていることに気付いた。人型の物体とは何であろうか。大変に怪しいのである。物体、という表現から生物ではないのではないか。とか何とか、吾等はその正体をあれこれ検討す。すごく長い時間。
 これは、ああでもないこうでもないと考えるだけ考えて結局何も行動しないまま時間を浪費する、という実生活でよくある風景をあえてロールプレイしたものである。ただの戦闘一辺倒ではない、プレイに深みを与える行為といえよう。よし、正当化終わり。
 もっとよく見るとかしないの?
 などと、どこか天の上あたりからもっともな声がしてくる。
 いい考えだ。よし、よく見てみよう!
 というわけで、ようやく能動的に知覚のチェックをすればいいと気付いた吾等。その正体を詳らかにす。
 それらはドワーフとオークであった、
「ほう、地を這うウジ虫どもですか?」
 高貴なるエラドリンが正体を知って言う。酷いエラドリンだなー。
「間違えた。地中のウジ虫どもか」
 さすが。エラドリンはドワーフやオークに差別意識を持っているというロールプレイだね!
 と吾等が高貴なるエラドリンを称賛するも、彼は謙虚に首を振る。
「いえいえ、ドワーフは好きですよ」
 それは自分の盾になってくれるドワーフなら好きということであって、
「死んだドワーフは役に立たないよね?」
 敬虔なるグエドベがエラドリンの深奥を読み取って問うた。だが、高貴なるエラドリンは愛に満ちた男である。死んだドワーフであろうとその場にただ放り出すような真似はしない。
「死んでいようと好きです。身包みを剥げば。よし、金歯だ!」
 ドワーフの金歯は4人分あるのだった。
 オークの乱杭歯は20人分もあろうか。
 ドワーフ達はここでオーク達と乱戦の後、果てたらしい。
 ドワーフの1人は、隠し扉らしき扉に挟まった形で死んでいる。先へと続くトンネルの、右側の壁に入り込むような形だ。
 もしやすると、このドワーフ達の中にフリンカとかいう者が含まれているかもしれぬ。ドワーフの老女が言っていた、皆を助けるために街道に残ったという『日陰に繋がれた者達』。
「名前わかんない? 免許証とか生徒手帳とか」
 無いのであった。
「首持って帰ればわかるかなー?」
 敬虔なるグエドベがドラスティックな解決法を提示するのだった。
 それはともかく隠し扉である。この奥にもオークがいるに違いない。
「つまり、ここで待っていれば餓死する」
 策士エラドリンがその知略を発揮、必勝の策を吾等に授けんとす。だが、
「俺達がな」
 敬虔なるグエドベはエラドリンの策の陥穽を看破し、吾等を危険から救うのであった。
 このように、吾等善なる一党には智に優れた軍師が綺羅星のごとく集っているのだ。


 死んだドワーフ達はそれぞれ顔に入れ墨を入れているようであった。それも『日陰に繋がれた者達』の入れ墨である。歴史や宗教のチェックで、それぞれその謂れ等を思い出す知略あふるる吾等。
 この入れ墨は従属を象徴するもので、大変に不名誉な入れ墨であるという。
 また、これは拷問と牢獄の神トログの信者にとっては普通のものであるとも思い出す。
 あえて不名誉な入れ墨を入れてまで、このドワーフ達はなぜトログに仕えているのか。
 疑問を抱える吾等を嘲笑うように、大地が揺れる。不吉な前兆であった。


 などと思わせぶりな前振りはどうでもいいのであった。
 さっさと先へ進む。隠し扉の奥の部屋へと向かう吾等。そこには過たず、オーク達がいるのであった。雑魚が3人である。吾等はオーク達の虚を突いて威圧し、これを制圧す。
 こうして降伏したオーク達は命乞いをしてきた。
「何でも喋るから助けてくれ」
 というので、
「この先に何がある?」
「お前らはここに残って何をやってたんだ?」
「お前らの仲間のことを話してもらおうか」
「お前らはどこからきてどこへ行くの?」
「宇宙ってどうしてできたの?」
「よし、わかった。まずはお前ら、誰か1人で話してくれ」
 オークはもっともなことを言った。
 とりあえず、オークの答えを纏めると以下のようであった。
 俺達はここで見張りをしていた。
 この奥がどうなっているかは、俺達はわからない。
 バビューン様達が奥を見に行った。バビューン様とはヒルクザーク様に仕える№3だ。
 バビューン様に付き従っているのはオグル鬼に6~7人のオーク護衛兵、それに雑魚達がたくさんだ。
「よし、先回りして待ち伏せしよう」
 高貴なるエラドリンは知略溢れる男である。伏兵によってバビューン隊殲滅を試みんとす。
「一本道でどうやって先回りするの?」
 敬虔なるグエドベがその策の綻びを指摘し、吾等を危機から救うのであった。
「喋ったんだから、逃がしてくれ」
 オーク達がそう懇願してくるので、吾等は快く、
「なんで?」
 命だけは助けた所存だ。縄を打って引き摺っていく。
「殺しはしない。が、自分で死ぬのは止めぬ。どうしてもというなら自害しろ」
 高貴なるエラドリンは心優しき男でもある。上のような譲歩案を示した。それに対して、どういうわけかオーク達は難色を示すのだ。我儘な連中である。何か宗教的な理由で自害が認められていないのかもしれぬ。
「じゃあとりあえず、お前ら同士で隣の奴を殺せばいいんじゃない?」
 自害できぬというなら……と、敬虔なるグエドベが一神教的解決法を示すのであった。
「来世はいい奴になれよ」
 高貴なるエラドリンは心優しき男なのだ。


 結局、オーク達を虜囚として同道させる吾等。いざとなったら罠探知機にでもなっていただく所存だ。
 更に奥へと進む。
 螺旋階段のある部屋に出た。下へと向かっている。
 吾等は階段を下った。
 と、階段の壁面に絵が描かれているではないか。絵物語となっているようだ。それは巨人とドワーフの戦いの物語のようであった。物語は4枚の壁画で成り立っている。
 1枚目はドワーフがスピアで巨人の目を取り出している場面。
 2枚目は手斧で巨人の手を切り取っている場面。
 3枚目は巨人のあばら骨を取り出している場面。
 4枚目は巨人の胸から剣で心臓を取り出している場面。
 であった。
 2枚目の巨人の手を切り取っている絵に、吾等は思うところがある。
 これは吾等が今手にしている筋力修正に+20の手袋と同じ物ではないか。つまり、この絵の巨人に由来する、同じようなマジックアイテム(巨人の目とかあばら骨とか)が他にもあるのではないか、と。
 そのように思い馳せつつも、階段を下り終わる。
 そこにもオークとドワーフ達の死骸が転がっていた。
 で、そこからも何か色々細かい道のりがあったようなのだが、記録してないので忘れた。
 場面は一気に飛んでバビューン様の目の前である。そこは巨大な鍾乳洞であった。その中央に、4つの魔法陣に囲まれた巨大な縦穴がある。オークのシャーマンであるバビューン様はその縦穴にかけられた封印を解こうとしているようであった。オグル鬼が縦穴の上に張られた封印っぽい膜の上でどんがどんがジャンプしている。マッピーみたい。
「くくく、ここはトログとモラディンの神殿であろう。エロい宝がザックザクあるに違いない」
 バビューン様は、かか、と笑うのだ。
 オグルが縦穴の封印を(物理的に)破ろうとするのに合わせて大地もまた揺れる。地震の起きる感覚が短くなっているようだ。
「見よ、わしらを恐れて大地もいなないておるわ!」
 バビューン様はご機嫌である。
「冥土の土産に教えてやろう。ここの封印はこの街道を作った石牙の巨人を封じたものよ。さて、貴様等は知り過ぎたようだ。死ねぇっ!」
 自分勝手な言動の末、バビューン様一行は吾等に襲いかかってきたではないか。
 オークの護衛兵やらがわらわらと寄ってきての殴り合い。残念ながら、ここの記録もあまりしてないのでカットします。
 ただ僅かにメモ書きしてあった物を記す。
 止めを刺しにハゲタカがやってきた。
「ハゲタカじゃないよ。高貴なハゲタカだよ」


 こうしてバビューン様ご一行を撃退した吾等。鍾乳洞の先に、まら別の部屋を発見す。
 そこはトログへの祈りを捧げる祭室であり、そこには生き残った「日陰に繋がれた者達」が、封印を維持するために詠唱を続けているようであった。
 吾等はその部屋に今まさに押し入ろうとするオーク達から彼らを救出する。
「4つの魔法陣に巨人から切り出した4つの肉体を備えることで巨人を封ずることができるのです」
 生き残った「日陰に繋がれた者達」から聞かされた話は以下のようなものであった。
 昔、ドワーフの氏族内で石牙巨人の手を持ってっちゃった奴がいて、それで内紛が起きた。巨人の手が盗まれたことで封印は弱体化。ドワーフの神モラディンの力だけでは封印が維持できない。そのため、彼等は牢獄の神トログに帰依しその力を借りて巨人の封印を維持してきた。
 と、そのような話であったと思う。もっと色々細かいことも話していたと思うが、もう覚えていないので各自で思い出してください。
 ともかく、この「日陰に繋がれた者達」の言うことが正しいなら、他にもある巨人のパーツをすべて回収し、先程の魔法陣に供えなければならぬ。そこらへんの儀式は「日陰に繋がれた者達」がやってくれるようであるから、吾等はただ巨人のパーツを奪い返すことに専念すればよい。
 オーク達が魔法陣に残っていた他のパーツを持っていってしまったため、最早封印は解けかけている。石牙巨人が目覚めるのも時間の問題といえよう。目覚めた巨人は恐るべき災厄をこの地にもたらすであろうこと、想像に難くない。
 吾等はオーク達から巨人のパーツを奪い返すべく、探索を続けるのだった。


 吾等善なる一党は石牙街道を抜ける。入ってきたのと反対側にあたる出口だ。そこにはドワーフ達の砦のある、開けた地があった。川も流れている。ついでに砦の前にはオーク達がいっぱいいるのだった。
 オークのトゥトゥハク様とペットの花子(ダイアベア)による奇襲である。
 面倒くさいから川に落としてやったら、死んだ。
 大勝利。
「……あいつが巨人のパーツ持ってたかもしれないのに」
 知略溢れる敬虔なるグエドベが、全ての片がついてからぽつりと言った。
 トゥトゥハク様は川底に消えて最早見えぬ。
 どうやら吾等は石牙巨人を封ずる手立てを失ったようであった。
 めでたしめでたし。
 というところで次回に続いた。