『Daisy Jones and the Six』② | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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もう年の瀬も、いつのまにか瀬戸際で。

 

おかげさまで先週には、

こちらも無事校了になったという

御案内をいただきました。

 

 

一応ですが、校了というのは

校正が終了し、あとはもう

 

印刷・製本を待つだけの

状態になりました、ということです。

 

昔は印刷用フィルムの段階で

修正することを

青校なんていってたんですが

 

今では白校というらしい。

 

自分が年を取ったということなのか

言葉は生きているとか

なんか作家っぽい感想を抱くべきなのか。

 

 

まあ、というわけで、

よほどの事故がないかぎり、まず1月に

『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスが

マジで最高だった頃』が出てきます。

 

オビにはこんなふうに書いてあります。

 

「七〇年代LA、ロックのド真ん中、

 私たちはどうしようもなくクソで

 誰より輝いていた。

 

 ステージのきらめきに魅せられた

 バンドマンたちの青春を描く、傑作小説」

 

訳書の方の表紙がこちら。

 

中身ですが、目次がこんな感じです。

 

著者覚え書き

グルーピーのデイジー・ジョーンズ:1965-1972

ザ・シックスの黎明期:1966-1972

イットガール:1972-1974

デビュー:1973-1975

『ファースト』:1974-1975

『セヴンエイトナイン』:1975-1976

ザ・ナンバーズ・ツアー:1976-1977

『オーロラ』:1977-1978

オーロラ・ワールド・ツアー:1978-1979

シカゴスタジアム:1979/7/12

あの頃と今と:1979-現在

最後に一つだけ:2012/11/5

 

オーロラ・リリクス

謝辞

 

ビリーとグラハムのダン兄弟を中心に

フィラデルフィアで結成された

ザ・シックスというバンドは

 

ロスの〈ランナーレコード〉との

契約を獲得し、

 

セルフクレジットの

『ザ・シックス』というデビュー盤、

 

セカンドアルバムである

『セヴンエイトナイン』

 

そしてデイジー・ジョーンズを

ゲストヴォーカルとして迎え、

 

プラチナのさらに上の

ダイアモンドアルバムを達成した

『オーロラ』という

 

計三枚のアルバムを残し

1979年の7月、

シカゴスタジアムでの公演を最後に

活動を一切停止してしまいます。

 

 

一方のデイジー・ジョーンズというのは

グルーピー華やかなりし時代のロスで

 

画家の父とフランス人モデルの

母との間に生まれたお嬢様で、

 

ディスコ系シンガーの草分けでもある

シモーヌ・ジャクソンとの出会いを経て

 

自らも音楽の業界に

首を突っ込むようになり、

 

やはり同じ〈ランナーレコード〉と

契約を交わしています。

 

目次にある『ファースト』というのは

だから彼女のデビューアルバムで、

 

シフォンズの「ワン・ファイン・デイ」や

エルヴィスの「ウェイ・ダウン」の

カヴァーが収録されている模様。

 

ほどなくザ・シックスのセカンド

『セヴンエイトナイン』収録の

「ハニカム」という曲に

 

デイジーがゲストヴォーカルとして

迎えられることになり、

両者の運命が大きく交錯していきます。

 

 

――と、まあこれが、

 

小説作品の説明なわけですから、

ここを御覧の皆様には

 

いかにも僕がやりそう、くらいには

思っていただけるかなとも思います。

 

 

何がすごいかって、こういうのが全部

フィクションだってことですかね。

 

そもそもは作者の頭の中にしか

存在しなかった代物なわけですよ。

 

特に『オーロラ』という

モンスターアルバムに関しては、

 

著者リードはかなりの紙幅を費やして、

各トラックの成立から、

レコーディングの様子のみならず

 

トラックダウンでの音の変わり方や

ジャケットの撮影風景まで

緻密にかつ執拗に再現しています。

 

そればかりか、

アルバム一枚分の歌詞を

書き起こして収録するという

念の入れよう。

 

 

でもたぶん、僕もそうなんですけれど、

どういう形にせよ、多少なりとも

 

音楽の世界に足を突っ込んでから

文章の方にやってきた人間ってのは

 

どこかではこういうことを

やってみたいと

常々考えているのではないかと思います。

 

自分の手で、自分だけのアルバムを

虚構でもいいから作り上げてみる。

 

 

これがでも、なかなか

上手くいかないんですよねえ。

 

 

やや照れ臭くはありますが、

でも確かに、

若い頃に出会ったアルバムたちは

 

“物語”でもあったんですよ。

 

佐野さんの『サムデイ』に

大瀧さんの『ロング・バケーション』

 

『ラバーソウル』に『ペット・サウンズ』

 

シンプル・マインズの

『ワンス・アポン・ア・タイム』なんて

叙事詩みたいに聴こえていた。

 

いや、これは少し大袈裟か。

 

 

まあ、そういうわけで僕自身、

本書ととことんつきあって

 

たまらなくアルバム『オーロラ』を

通しで聴きたくなってしまった次第。

 

術中に嵌まるとはこういうことかと。

 

まあ、そんな本です。

お目に留れば幸甚です。

 

 

その次の『ミッドナイト・ライブラリー』は

校了までもう少し。こちらは年明けすぐの予定。

 

これですね。

 

 

また、今度の大河が

鎌倉時代を扱っている関係で、

過去のいくつかの作品に

多少の動きが出ています。

 

 

まず『黄蝶舞う』という本が

一部限定で復刊の扱いだったものが

随所で買えるようになっています。

 

大姫、頼朝、頼家、実朝、公暁という

鎌倉三代にまつわる人々の

それぞれの死を描き出そうという

 

まさにコンセプトアルバムみたいな

着想で取り掛かった一冊です。

 

 

それから生涯の代表作だ、と

刊行時から豪語している

 

タイムスリップ浅倉版平家物語

『君の名残を』も

装いを新たに復活する予定です。

 

こちらについてはまた機会を改めて。

 

 

たぶん今年はここもこれで

最後の更新になるかと思います。

 

コロナが完全に収束するということには

いずれならないのかもしれませんけれど、

 

皆様なお十分御自衛のうえ

よい御年をお迎えくださいますよう。

 

改めて医療従事者の皆様にも

謹んで謝意を表します。

 

では来たるべき一年も

またどうぞご贔屓に。