『くたばれインターネット』① | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

まさにネット上でこういうタイトルの
本の宣伝をしてしまうのは

コンプライアンス的には
はたしていかがなものなのかと

多少は自分でもそんなふうに
思わないでもないのだけれど、


でも、逆に言えば本書が
暴き出そうとしているのは
まさしくこういった
事象だったりもするのである。



という訳で、半年ぶりの新刊が
今月末いよいよ発売になります。

やっぱり訳書です。創作の方はもう少し。


端的にいうとこちら、
爆弾みたいな本です。

お楽しみに。





ま、でもこれだけでは
何がなんだかわからないので

まずは例によって
アマゾンなどですでに読める
版元さんのオフィシャルの
宣伝文のコピペから。


ツイッター時代のヴォネガット──『ザ・タイムス』

文化的な診断による怒りのコメディ!──『ガーディアン』

本を読む人種こそはこのネット社会が
生み出した地獄絵図に
抗う術を手にしている唯一の存在だぞ。
本を読む人種だけがネットに対しても
多少なりとも興味深い
反論を試みることができるのだ。──本書より


ビヨンセもレディー・ガガも
マーク・ザッカーバーグも
スティーヴ・ジョブスもだいきらい!
21世紀にもっともやってはいけない
唯一の大罪を犯してしまったアラフォー女子一名、
ツイッターで自衛し、ツイッターで攻撃を仕掛けるが……

インターネットという地獄絵のなかで
我々一般庶民はいったい何をさせられているのか。
アメリカのウェルベック、現代のヴォネガットなどと評され、
現代アメリカ文学において唯一読むに値するとまで言われた
ネット時代を痛快なまでに風刺する問題作。


自費出版からスタートして、
『ニューヨーク・タイムス』や『ガーディアン』などで賞賛され、
いまのところ12か国で刊行されている
異形の国際的ベストセラー、ついに本邦上陸!


こういった本でございます。

おかげさまでもうすでに

「ウェルベックと
 ヴォネガット引き合いに出しといて
 それでこのタイトルって
 いったいどこから突っ込めばいいんだよ」

といったようなリアクションも
随所で見かけさせて戴いております。

いやもう、どこからでも
突っ込んでいただいて
かまわないんじゃないかと思います。

まあそれでも、基本この全編を貫く
斜にかまえたような物の見方には
確かにヴォネガットに通じるものがあるし

それから最後の最後でいきなり
XXになってしまうところなんかは

ウェルベックっぽいと言えば
言えなくもないはずだと思います。


それでもやはりたぶん、
いちいちあちこちで
突っ込みながら読むのが

結局はこの本の一番正しい
読み方なのかも知れません。

正直訳しながらも僕自身、
突っ込みまくりでしたし。


たとえばどんな具合かといいますと、
まず扉に自分で
“役に立つ小説(=USEFUL NOVEL)”とか
書いてあったりします。

それから本編が開幕してすぐ
まだヒロインが一言も
発していないような段階から、

いきなりこんなテキストが出てきます。

「ほとんどすべての場合映画は原作より面白い。
 小説というものは多くの場合かなりひどい。
 この本もそうだ。
 あなたが今読んでいるこれも
 かなりひどい小説である」

ええと、これがだから
いわゆる地の文なのである。

単なる自虐ネタなのか、それとも
脱構築にでも挑んでいるのか。

ものすごく気取った言い方をすれば
いわゆる“第四の壁”を
破ろうと試みていると言えなくもない。

最初の映画の『エヴァ』で庵野監督が
やろうとしたみたいなことですね。



とにもかくにもこのあともだから
延々とまさしく上のコピーの通り、

ビヨンセやレディー・ガガや
ジョージ・ブッシュ親子や
ビル・クリントンや

ザッカーバーグやジョブスや

ギンズバーグやヘミングウェイや
アイン・ランドやハインラインや

ウォルト・ディズニーや
トマス・ジェファーソンや

さらには〈ニューヨークタイムズ〉やら
〈マーベルエンタテインメント〉まで

とにかく本筋には
ほとんど関わってこない固有名詞群が

次から次へと登場しては、
その都度メッタメタに
斬り刻まれていくのである。


とはいえちゃんと、
アラフォー女子一名と
上の宣伝文で表記されている

ヒロインの、いわば炎上を巡る
本筋の方もちゃんと進行していく。

不思議な本である。


たぶんこの人は本気で、
ネット以降の小説というか、

書籍という文化の在り方を
真剣に考え抜いてしまった末、

こんな境地にたどりついて
しまったのではあるまいかと、

個人的にはそんなふうにも
考えていなくもない。

ま、思い込みかも知れないのだけれど。



ーーこの項、まだ続きます。

でも今日のところはこの辺で
続きは次回の講釈で。


あ、だけどシェリル・サンドバーグの
『リーンイン』を読んで
本当に勇気をもらえましたと
いった感じの方には、

全力でおすすめしないでおきます。

たぶんかなり不快になります。

だから、そういうノリなんです。

ま、タイトルでわかるか。

ちなみにここまでちゃんと書くの
すっかり忘れていましたが

本書は原題を
「I HATE THE INTERNET」といいます。



それから最後になりましたが、
こちらの方も引き続き是非
どうぞよろしくお願いいたします。


何が嬉しいって、
EBTGのファンの方に
十分楽しく読んで
いただけているらしいことである。

トレイシーらしい文章に
そこそこできたのかなあと、
胸をなで下ろしている毎日です。