真田丸『犬伏』 | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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いやあ、楽しませて戴きました。

もっともさすがに
正座まではしなかったけど。



さて、もちろん今回の見せ場は、
草刈・堺・大泉の
三人の演技と台詞回しだった訳ですが、


序盤で何度も繰り返されていた
真田家の軍議が
今回は明らかに赴きを変えている。

この匙加減がやはり、
なんというか、
上手いよなあ、と
思わざるを得ませんでした


この場面はまさしく
歴史街道最新号の
草刈さんのインタビューの通りで、


明らかにここで
描き出そうとされているのは
ある種の世代交代です。

明日発売の同記事の掲載誌は、
一応もう一度書影を
出させていただいておきますと、
こちらになります。


歴史街道 2016年 10 月号

¥680
Amazon.co.jp

基本本記事、同誌の宣伝の意図も
もちろん多少はございますので、
この点はどうぞ御了承ください。


さて、話を「犬伏」の
軍議の場面に戻しますが、

まずは主役である信繁に
まさに名台詞といっていいだろう
あの一言で一喝され、


そして何度も繰り返されていた
神頼み的な籤引きを
今度は信幸の方に諫められ、


最後には彼の出した
起死回生を狙うというよりは、

むしろある種「石橋を叩く」的な、
ほとんど苦し紛れに近い選択に、


良き策じゃと
呟かざるを得なくなる。


これは、ここまでの描写で、
かつてはぴたりぴたりと
はまっていたはずの

昌幸自身の趨勢に対する読みが
次第に外れてきて
しまっているという事実と


そしてそのことへの
彼自身の苛立ちが
きちんと提示されているが故に、


成立する一言だと
いっていいかと思われます。

さらには今回のラスト間際の
三人の雑談のシークエンスで、


信幸が父親に準えた韓信を、
昌幸自身がばかものと
一刀両断にしてしまうところには、


なんともいえない
寂寞感を感じさせられました。

自嘲ではないはずなのに、
そういう感じがにじみ出ている。


この案配もまた、
随所でコメディーのタッチに
完全に背を向けてしまうことを


決してしてこなかった
三谷脚本だからこそ、

成立している台詞なの
かもしれないなあ、と


まあつらつらと
そんなことを考えながら
見終わった次第であります。



それにしても、
とりわけ秀吉の死後の、
三成の描写に関しては、

いや、三谷さん
本当容赦ないよなあと
思いながら
眺めてこそいたのですけれど、


いや、あれ全部ないと、
あの場面で三成泣けないわ、と
納得させられたことも本当でした。



まあその辺りの背景もまた、
今回の歴史街道さんの特集は、

山本・片岡両氏のインタビューが
新たに採られていることからも
すでに明らかな通り、


いわば石田・大谷側の視点に
紙幅も力も
かなり割いていらっしゃっていて、


楽しく読ませていただいて
いることはもちろん、

いや、この紙面の流れの中で、
亡霊とはいえ、自分の描いた、


三成やら吉継やらの姿を
発表させていただけるのは


本当に大変幸甚なことだと
そういう思いを
新たにしておるところです。

そういう訳で改めて
拙作「関ヶ原の丑三ツ」後編掲載の


同誌の内容を
また真田丸にかこつけつつ、
軽く御紹介させていただきました。


お目に留まりましたら
どうぞよろしくお願いいたします。


最後にこちらは余談ながら
書評家の大矢博子さんが


文春さんはWEB本の話の連載の
タイム・スリップ小説の特集で


拙著『君の名残を』にも軽く
触れて下さっていらっしゃいます。

記事のタイトルは、
「時をかける症状」だそうで。


まあ、タイム・スリップといえば、
筒井さんのあの作品ですから
これはもちろん納得です。


こんな場所からですが、大矢様、
またどうもありがとうございました。

なお、同記事のURLは
こちらになりますので念のため。


http://hon.bunshun.jp/articles/-/5155

では今日はこんなところで。