ブログラジオ ♯89 New Song | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ハワード・ジョーンズという方である。

Human’s Lib/Howard Jones

¥2,305
Amazon.co.jp

デビュー作であり
代表作でもあるこのアルバム、
邦題を『かくれんぼ』といった。


こちらはだから、収録曲の
Hide and Seekなるトラックから
採られている模様である。


原題の方は、人の解放とでも
いった意味になるかと思う。

もっともこの作品も、アルバム全体を
ちゃんと通して聴いた訳ではないので、
正直きちんとはわからない。


今回取り上げたNew Songにも
そんなニュアンスは確かにあるし、


あるいは全体を聴くと、
そういったテーマが

もう少しはっきり、
見え隠れしているのかもしれないけれど、
さすがに断言は憚られる。



実際このハワード・ジョーンズも、
二曲か三曲くらいしか知らないのである。


それでもまあ、ある意味であの時代を
担っていた一人であったことは
たぶん間違いはないだろう。


さて、この方、基本一人で
シンセサイザーを駆使して、
トラックを作り上げるというスタイルだった。


いわばエレクトロ・ポップなる分野の
代名詞とまではいわないが、
ある意味でアイコン的な
存在だったのではないかと思う。


だから、サウンドは実際、
いわゆるピコピコとした手触りである。

とはいえ、ヒューマン・リーグ(♯46)や
あるいは一連のS/A/Wプロデュースによる
アーティストたちの作品群ほど、


ディスコティークの方向に
正面から向いていなかったのが、


あるいはこの人の
独特なところだったのかもしれない。

ステージに立つ時も、
演奏はすべて自身一人で行って、
横でパントマイマーが
なんだかずっと踊っているという


斬新というか革新的というか、
そういうちょっと変わった
見せ方を試みていたはずである。



彼のデビュー曲だった
このNew Songなるトラックは、

非常にカラッとした手触りの
ユニークなポップ・ソングである。


あからさまな電子音とでもいおうか、
ゲーム・ミュージックみたいな音色の


シンセの幾つかのパターンが、
それぞれにひどく印象に残る。

なのに、なんというのだろう、
ノスタルジックといおうか、
プリミティヴというべきか、


遠慮なくいってしまえば、
それこそ当時の最先端の
スタイルだったはずなのに、


ちっとも尖がって
聴こえてこないのである。

ぎりぎり唱歌みたいな印象。
どこかが何故だか牧歌的。


無理矢理にでもたとえるなら、
ボーイ・スカウトの合宿の


キャンプ・ファイアーかなんかの場面に
よく似合う種類の曲みたいな感じかなあ。

どこかで『グリーン・グリーン』とか
『線路は続くよどこまでも』辺りの
楽曲群と、同じ地平に立っている。


まあそれはそれで、
時には欲しくなる
手触りではあったりするのだが。


もちろん以上はまったく
個人的な感想なので念のため。


でもリリクスの方も、
なんとなく、教科書的だったりする。


もう少し誉めたいい方をすると、
ポジティブなメッセージ性を
全編にわたって繰り広げている、
とでもいったような感じになる。



くじけずに、頭を使って
両サイドをよく見て、
心の鎖を投げ捨てよう。


サビのパートが
大体こんな感じである。



ちなみにこのハワード・ジョーンズ、
七歳からすでに
ピアノを始めていたというから


あるいはそういう古典的な素養が、
こんな形で旋律や歌詞にも
現れてきたのかもしれないとも思う。

ところでこの方、
下積みが長かったとでもいうべきか


キャリアの割りに実はデビューは遅く、
83年、本人28歳の時である。


あのOMD(♯16/♭20/♭49)や
ほかのテクノポップバンドの
サポート・メンバーを努めていた彼は

ようやく念願叶って、ワーナーとの
ソロ契約を獲得することに成功する。


そして、デビューシングルとして
発売されたこのNew Songが
いきなり全英3位にまで駆け上り、


続いてカットされた、
What is Love?は
さらに2位まで上昇し、

この二曲を含んでリリースされた
上のアルバムHUMAN’S LIBが
ついに見事に一位に輝いたのである。


順風満帆といっていいスタートだった。

実際本当にあの時期、
この人のPVは、
随所で繰り返し
オン・エアされていたものだった。

正直、そこまでのものかなあ、と
思いながら見ていなくも
なかったのだけれど、


それでも今になってみれば、
やっぱり時代の音だったんだなあ、と
改めて思ったりもしてしまう。


曲の持つノスタルジアに、
僕自身の抱いている
現実の懐かしさが重なって、

なんだかひどく不思議な気分に
させられたりしてしまうのである。



それでもこの
ハワード・ジョーンズもやはり、


あの第二次ブリティッシュ・
インヴェイジョンの終息とともに、

次第に苦戦を
強いられるようになり、


デビューから10年目の93年には、
ついにワーナーとの契約を
打ち切られてしまう。


しかも、そのショックで御本人、
どうやら仏教徒に改宗したらしい
などという記述も、今回ウラ取りを
やっているうち見つけたりもした。

まあ、どこまで本当かは
正直よくわからないけれど。


それでも、最終的には
自身でレーベルを立ち上げて、


現在はむしろアコースティックに
大胆に方向転換し、
音楽活動を続けているようである。


ちなみに上のWhat is Love?は
New Songとはまた手触りの違った
マイナー・キーのバラードだったから、


基本的には十分な振り幅を持った
アーティストなのだろうと思っている。



さらにちなみに、
実はあのデヴィッド・ボウイの
本名というか、バース・ネームが、

デヴィッド・ハワード・ジョーンズ
といったりもするのである。


偶然といおうかなんといおうか。

まあ、そのおかげであれほど
いきなり売れたという訳でも
決してないのだろうとは思うのだが。

そういう訳で、このネタが
今回のトリビアということで。



で、ニック・カーショウ、
そしてこの人ときたら、


当時の英国版若手御三家という扱いで、
次はポール・ヤングに行くのが
本当は順当であるらしいのだけれど、

この方については、
一度バンド・エイド(♭27)で
触れてもいることだし、


本編では、ついでにここで紹介するに
留めておくことに
させていただこうと思っている。


いや、そろそろ枠も残り少ないもので。

あまり大物取りこぼすわけにもいかないし。

ちなみにこのポール・ヤングは
米国はホール&オーツのカヴァーである


Every Time You Go Awayが
本当に英米ともに空前の大ヒットとなって、

84年~85年辺りにかけての
本人の人気は相当にすさまじく、


それこそ先のバンドエイドでは
並み居る有名どころを押し退けて、
トップ・バッターに起用されてもいた。


そういう訳で僕もこちらはちゃんと、
アルバムを二枚聴いたのだけれど、

まあいってしまえば、
これがどっちも、
ちっとも面白くなかったのである。


好きな人にはすいません。

でもだって、Every Time You Go Awayが
聴きたくなった時には、
ホール&オーツかければ済む訳だし。


なお、後年このポール・ヤング、
我が国の鈴木雅之さんとの
デュエットでのレコーディングなども
行っていたはずである。


あれ、何年頃だったっけなあ。

確か大阪のFM局が中心となった
企画だったのではないかと思ったが、
ひょっとして違うかもしれない。