ラジオエクストラ ♭62 Freedom | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ワム!である。

出世作にして押しも押されぬ代表作、
MAKE IT BIGからの84年のシングル。


Make It Big/Wham!

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しかし改めて考えてみれば、
実に不思議な人たちだった気がする。



たとえばTFF(♯13,♭46)とか
あるいはワン・チャン(♯70)とかは、

同じように二人組みであったとしても、
なんとなくバンドなのである。


まあ上のどちらもが、基本的には
メンバーが徐々に抜けていって、


最終的に二人だけが残ったという
成立の経緯を有していることは確かなのだが、

それでも、彼らの音楽は、
やっぱり基本どこかが
バンド・サウンドだよなあ、と思うのである。


前回のカルチャー・クラブだって、
ロックとはやや呼びがたい気もするが、
間違いなくバンド・サウンドである。



ところがこのワム!の音楽ばかりは、
絶対にバンド・サウンドではない。

それどころか、ロックという言葉で
形容することがやや憚られる、
そういう音であり、歌なのである。


西城秀樹と郷ひろみが揃ってカヴァーした
前にも確か、
フリオ・イグレシアスみたいとか形容した
あのCareless Whisperはもちろんのこと


後年ソロになったジョージ・マイケルが
いきなり大ヒットさせたFaithにしても、

ギター・ストローク全開の、
いわば典型的な
ボ・ディドリー・ビートを演りながら、


決してロックンロールには
聴こえてこない。


いや、本当はそうなのかもしれないけれど、
そういいきってしまう、
つまりロックと形容することが、

どこか躊躇われてしまうのが、
この方のメロディーであり、歌なのである。


結局のところ、とにかく
ポップ・ミュージックとしか
形容のしようがない。


もちろんこういうのは所詮、
個人的な所感でしかないので念のため。


さて、彼らの全米での最初の
ブレイク・スルー・ヒットである


Wake Me Up Before You Go Goも
やはり決してロックではない。


ちなみに同曲の邦題は、
「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」(!)。
今でもこれで通用しているはず。

あ、この最後の
エクスクラメーション・マークは


ユニット名の場合とはまるで違って、
僕が感情表現のために
あえてつけたものなので念のため。


なんというか、心情的に、
こうとしか表現しようがないのである。

いや本当、当時の担当者様の
御苦労が痛いほど察せられますです。



だってこの曲、邦題つけないで出す訳にも
いかなかったんだろうけれど、
つけた人は相当悩んだと思うんだよなあ。


「で、出かける前には起こしてね」って訳には、
さすがにちょっと行かなかっただろうから。

しかもこの時期は、日本語の邦題が
少しずつ敬遠され始めていた時期で、


でも、だからといってこの曲を、
「ウェイク・ミー・アップ・
ビフォア・ユー・ゴー・ゴー」
というそのまんまのタイトルで商品にする勇気は


万が一僕が担当だったとしても
たぶん出せなかっただろうと思う。

そもそも長過ぎるし。


いや、結構いろいろね、
僕自身も邦題をつける時は、
相当悩みましたから。


そんなに数は多くないし、
知ってる人もいないだろうけれど、

前にも一回書いたように、
聖子ちゃんの曲みたいな邦題って、
ハガキに書かれたこともあるし。


ま、でもその辺りのネタは
また機会を改めてということで。


だからこの「ゴー・ゴー」の
最後の繰り返しのニュアンスを
「ウキウキ」という言葉で
置き換えて訳出(?)した、

このセンス、なかなかだと思うのである。


さて、では余談はこのくらいにして、
そろそろ今回のFreedomへと戻ろう。


この曲、ある意味でこの
ジョージ・マイケルという人の個性が、

十二分に発揮されている
トラックなのではないかと
常々思ったりしている。



本編(♯32)の時にも
結構熱心に書いたけれど、
この人の書く曲は本当に、


どこかで聴いたことが
なんとなくある気がするのに
当然のことだけれど、
まったく同じものは存在していない。

逆にいえば、必ず何か新しい要素が
随所にちゃんと見つかってくる。


そういう、ある意味では
王道的とでも呼んでよさそうな特徴を
適度に備えているのだと思う。



たとえばこのFreedomの冒頭の
ブラスのファンファーレみたいなライン。

このスケールなんて、どこにでもある。

なのに、直後にジョージ・マイケルが
スキャットでこれを追いかけてくることで、
全然新しいもののような気がしてくる。


Aメロの鍵盤のパターンだって、
ちっとも新しくはないはずなのに、

今度は歌のメロディーが独特で、
あ、ちょっと斬新なのかな、と
でもいった気分にさせられる。


ブリッジからサビに至る
展開にしてもまた同じ。


なんか聴いたことある気がするのに、
元ネタが全然浮かんでこない。

そういう焦りとも違う何かを、
無性にかき立てられてしまうのである。


まあたぶん、そういうのも、
わかる人にはすぐに
わかってしまうのでしょうけれど。


それこそドリス・デイとか、
パット・ブーン辺りを
きちんと聴き込んでいると、

ひょっとして印象も違うのかなあ、とも
時々思わないでもないのですが。


ちなみにドリス・デイは、
アメリカのシンガーで、
Wake Me Up Before You Go Goの
リリクスの中で言及されていたりします。



まあ、だからそういった、
わかりやすい聴き心地の良さと

ある種の時代性みたいなものが、
巧妙に同居していた点が、


このワム!というユニットが
あれほどまでにシーンを席捲した
理由だったのではないかと
時に思ったりもするのである。


もちろんこういうのはやっぱり、
後になってからだからこそ
いえることではあるのですが。

そして、こんなふうにいろいろと
なんとなくつらつら考えていくと、


このジョージ・マイケルという方の
基本的な志向性というのは、


実は誰よりもエルトン・ジョンに
近いのではないかと思ったりもする。

だから、91年にこの二人が共演した時は
結構納得がいったものである。


なお、この時二人はエルトン・ジョンの、
Don't Let the Sun Go Down on Me
(邦題『僕の瞳に小さな太陽』)という
74年のトラックをリメイクしています。



あ、では最後についでなので。

そろそろエルトン・ジョンも
ちゃんとこっちのエクストラで
取り上げていくつもりでいます。


この方の場合、メインの活動時期が
やっぱりどうしても70年代なので、


ここまで少なからず腰が引けて、
後回しにしてしまってはいるのですが。

まあそんな予定でおりますので、
お好きな方には、ご期待下さい。



でもやっぱりここは気分なので、
ひょっとしたらまたもう少し、
時間が空いてしまうかもしれません。