ラジオエクストラ ♭52 Day Tripper | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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トピックがギター・リフの
話になってしまった以上は、

どうしたってこの曲に
触れずに済ます訳には
やはり行かないのではないかと思う。


ビートルズは、65年のヒット曲。

ザ・ビートルズ / 1962年~1966年 ( 赤盤)

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とにかくもう、すごいの一言に尽きる。

ほぼこのラインだけでこのトラック、
曲として成立してしまっている。


というか、すべてのパートがこのリフを
支えることに貢献するよう
逆に作り込まれているといってもいい。


だから、とりわけ
いわゆるAパートにおいては

むしろ歌っているのはギターの方で、
三人のコーラスは、
あたかもギターや鍵盤がリズムを刻む、
コード・ストロークでもあるかのようにも響く。


なるほど確かに、このギター・リフに
歌詞を載せてしまうことは野暮であろう。



なんてことを書きながら
つい考え込んでしまったのだけれど、

ひょっとして僕は、この曲に関しては、
ビートルズのオリジナルよりも先に


YMOのカヴァーでまず
耳にしているのかもしれなかったりする。


どっちだろう。
あまりきちんと覚えていないなあ。

ちなみにYMO版の収録は、
この前ここで取り上げたばかりの


Technopolis、Rydeenを含む
SOLID STATE SURVIVORである。


いや、でも本当、
どっちが先に耳に入って
きたのだったろうか。

あんまり昔過ぎてよくわからないや。

年は取りたくないものである。
いや、そんなに本気に思ってはいないけど。


いずれにせよ、なんか変わった曲だなあ、と
思ったことは確かである。

むしろ今になってみれば、
この曲のカヴァーに挑めるという
その一事だけで、


YMOという存在がどれほど
すごかったかという証左のようでもあるけれど。



さて、斉藤和義さんもおっしゃっているように、
僕らの世代だと、
ビートルズというのは、もう最初から
ブラウン管の中にしかいない存在だった。

しかもその映像さえ、
今のようにネットもなければ、


当初はビデオ・デッキなんてものさえ
まだ存在していなかったのだから、
目にすること自体が本当に稀だった。



大体が、このDay Tripperの発表さえ、
僕の生まれる前年のことである。

むしろ今年でちょうど
半世紀前の出来事となった訳か。



当時のイギリスのマーケットや、
あるいは日本や欧米の人々は、
いったいこの曲を
どんなふうに聴いたのだろう。


明らかに
ポピュラー・ミュージックというものが

つい2年前にリヴァプールという街から
デビューしてきたばかりの
四人の若者たちの手によって、


確実な変貌を遂げ始めていく、
そのはっきりとした手触りを、
そこはかとなく感じたりもしたのだろうか。



まあそんなことをとりとめもなく
考えさせてしまうほど、
やっぱりこのトラックは強烈なのである。

春樹さんだって時々引用してるしね。

――デェーエエィ・トリッパー。

やっぱりこれは、やってみたくなる。
リフを文字にするのは到底無理だけれど。


さて、順番的にいうとこのDay Tripperは
ジョンの聴こえない悲鳴ともいうべき、
あのHelp!の次に当たるシングルである。


We Can Work it Outとのカップリングで、
バンド初の両A面という扱いだったのだそう。


ちなみにアメリカと日本とでは、
We Can Work it Outの方が、
はっきりとA面だったらしい。

なんとなく、わからないでもない。

まあだから、こと音楽に関して、
とりわけポピュラー・ミュージックの
ジャンルにおいては、


イギリスという国の人々の、
ある種の先鋭性というのは、
やっぱり特徴的なのではないかと、

こういう事実にぶつかると、
そんなことを考えたりもしてしまう。


そういう感触もあって、
僕自身イギリスの音楽の方が
どう見ても相対的に好みだし、


このブログも、とりあえずは
基本英国勢に絞って
進めていたりもするのである。


当時の空気こそよくはわからないが、
それでもやっぱりこのDay Tripper、


曲の根本的な構造そのものが、
革新的に過ぎたのではないかと思う。


歌を聴かせる、ただそれだけじゃない
ポップ・ミュージックも成立しうる。

結果としてこのトラックが投げかけたのは、
そういうテーゼみたいなものだったのだと思う。



だけど、時代の経過という洗礼を受けても
なお残っていく曲というのは、


こういう突出した要素を、
どこかに備えたトラックなのではないだろうか。


さて、この時期バンドは
映画『ヘルプ!』の撮影を終え、


アルバムRUBBER SOUL(♭5)の
制作に取り掛かっていたところである。


その意味では、このトラック、
中期ビートルズ・サウンドの入り口を
こじあけた一曲だったのだともいえよう。


いずれにせよ、この曲と、それから
I Feel Fineとを聴くといつも、
いや、リンゴ・スターっていうのは、
いいドラマーなのだなあ、とつくづく思う。


なるほどピート・ベストでは
物足りなかったということか。


まあ、その辺りの結成当初から
デビューまでの時期の話も、
いずれそのうち。

たぶんTwist and Shoutか、
あるいはI Saw Her Standing There
辺りを取っ掛かりにして記事にする予定。


今日のところはこの辺で。