ラジオエクストラ ♭31 Headstart for Happiness | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ポール・ウェラー率いる
スタイル・カウンシルのナンバーから。

スピーク・ライク・ア・チャイルド/ザ・スタイル・カウンシル

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初出は83年。

前年に突然ジャムを解散したウェラーは、
タルボットとこのカウンシルを結成し、


翌84年にかけて、デビュー・アルバム
CAFÉ BLEUに先行する形で
まず三枚のシングル盤を発表している。

これらの音源が、本国英国以外で
一枚にまとめられリリースされたのが、
INTRODUCING THE STYLE COUNCILなる、
やはりミニアルバムの形式の一枚だった。



スタイル・カウンシルを御紹介。

極めてストレートなネーミングである。

映画のオープニング・クレジットなどで、
その作品がスクリーン・デビューに当たる
新人の俳優の名前の前に、
この表記がつけられることがある。


また、テレンス・トレント・ダービーなる
アメリカのアーティストのデビュー盤も、
同じタイトルのつけ方だった。
まあこれもやっぱり余計な話ではあるのだが。



さて、Headstart for Happinessに戻ろう。

この曲はまず、バンドの二枚目のシングル、
Money Go Roundのカップリング曲として
発表された。


この時は、リズム隊すら入っていない、
基本ほぼ弾き語りといっていいくらいの
シンプルなアレンジのヴァージョンだった。


リズム・キープは終始
フィンガースナップに任されて、
ギターのほかには高音の鍵盤の
白玉が聴こえてくるのみである。

なるほど今にして思えば、これがだから、
ウェラーがこの時タルボットと組むことに
見出していた意義だったのだろうとも思う。


なんだかとても不思議な手触りの
仕上がりになっている。


同曲は、決して弾き語りが似合う種類の
メロディーラインを有している訳ではない。

しみじみくるというよりは、
むしろタイトルにあからさまな通りに、
極めて前向きな、明るい曲調なはずなのである。


その空気をこのシンプルな編成の中で、
十分に引き出してくれているのが、
タルボットによるオルガンの、
いわゆるカウンターのラインなのである。


アコースティックなのにファンキーで、
かといって、決してはしゃぎ過ぎに
なるようなことはしない。

なるほどこの空気を、ジャムの編成、
つまりは基本中の基本の
スリー・ピース・バンドで作り出すことは、


不可能とまでいわずとも
かなり難しかったに違いない。



残念ながらベスト盤への収録は
見送られてしまっているようだが、
バンドにとって重要な楽曲であったことは
たぶん間違いのないトラックである。

その証拠に、という訳でもないけれど、
同曲は、アルバムCAFÉ BLEUの方にも
極めていい位置に収録されている。


最初に触れた三枚のシングルの
A面だった各曲が、
デビュー作となるこの一枚への収録を
見送られているにもかかわらず、である。


ちなみにこの時の三曲は、
Speak Like a Child, Money Go Round,
Long Hot Summerの順になる。 
どれもINTRODUCINGで聴ける。

さて、CAFÉ BLUEへと改めて収録された
Headstart for Happinessは
ところが見事なまでに装いを一新している。


サウンドの全体をバンドのスタイルへと寄せ、
ヴォーカルもウェラーとタルボット、
それにD,C.リーとで分け合う形になっている。


初出の際、例のオルガンが担っていた派手さは、
ブラスの導入でよりパワフルになっている。

確かこのアレンジで、続いたライヴ盤
HOME AND ABROADにも
収録されていたのではないかと思うが、
この点は記憶が定かではない。


比べれば、こちらのヴァージョンの方が
やっぱり相当好みなのだが、


アルバムCAFÉ BLUEについては
まだまだ語らなければならないことが
いっぱいあり過ぎるので、
今回は稿を譲ることにする。


僕はとりわけこの曲の
いわゆるミドルエイト、
あるいはブリッジと呼ばれるような箇所の
メロディーラインが好きである。



心は穏やかで、幸福への予感さえある。
こうやって、自分の行く先を、
君の元へと戻る道へと向けてさえいれば。



ある意味ポール・ウェラーらしからぬ
衒いのなさであるともいえよう。

もっとも、Headstartという語の直後に
back to youといわずにはいられない辺りが、


またなんともいえず
照れともポーズともすぐには判別のつかない、
彼独特の空気を、とてもよく
表わしていると思わないでもないのだが。