ラジオエクストラ ♭28 White Christmas | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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クリスマス・ソングを続ける。

もちろんこれは、ビング・クロスビーの超有名な、
とにかくこの時期には少なくともこれさえ聴けば、
十二分にそれっぽくとなるという曲なのだけれど、


今回の御紹介は、数多ある
同曲のカヴァーのうちの一つ、
いってみれば超変化球である。


アーティストの名を、ビートマスという。

Xmas/Beatmas

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これ、相当笑える。パロディとして最高の出来。

ビートルズ+クリスマスで
ビートマスというのは、
たぶん一目瞭然ではないかと思われる。


もっとも、残念ながらビートルズそのものには、
クリスマス・アルバムというものは存在しない。

クリスマス・ソングの録音も、流通しているのは、
たぶんそれぞれがソロになってからのものだけだろう。


実際はファンクラブ向けに、
何曲かを録音した音源が
存在してはいるらしいのだが、


遺憾ながら僕は未入手の上、未聴。

なんたって65年のものなのである。

あるいはもうある程度この世に存在こそ
してはいたのかもしれないが、


生まれたとはまだ決してまだいえない時期である。
どうしたって手が届くはずもない。

機会があれば聴いてみたいなとは、
常々思ってこそいるのだけれど、
その機会に恵まれぬままここまで来ている。


あ、僕は66年生まれです。


さて、だからビートルズがもし
クリスマス・アルバムを
作っていたらどうなったのか、というのが、
本作の基本的なコンセプトなのである。

でも結果として、普通のクリスマス・ソング集より、
よっぽどすごいものが出来上がってしまっている。


実際、もし四人があの時期に揃って
クリスマス・ソングを演っていたとても、
絶対にこうはなっていない。断言できる。



さてこのバンド、決してビートマスという
この名前で、恒常的に活動している訳ではない。

正体はラバー・バンドという
北欧はデンマークの四人組である。


その名の通り基本カヴァー・バンドであるらしいし、
これもまたいわずもがなだけれど、


RUBBER SOULにあやかって、
この名前を名乗っていることからして明らかに、
熱烈なビートルマニアでもあるのだろう。


まあ本当は、以下のような予備知識はなしに、
聴いてもらうのが一番楽しいはずなのだけれど、


それだと紹介にならないので、ここから先は
いわばある種のネタバレである。


では行こうか。で、この作品の何が凄いかというと、
著名なクリスマス・ソングの数々を、
それぞれビートルズのトラックと組み合わせて、
一つの楽曲に仕上げてしまっているのである。

たとえば一曲目。スリーブの上では曲名は
Jingle Bell Rockとなっている。
もちろんスタンダード・ナンバーである。


ああ、そういえばホール&オーツが
演っていたなあ、などと思いながら待っていると


ところが、スピーカーから飛び出してきたのは、
Please Please Meのそれと極めてよく似た、
ハーモニカのイントロだったりするのである。

また微妙にリズムをずらしてあるのが
心憎いといえばいいのかそうでもないのか。


もちろん歌はJingle Bell Rockである。

にもかかわらず、さらに曲中では、
あのカモンカモンの印象的なコーラスや、
ポールの裏返るシャウトなんかも、
巧妙に導入され、再現されているのである。

何のレコードを聴いているのかわからなくなって、
最初は本当、苦笑しか出てこなかった。


続いて登場するのはSanta Claus is Coming to Town、
『サンタが町にやってくる』のはずだったのだけれど、


今度のイントロでは、ギター・ストロークが、
徐々にフェイド・インしてきたのである。

こちらはEight Days a Weekのパターンである。
たぶんイントロをフェイド・インしたのは、
レコードの歴史の中で
この曲がまず最初だろうという代物である。


まあ全編こんな感じな訳です。だからある種の
マッシュ・アップみたいなもんなのかなあ。


でもやっぱりちょっと違うから、
結局はパロディとしかいいようがない。
それも極めて上質の。
音楽ではこういうのたぶん、あまりない。

だから、元ネタの曲を両方とも知っていると、
あまりに感心して、
それこそ手を打って笑い出してしまうのである。


Last ChristmasはPlease Mr. Postmanの
あのパターンで始まってくるし、


Rudolph The Red Nosed Reindeer、
つまり『赤鼻のトナカイ』では、
Taxmanのギター・フレーズが
終始リズム・キープを果たしている。

六曲目のI Saw Mommy Kissing Santa Claus、
すなわち『ママがサンタにキスをした』は
なんと三連符のギター・ストローク・プレイに
乗っかって始まってくるのである。


もちろんAll My Lovingのスタイルです。
これ、弾けるだけでも相当凄いんだけれどね。


しかも同曲の二番でAメロにコーラスがかかってくる
その匙加減まで、本トラックでは絶妙に再現されている。

ほかにもNo ReplyやLove Me Do、
Nowhere Manなんかがあからさまに聴こえてくる。
あとI Saw Her Standing Thereも。


これ、ロイヤルティーどう処理したんだろうと、
思わず余計な心配さえしてしまう。



で、このバンドがあのWhite Christmasを
どの曲と組み合わせたかというと、
なんとTicket to Rideなのである。

いや、これが本当にハマっている。

最後に曲のパターンがすっかり変貌して、
My Baby Don’t Careのフレーズが
繰り返される箇所のアレンジなんか、
気が利いているを通り越して感心する。


そっか、このメロディーをここに
持ってくるのか、みたいな感じ。

そしてまた、僕のお気に入りのLucyは
あのSilent Night、『きよしこの夜』で
登場してくるのである。


ルーシーのあのイントロの三拍子の
アルペジオのパターンを御存知の向きなら、


なんとなく、相当ぴたりと合いそうなのが
想像してもらえるのではないかと思う。


で、アルバムはこの後、一分あまりの
彼らのオリジナルだというトラックで
幕を引いているのだけれど、


これもね、ああ、あれとあれかいっていう、
そういったギミックだけで
できているような小品なのである。


でもこのアルバムのクロージングは
これしかないよな、と十分納得させられる。

いや本当、なんでこれ買ったのか
全然よく覚えていないんだけれど、
大当たり、大笑いの一枚でした。



ちなみにこういうビートルズのパロディには
彼の有名なモンティ・パイソンの
エリック・アイドルも参加していた
ラトルズという大傑作があるのだけれど、


まあそちらの話は今度また機会を改めて。