12’05 佐野元春音楽詩集解説 | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ええと、前回はどうやらここで終わっている。
11’01 別冊カドカワ 総力特集佐野元春

さて、この時御連絡を下さったのが、
『ストレンジ・デイズ』なる
こと洋楽方面では極めて著名な音楽誌の
その編集長の、岩本晃市郎さんという方だった。


ちなみにこの雑誌、僕自身も、
デヴィッド・ボウイの特集号を、
手元に大事に保存している。


また、これは後になって気づいたのだが、
そのボウイのTHE COLLECTIONなる
企画盤の国内盤にライナー・ノーツを
書かれているのが彼だった。

話は逸れるが、このアルバムも非常に面白い。
69年のSPACE ODDITYから
80年のSCARELY MONSTERSまでの
計12枚のスタジオ作品からそれぞれ一曲ずつ、


ボウイ自身のチョイスによって
ある種編年体的に並べられているという
なかなか類例を見ない編成なのである。


そういう性格なのでこの先単独で紹介することも
たぶん難しいだろうから、
折角だしジャケ写など載せておくことにする。

Collection/David Bowie

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各アルバム中の最重要トラックを
微妙に外して選曲されているというのに、
こういうコンピレーションで聴くと、
なかなかにどれもがいい曲なのである。


ボウイの楽曲群の振り幅の広さを
改めて痛感させられるし、しかも同時に、
決してぶれていない彼の芯みたいなものが、
きちんとそこにあるように聴こえてくる。



でもまあ、そろそろ閑話休題としよう。

あ、ここで先に謝っておきますけれど、
今回、内容からして、どうしても半分か、
あるいはそれ以上の部分が
ある意味では自慢めいてきてしまいます。


鼻についてしまったら大変申し訳ないのですが、
この点はどうか御了承のうえ続きをお読み下さい。


では仕切りなおし。

さて、この岩本氏が、前回も触れたように、
佐野さんの事務所からの御紹介ということで、
僕に連絡を取って下さった訳である。


しかも、である。

実は今、佐野さんのデビュー30周年の企画で、
CDとDVDとがセットになったボックス商品を
作成しておりまして、そこに急遽御本人の意向で
歌詞カードとは違う形の詩集を同梱することになり
その編集を僕が担当しているのですけれど、

その巻末につける解説を浅倉さんにお願いしたく、
今回は御連絡を取らさせていただきました。


やっぱりこれも一字一句その通りではないが、
まあ、そんな感じのお話だったのである。


もう。

なんといおうか。

とにかく驚くやら興奮するやらで、
ちっとも言葉が出てこなかった。


それでもどうにかして、
え、どうしてですか、と訊き返した。

「ええ、佐野さんが、これは是非浅倉さんに、
引き受けていただきたいと仰ってまして」


そうなのである。前回の卒論を、もとい、
ライヴ・レポートを佐野さんが読んで下さって、


のみならず、どうやらかなり
気に入って下さったらしいのである。

いや、この時は本当に
ほぼ絶句状態に近かった。


たぶん、天にも昇る心地という表現は、
こういう場面で使うことこそが
相応しいのではないかとすら本気で考えた。


いや、本当、半端でなく嬉しかったです。
電話を切ってからしばらくずっと、
一人で延々とガッツポーズばかり
繰り返してたような気がします。


またいろいろとあちこち角が立ちそうな予感も
ちょっとだけしないでもないのだが、


ずいぶんと時間も経っていることだから、
もうこれも書いてしまうことにする。


十数年前、自分の書いた原稿が初めて
実際に本になることが決まった時も、
それこそ相当に喜んだのだけれど、

一方どこか片隅では、ああ、きっと、
この先の人生でこれほど喜べることって、
ひょっとしてもうないんじゃないかな、
みたいなことを、なんとなく感じたりもしていた。


冷めていたという訳でも決してないのだが、
どうも妙なところがひねくれているので、
喜びながらも同時に、そういう分析めいたことも、
せずにはいられなかったのである。


だからこそこの時、

なんだ、あるじゃんか、と、

本当にそう思いました。

むしろこの時の方が嬉しかったかもしれない。
いや、これ書いちゃうから角が立つんだけどさ。
まあ、正直な気持ちなので御容赦下さい。

さて、このブログでも繰り返し書いているように
十代の頃の僕の、
佐野元春というアーティストへの
心酔振りというのは
それこそ相当なものだったのである。


その佐野さん御本人に、ジャンルこそ違え、
今自分がそれなりに仕事としていることで
ほとんど望外なまでに認めて戴けたのである。


さらにさらに、のみならず、
その佐野さんの、ある種集大成的な作品に、
自分の名前がクレジットされることになる。

いや本当、こんなことが起きるなんて
想像さえしたこともなかった。


実際できるものなら机の引き出し開け放って、
タイムマシンに乗って実家の勉強部屋まで行って、
アルバムSOMEDAYを繰り返し聴いている自分に、
ちょっと鼻高くしながら報告してやりたいな、
くらいの気持ちになりましたです。


仕事って一つ一つ繋がっていくものだなあ、
というのもまた改めて痛感したし、

好きであるというただその一事が、
時にこんなことを起こしてくれもするのだなと、
そんなふうに感じもした。



そういう訳で、四百字詰め換算で
30枚ばかりの解説めいた文章を、
僭越ながら同書の巻末に寄せさせて戴いた。


書名としては、正確には
『佐野元春 音楽詩集1980-2010』となる。

もっともお察しの通り、当然ながらこの一冊、
単独で売っている商品ではないので、


同ボックスセット以外では、
このテキストが皆様のお目に触れる機会は
今のところほぼないのだけれど、
一応タイトルだけ、例によって書いておく。


『数え切れないコトバのキスが
星屑みたいに降って来る
――佐野元春音楽詩集のための一考察』

もちろんNew Ageからの借用である。

ちなみに、ここで以前書いた
ラジオエクストラ ♭9
アルバムZOOEYの歌詞のお話を
聞かせていただいたのは、
同作品の制作の打ち上げの席でのことである。


この時も、実は会場に着く直前に、
車から降りた佐野さんとばったりお会いしたりして、
最初どころか、始まる前からもうすでに
すっかり舞い上がってしまっていたものである。

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佐野元春スペシャルボックス CD5枚+DVD5枚+BOOK5冊+別冊音楽詩集
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さて、岩本氏と外枠を大体刷り合わせてから
すぐに、別冊カドカワの編集長氏と
それからそこまで現場を担当して下さった皆様に
このお話をいただけたことを報告し、


あわせて、あの時無理やり頼んだ僕の希望を、
労を取って実現して下さったことに
重ねて御礼を申し上げた。
皆さんとても喜んで下さったものである。



その編集長氏から、次の依頼を打診されたのは、
それからしばらくしてのことである。

是非また浅倉さんに書いて欲しい
企画があるんですけれど、いかがでしょう。


もちろん断れるはずもないし、
最初からそのつもりもまったくなかった。


それでも一応、今回はどなたですか、と
尋ねてみると、はい、今年が15周年に当たる、
スガシカオさんです、とのお返事だった。

やっぱりな、と思った。

少し前からなんとなく、次あるとしたら、
スガさんだろうなあ、とは
本当にちょっとだけだが、考えてはいたのである。


でもまあその理由はまた、次の機会の講釈で。