『遊びの時間は終わらない』 | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

本木雅弘主演、91年の作品。

これ、すごく面白かったんだけれど。

遊びの時間は終らない

¥5,076
Amazon.co.jp

今となってはタイトルを目にする機会も
すっかりなくなってしまったようで、
個人的には相当残念に思っている。


まあ気がつけば25年も前の作品だから
仕方がないといえば仕方ないのだけれど。

さて、本編でモックンの演じている
この平田なる主人公は
極めて生真面目な警察官である。


融通などまるで効かない。
そのうえ、なのに冷静な思考力がある。


この設定が、いわば本作の根幹である。

舞台はとある地方都市の銀行の一支店。
ここを舞台に、地元の警察の協力の上で、
強盗事件を想定した、
ある種の訓練が催されることになる。


そしてモックン扮するこの平田が、
本件の犯人役を命じられることになり、
破天荒な物語がいきなり幕を開けてしまう。


だが彼は、クソがつくほど真面目なのである。
だから真剣に、徹底的に、一切の妥協をせず、
自分の描いた犯人像へとのめりこんでいく。


しかしなあ、ここから先は何をどう書いても
少なからずネタばれになってしまうからなあ。


こういうのこそ、あまり事前に余分な情報を
持たずに見ていただきたいものなのである。


いわばこれ、ある種の密室劇である。
だから全体は極めてわかりやすい。

最後の方でヘリコプターこそ飛んだりもするが、
場面のほとんどは問題の店舗の内部である。


それでも一時間半あまり、
まったく飽きがこなかった。


なんというか、まるでそれこそ
筒井康隆さんみたいなノリである。

もちろん突っ込みどころは満載である。
いや、幾らなんでもそうはならないだろう。
観ながら何度そう思ったことか。


でも、だからこそ笑えてしまう。

本当、一歩間違えば、なんじゃこりゃ、に
なってしまいかねないネタなのである。

それをまあ、途中でふと醒めてしまうと
いったようなこともまるでなく
最後まで楽しく見通せてしまうのは、


もちろん映像化に携わったスタッフの
熱意の賜物ではあるのだろうけれど、


何よりも、この本木雅弘という人の
役作りの力が大きいのではないかと思う。

考えてみれば、作中の平田も、
徹底的に強盗犯という役柄を
随時検証しながら作り上げている訳である。


その姿勢というか、スタンスみたいなものが、
モックン御本人のそれと微妙に重なり、


それがまた、えもいわれぬおかしみを
醸し出しているのではないかなと思うのである。


アカデミー賞の『おくりびと』はいうに及ばず、
89年の周防監督による『ファンシイダンス』や、
91年の三池監督による『中国の鳥人』あたりも、
大変面白く拝見した記憶がある。


デビューの『仙八先生』出演時から
テレビで存じ上げている身としては、
本当に独特の存在感を持った
役者さんになられたなあ、とも思う。


『おくりびと』など、あの原作の一冊から、
映画化を発想し自分で演じたいと考え、
周囲を動かしてそれを実現された訳だから、

そのモチヴェーションの高さというか、
ある種の情熱みたいなものには
小さくはない敬意を覚える。


さて、『遊びの時間は終わらない』に戻ろう。

原作は都井邦彦さんなる方による、
小説新潮新人賞受賞作である。

現在は北村薫さんの編まれたアンソロジーに
収録されているようだが、恐縮ながら未読。


この都井さんという方も、その後作品を
発表されたのかどうかもよくわからない。


また映画の方もちょっと特殊で、この時は
配給を、アルゴ・プロジェクトという
大手ではない会社が受け持っていて、
たぶん制作そのものにも、
少なからず関わっていたのではないかと思う。

その関係なのか、DVD化こそ
されてはいるようなのだけれど、
ソフトそのものをあまり見かけたことがない。


だが、面白さにはたぶん間違いがないのである。

その証拠にというか、なんというか、
七、八年前に韓国の映画界が
本作をリメイクしたりもしているのである。

このまま埋もれさせてしまうのは
実に惜しい作品だなあと常々思っていたりする。