ブログラジオ ♯25 Love in the First Degree | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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バナナラマである。バンド、というか女性ユニット。
本邦でいえばキャンディーズかって、さすがに古いな。
でもそういえば、三人組ってあんまりいないね。
トライアングルはすぐ消えたし、
シュガーとか? いや、もう誰も知らないだろう。
それに彼女たちはたぶん楽器持ってたし。
そうか、パフュームか。まあ近いものはあるかもしれない。
音楽も基本ダンスミュージックだし。
でもパフォーマンスはパフュームの方が断然上だな。
そうだよね、深町君? 間違ってないよね?

さておき。このバナナラマ、グループ名の由来は、
ロキシーミュージックの代表曲の一つ、
パジャマラマに拠るとか拠らないとか。
でもやっていることはロキシーのノリとはだいぶ違う。
典型的なガールズ・ポップといおうかなんというか、
まあとにかく軽い。たぶん一番有名なのは
ショッキング・ブルーのヴィーナスのカヴァーだし、
おそらくその次に挙がるだろうI Heard a Roumorは、
直前にすごく流行ったマイケル・フォーチュニティーの
Give Me Upと、本当にどっちがどっちか
わからなくなるほどそっくりで、あの頃は
こんなのやっていいのかよ、と
半ば真剣に憤慨していたものである。
Cruel Summerも悪くはなかったけど、
それほど強烈なトラックではなかったよなあ。

という感じであんまり誉められるところの見つけられない
だったら取り上げなければいいんじゃないかといわれても
仕方ないくらいの彼女たちなのだけれど、でも
このLove in the First Degreeだけは
何故だかすごく好きなのである。

いわゆるカノン・コードの進行に載せて
一番シンプルなアルペジオのパターンから入ってくる、
曲中幾度も繰り返されてくるブラスのリフレイン。
このはしゃいだような旋律がひどく耳に残って、
なんとなく聴くたびにいつも
どこかわくわくさせられてさえしまう。

邦題は『第一級恋愛罪』とついている。
歌詞の方も、おそらくは大方お察しいただけている通り、
いっちゃ悪いがちょっと子供騙しみたいな内容である。

判事も陪審員たちも、みんなしてあたしを責め立てるの
でも話なんか聴きやしないし、弁明さえ許してくれない
貴方だけがあたしを自由にしてくれることができるのよ
だってあたしは、恋という罪状に関して
もっとも重いレベルで有罪なんだから

このin the first degreeという表現、
日本語ではなかなか似た感じで使われることもないけれど、
普通は殺人罪の場合にくっついて用いられることが多い。
第一級殺人罪とはすなわち故殺、計画殺人のことである。
もちろん我が国でも、殺人の中でも
最も重い種類の量刑が課せられるようになっている。

だからこの言い回しをラヴ・ソングに持ってきてみる
そういう、たぶん失敗すると目も当てられない種類の
アプローチを大胆にもやっちゃってる訳なのだけれど、
まあぎりぎりどうにかなっていることは認めるとしても、
やっぱりどうにも奥歯の辺りがむずがゆくなってきてしまう。
それでも極たまに、あえてこういうのにすっかり
身を浸してしまいたい気分になることもある訳ですよ。
かわいいというか、古い言葉でならおきゃんなとでもいうのか、
いや、これはさすがに死語かもしれないな。
何よりも、あの頃かなり流行っていたからよく聴いたしね。

確かメンバーの誰かが一時期ユーリズミックスの
デイヴ・スチュワートと結婚していたはずだなと
思ったのだけれど、誰だっけ。
そういえば、ユーリズミックスもまだ紹介してないや、
などと思いつつ改めてきちんと調べてみたところ、
それは最初に脱退したシヴォーンで、
もう一人のカレンは、あのワム!の
アンドリュー・リッジリーと今も
一緒に暮らしているのだそうである。
そうか、ワム!もまだ取り上げていないや。

なお、オリジナルメンバーであるシヴォーンが抜けた後、
一時期新メンバーを加えての活動を続けるのだけれど、
やがてこのジャッキーも抜け結局は二人になってしまう。
だから僕としては、今回のLove in the First Degreeと
I Heard a Roumorとを収録したアルバムWowまでが、
まあ本当のバナナラマという感じである。
念のためだが、ここまでつい名前を出しそびれてしまった
もう一人のメンバーはサラという。

それからちなみに、上で言及したカノンコードとは、
文字通りパッヘルベルのカノンで使われている
コード進行のパターンのこと。
クリシェが基音から一つずつ下がっていくパターンなので、
聴けば大体すぐわかる。もっとも最後の二つのコードでは
このラインが上昇に転ずる形になっている。
ちなみにクリシェとは、って
まあとりわけポピュラー音楽の用語なんて
基本全部バズワードみたいなものなので、
きりがないからこの辺りでやめておく。
幾度かここでも書いたミドルエイトという用語だって、
厳密に八小節の意味では最早使われてはいないしね。
ついでながらパフュームのポリリズムという楽曲は、
本当はまったくポリリズムではない。
そうだよね、深町君? これも間違ってはいないよね?


さてトリビア、というか、今回はほとんど脱線。
第一級殺人罪、つまり故殺であるかどうかを巡って
物語が繰り広げられる映画作品に
『陽のあたる場所』という傑作がある。
アメリカの作家ドライサーの『アメリカの悲劇』を原作に
1949年に制作されたモノクロ作品。
主演はモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラー。
アカデミー九部門ノミネート、
うち六部門で受賞を果たしている実績の通り、
二時間を越しますが、かなり見応えのある作品です。

それから最後に念のため。
今回二度ばかり名前を出した深町君とは、
いうまでもなく、パフュームの大ファンとしても有名な、
第三回このミス大賞受賞作家、深町秋生氏のことです。
随分とご無沙汰しているというのに、こういう場所で
こんな形で引き合いに出して本当にすいません。
どうぞ御容赦下さい。映画楽しみにしております。

Wow!/Bananarama

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