ブログラジオ ♯1 Happy Xmas(War Is Over) | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ブログラジオってなんだよ、それ。
あるいはカテゴリーを見てそんなことを
思われた方もいらっしゃるだろう。でもたぶん、
あなたが想像してくれた通りの内容でほぼ間違いはない。

要は文字だけで好きな曲を延々と紹介いこうという魂胆である。
ひょっとして拙著『北緯四十三度の神話』を
思い浮かべて下さる奇特な方も、
中にはいらっしゃるかもしれない。
まあ結局はあれと似たような感じになるのではないかと思う。

十代の、特にその後半に出会った音楽というのは生涯心に残るという。
改めて自分自身に照らし合わせてもまさしくその通りで、
今でもその頃愛聴していたソフトばかりを
取っ替え引っ替えしてはプレーヤーに載せ、
繰り返しかけている。
とりわけ小説を書いている場合、
作品によってはBGMがそのアーティストのものでないと
それこそ嘘みたいにぴたりと進まなくなって
しまうようなこともしばしば起きるので、
時には一日中、実に八時間近く
同じアルバムを流していたりもする。

断っておくけれど僕の趣味はたぶんそこそこに偏っている。
基本的に、90年代以前の洋楽しか出てこないのではないかと思う。
もっともそれ以降のものやあるいは邦楽の中にも、
様々な場面で心に引っかかってきたものは決して皆無ではないので、
例外も追々出てはくるだろうけれど、
それはいずれというつもりである。

でもまあこれはブログなんだし。
なら読みたい人だけ読んでくれればいいということにして、
ほぼ全面的に好き勝手に書いていこうと企んでいる。
それから邦題をいちいち確認するのが面倒なので、
タイトルの標記は基本原題のままにしておくつもりなので念のため。
それから長いタイトルに関しても、
たぶんどの曲かわかるだろうと思われるものは
勝手に略してしまったりも、ひょっとして
するかもしれないので、そこはご勘弁。

という訳で一発目。この時期だし、さすがに最初は鉄板で。
洋楽、とりわけイギリスのミュージックシーンを語るうえで、
この人とその相棒を外すわけには決していかないし。

ビートルズの楽曲群に出会った頃、
僕はティーンネイジャーの入り口にいた。
もっとも、僕が生まれたのは彼らの来日の年だから、
当然実質活動期間わずか八年ほどのバンドは
とっくに解散してしまっていた。

当初はレノンの作品よりもむしろ、
マッカートニーがメインの楽曲の方が好きだった。
挙げるまでもないが、Let It BeやHello Goodbye、
Here There Everywhere、あるいはThe Long and Winding Road。
こうやって並べると、だいたいその当時の僕の
好みの傾向めいたものがなんとなく
わかってもらえるのではないかと思う。

だが80年代が始まった最初の年の12月、事件は起きた。

もしあんなことが起きなければ、と、やっぱり今でも考えてしまう。
それから少しだけ成長した僕は、
LucyやWalrusのもうしっちゃかめっちゃかとしかいいようのない世界観や、
あるいはNorwegian Wood, I’m Only Sleepingといった楽曲たちの、
繊細としか形容しようのない美しさに
ひどく惹かれていく自分に気づくようになり、
彼の新しい作品が決して発表されることはないという厳然たる事実に
ことあるごとに改めて打ちのめされたものである。

しかし、気づけばあれからもう三十年以上が過ぎている。
実際あの頃は、そんな年月なんて想像の届く範囲を優に超えていた。

でもそれから今まで、この曲を耳にしない十二月は
たぶんただの一度も来ていない。

最後にトリビアを一つだけ。
この曲の冒頭の囁き声。ジョンとヨーコは互いの名前ではなく、
実はそれぞれがかつての配偶者の元に残した子供たちの名を呼んでいる。
曲は元々、一緒に暮らすことのできない彼らへの
二人からのクリスマスプレゼントとして作られたのだということである。

I wish you a Merry Xmas and
A Happy New Year.