指令 大峠へ直登せよ! | 強化人間331のブログ

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サイボーグである強化人間331の、つれづれ山行記録。
さしておもしろくもないのは、ご愛嬌。

なんのこっちゃ!

 

大峠という名の地名は日本中無数に存在するかと思いますが、そのうちのひとつが鈴鹿山脈、銚子ヶ口という忘れ去られたようなピークの南部にあります。

 

なんの変哲もないコルでして、まともな山屋はこんな峠、気にも留めないでしょう。いっぽうわたしは大峠に詰め上げるべく、数年前から何度もトライし続けており、その都度失敗していたという因縁があるのですね。

 

現時点の読図能力では無理だと数年前に諦め、それからずっとほったらかしになっておりました。そこで3月末日、大峠との因縁に決着をつけるべく、強化人間331は立ち上がったのであります!

 

それはよいとして、ほったらかしといえば投資ですよね(山崎元著「ほったらかし投資」からの連想です、念のため)。投資の理想は高配当株に資金をつぎ込み、ほったらかしにしておいてもじゃんじゃんインカムゲインを得られるというスタイルであります。

 

何冊かその手の本も読みましたが、高配当株で儲けている人びとはかなりの元手を株式に突っ込んでいるようです。それも当たり前の話で、高配当株といえどもせいぜい5パーセントくらいが関の山ですから、多額の配当を得ようと思えば大量に株式を購入せねばならない。

 

100株、200株のレベルではありません。もはや1万株、2万株の大台なのですね。高配当株は業績の安定した大企業が多いですから株価も高い。仮に1株あたり5,000円とすれば、1万株は

 

5,000×10,000=50,000,000円

 

となります。ここに至るまでに配当の再投資だけではなく値上がり益も多少はあったでしょうが、それにしたってはした金をチマチマ積み立て投資してたくらいではとうてい無理な領域です。預金のいくばくかを生活資金として残し、あとはほぼ投資に注ぎ込む、というスタンスのはず。

 

これ、できますかね? 元手の額の問題ではなく、資産のほとんどを株式に投入するというメンタリティの話です。わたしもとりあえず投資信託に新NISA枠の3/4くらいはぶち込んでおいたけれども、それでもせいぜい二百万円程度です。もともと強固なリスク回避型の著者が一気にえいやと動かせるのはせいぜいこれくらいで、これ以上となると精神的なプレッシャーに負けると思われます。

 

仮にキャッシュの総資産が1千万円だとして、生活資金を月収の3倍とします。月収を30万円としても、約900万円もの資金を株式に投入できるかどうか。少なくともわたしには無理でしょうね。ここらへんが大金持ちになる人とそうでない人――もしくは素寒貧になる人とそうでない人の分水嶺なのでしょうなあ。

 

とはいえキャッシュで持っておけば安泰かといえばもちろんそうではなく、銀行金利がインフレ率以下である昨今、預金は毎秒刻一刻と目減りしております。投資するのは所与としても、これにどう取り組むのかは千差万別でありましょう。

 

投資を趣味だと思っているあいだはダメだと、さる投資家が書いておられました(byふりーパパ)。やるのなら仕事と思ってやれ。これいくらいのファイトがいるようです。関連書籍の渉猟も一段落つきましたので、そろそろ小口でもよいから個別株を買ってみようかと思います。

 

わたしの(いまのところの)投資哲学は、こと個別株に関しては積極的にリスクテイクしていくというもの。なぜそうなのかといえば、安定企業を筆頭としたディフェンシブ銘柄を買う意味がわからないからです。そんなモン、インデックス投信でよくないですか? 堅実だけれどもリターンの低い投資と、ハイリスク・ハイリターンの小型株投資を両輪で進める。こうしたサテライト戦略によって――。

 

いかんいかん、そろそろせっかちな山屋が「まーだ時間かかりそうですかね~?」と皮肉を飛ばしてくる頃合いなので、そろそろ山の話題に移りましょうか。

8:45 石榑トンネル出口付近の滋賀県側駐車場~8:55 八風谷キャンプ場~9:10 八風谷登山口~10:00 杠葉尾分岐~10:20 中峠~11:00 釈迦ヶ岳~11:50 羽鳥峰~12:25 ヒロ沢出合~12:55 お金出合(ランチ)~13:25 出発~13:40 お金明神~14:10 お金峠~14:20 コリカキ場~14:40 大峠・銚子ヶ口分岐~15:30 大峠~15:40 西峰~16:00 東峰~17:05 銚子ヶ口登山口~17:40 石榑トンネル出口付近の滋賀県側駐車場(車回収)

 

日時 2024年3月31日(日曜日) 

天候 薄曇り

メンバー 強化人間331(単独)

装備 軽量化装備(調理器具、雨具、食料、非常食、水3リットル)

距離 約23キロメートル

推定累積標高差 約1,800メートル

所要時間 8時間55分(うち昼休憩30分、その他小休止含む)

備考 大峠への沢登り敢行

 

1 八風谷はよい谷だ

本記事の掲載目的は①鈴鹿山脈で忘れ去られつつある滋賀県側登山道の布教活動、②大峠遡行の悲願達成の2点となります。まずは①を以下にてやらかす予定。どうぞご堪能ください。

 

この日はけっこう気合いが入っていたのか、気温が高かったのか早く起きられたようです。なんと8:45には現地に着いてしまった。わたしとしては異例の早さですね。準備をしていざ出発。車は車道の路肩に停めておきました。路肩といっても幅がゆうに20~30メートルはある超巨大なスペースです。事実上停めたい放題であります。

8:55、八風キャンプ場着。ここ営業してるんでしょうか? 内部はほとんど廃墟同然でしたが……。キャンプ場内に伸びる林道を詰めていくと、

9:10、八風谷登山口です。指導標が何本も建ってるので見落とす心配はありません。ここから2本ほど沢を横断し、谷沿いにどんどん沢を詰めていきます。

序盤は伐採のため道がけっこう荒れてます。松の枝が無数に落ちていて、さながらヤマヒル養成学校といった趣。雨上がりに本ルートを歩く度胸はないですが、この時期ならまず大丈夫でしょう。

 

序盤は道が荒れていると書きましたが、そもそも滋賀県側のトレイルなので状況はお察しであります。まともに整備された部分がむしろ少ないまである。でもこういうのが沢ルートのよさではないでしょうか。最近やっと沢のよさが少しだけわかってきました。いままでは尾根厨でしたのでね。

ナメ滝という銘板が出ていました。なかなかの迫力です。本ルートはジメジメした暗い鈴鹿の谷からは程遠い、上部の開けたたいへん解放感のある谷です。美しい渓谷美を堪能でき、そのくせルートは入渓がほぼないので高巻きばかりの極楽トレイル。さらにさらに入山者もゼロに等しいというおまけまでついてきます。端倪すべからざる超穴場スポットですね。なんだったら人が入るようになるので紹介したくないまである。

 

いやつーか、こんなアカウントにそんな影響力ないっしょ?

 

おっしゃる通り。無用な心配でしたね。

道は八風谷に沿ってつけられています。途中支沢の横断を何度もするのですが、そうしたわかりづらいポイントにはちゃんと指導標がぶら下がってます。当然ペナントも巻いてあるので、初見でも注意力を研ぎ澄ませていれば深刻な道迷いに陥ったりはしないはず。

10:00、杠葉尾分岐です。稜線に詰め上げました。あまり八風谷のよさを伝えられなかったかもしれませんが、ホンマによい谷です。この山行のあとも八風谷を絡めた別のループコースを作っています。確か2連続だったので、それくらい八風谷が魅力的だということでしょう。

鈴鹿の主稜線に詰め上げてしまえば、あとはもう当分ベルトコンベヤのような極楽ルート。真新しい鳥居の目立つ八風峠に10:20、着きました。ここでは三重のほうから登ってきたご老人たちが歓談しており、若者のわたし(ここ突っ込むところですよ、お客さん!)は珍しかったのでしょう、どこから登ってきたのかと声をかけられました。

 

これはマウントをとる大チャンス! さもなんでもないかのように「八風谷からスけど」とスカした態度で返答。すると老人たちは感嘆の声をあげ、さらに道の様子を聞いてきます。このムーヴ、もはやマウントをとってくれと言っているようなもの。

 

わたしはさらに畳みかけました。「まあ、けっこう荒れてますよ」。やっぱりなあ、と彼らはうなずき合い、歴戦の勇者であるかのようにわたしを遇したのでした。いやあ、マウントってホントにいいもんですねえ。→いやあ、映画ってホントにいいもんですねえ。by水野晴郎氏。

マウントも一通りとり終わりましたので、鈴鹿随一との呼び声も高い三池岳~釈迦ヶ岳間の稜線歩きとしゃれこみましょう。

この区間はいつ来ても美しい。思わずため息が漏れます。風はまあまあ吹いていただけれども、寒くてかなわんというほどではありませんでした。

11:00、釈迦ヶ岳(1,092メートル)着。例によってこの日も行程はぼんやりとしか決まっておらず、これからどうすっかなあ、と口を半開きにしながら歩いてました。

ぐるりと稜線を回り込み、釈迦ヶ岳方面の荒々しい岩稜帯を激写。もう松尾尾根とか庵座谷とかのメインルートは10年以上歩いてないです。はい、ここで遠回しにマウントとってますよ! 念のため解説すれば、「メインルートなんざだるくて歩いてらんねー」という趣旨ですね。

 

これは持論なのですが、山屋はより困難なルートや行程にやたらと挑戦したがりますよね。一例をあげましょう。もし西穂高岳と奥穂高岳に登頂するのが目的なら、もっとも安全なアプローチは西穂ならロープウェイ経由の新穂高ルート、奥穂なら涸沢からのザイデングラートルートです。換言すればそれ以外の道を辿る合理的な理由はありません。

 

にもかかわらず、腕に覚えのある山屋たちが国内最難関と名高い西穂~奥穂稜線に挑戦しています。なにを隠そうわたし自身もクリアしています。はるかに安全なルートが他にあるのに当該縦走路を歩く輩が後を絶たない。そしてあろうことか、滑落してくたばってさえいる。これほどの危険を冒すのには、明らかにピークを踏む以外の理由があるはずです。

 

そう、それが他の山屋に対するマウントなのであります! 俺は奥穂から西穂に縦走した、俺は冬季に宝剣岳に登頂した、俺は――。ネットが普及する以前はマウントをとれる対象はせいぜい周りの山仲間だけだったのに、SNSのせいで対象は事実上、全世界の人びとにまで拡張されました。

 

現にマウント合戦が原因と思われる遭難騒ぎも起きております(鈴鹿山脈でのYUCON氏の事例など)。特にヤマレコやYAMAPなどの有用な登山地図を提供しているアプリはそのまま、SNSとしても機能していますね。実は最近、踏破距離や標高差の記録をとるためだけにYAMAPをダウンロードしたのですが(つまり無料ユーザーのフリーライド状態)、あれはあかんよホンマ。

 

登頂した山の数、累積獲得標高差、コース定数などが山行記録とセットになっている。それどころか山バッジなどという射幸心をあおるような要素まで具備しており、ユーザーの序列が自然とできているのですね。踏んだピーク数やバッジ獲得数、テント泊か小屋泊かなど、無数のマウント要素が散りばめられており、ユーザーはランクを上げようと無茶なルートや行程を組んでしまう。

 

こうした傾向は避けられないことなのでしょう。わたしだって例外ではありません。冬季オールラッセルを標榜するのも、バリルートを開拓するのも、ループコースにこだわるのもすべて、ライト層とのレベルの差を強調したいがためであります。ザコどもにこんな真似はできまい、悔しかったらやってみろや! ……ここまであからさまではないですけど、そうした側面がないと言えば噓になる。
 
わたしの場合、建前はあくまでより難易度の高い山行に挑戦するという孤独な求道者を装いつつ、本音はライト層へのけん制、ないしは遠回しの揶揄も含んでいる。そうなりますと山屋という人種は例外なく、全員が性格に難を抱えたロクデナシどもという結論に至ります。それだけではなく、マウントをとるために危地へ飛び込み、あまつさえ救助隊に迷惑をかけるという超絶自己中な連中となり、いよいよわれわれの存在意義が――。
 
もうやめとくか……。
 
進んで同業者たちの風評を悪くすることもあるまい。とはいえ上記考察、けっこう当たってる気がするのですが、いかがでしょうか?
どんどん行きましょう。11:50、羽鳥峰(823メートル)です。薄曇りのどんよりした天気ですね。
朝明の地上絵も健在――と思いきや、下の猫がかなり薄くなってますね。上側のワン公どももどことなく輪郭があいまいになりつつあるようです。ちなみに「猫」と「ワン公」という露骨な表現からわかる通り、わたしは猫派です。
 
妹はかつて、野良犬に数百メートルにわたって追跡された経験があるそうで、爾来ワン公を目の敵にしてるようです。連中は人間さまに盾突くような真似を平気でやらかすのであります。猫は瞳にハートマークを浮かべた人間に追い回されることこそあれど、人間を追いかけるなんて聞いたことありませんよね。そういうことやぞ、ワン公ども!

さてひとしきりワン公をこき下ろす仕事も終わりましたので、神崎川へ降りていきましょう。羽鳥峰湿原を横目に見ながら、

雑然とした沢道を下っていきます。毎度羽鳥峰峠~神崎川間のルートは首をかしげながら歩いてます。沢の高巻きなのでどこでも歩けそうなのですね。

12:25、ヒロ沢出合に着きました。年月を経るごとにどんどん渡渉難易度が高まりつつある神崎川。今年はどうかとあたりを散策するも、安全に渡渉できそうな場所はいっさいありません。1年ほど前は危険なジャンプを強いられたとはいえ、まだギリギリ渡渉できたのに、もう今年は掛け値なしに絶対不可能なレベル

 

仕方ないので靴を脱いで渡渉しました。行けるとこまで右岸を詰め、流れが比較的穏やかな部分で渡渉。まあこれが死ぬほど冷たい! 3月下旬の沢はキンキンに冷えてやがる! by賭博破戒録カイジ。しかも思ったより水深もあるし、流れも見た目よりもはるかに速く、ちょっとの油断で転倒しかねない勢い。

 

途中の中州でたまらずいったん休憩です。あまりの冷たさに「痛えよっ!」とか「あーもう!」などの無意味な悪態が出る始末。冷たさが引いたのを見計らって再度入渓、脳の芯まで響くすさまじい冷たさに辟易しながらもなんとか無事渡渉完了。これもう早春や晩秋は神崎川へ降りたくないですね……。冬は言うまでもありません。

 

ザクザク南下し、12:55、お金出合です。ここでランチを摂りました。30分休憩したけれども誰一人として登山者は通りませんでした。渡渉難易度が上がりすぎて、通行量が激減してるようです。13:25、発。

お金出合からも沢ルート。木々にペナントや文字による誘導もあります。

この沢ルートはバリルートにしては至れり尽くせりの整備が期待できますが、ちゃんと道を追っていないとあっという間にロストします(1敗)。指示にしたがって急登をこなすと、

荘厳な雰囲気のお金明神に13:40、着きました。最初お金明神と聞いたとき、山奥に神社でもあるのかしらと想像したものですが、この岩塊がそれです。日本人はなんでも信仰の対象にしてしまうちょっと危ない民族ですなあ。

 

さてお金明神に詣でたはよいものの、分岐まで戻るのはだるい。記憶によればお金明神に詰め上げたあと、稜線づたいに本道へ合流できたはず――というのはニセの記憶だったようです。このあたり地形が非常に錯綜しており、稜線と山腹を誤認しやすい状況になってますね。そのせいでかなり右往左往したあと、結局GPS通り山腹にいるのだと納得。もと来た道を戻ってお金峠を目指すことに。慣れた山域だと侮ってました、情けない……。

14:10、やっとお金峠です。上述した通りお金明神からここへ直接行けるなどという誤った記憶に振り回され、かなり時間を食ってしまいました。お金峠に着いたら、そのまま峠を越して反対側の尻谷へ降りて行ってください。ほぼ道はないので、枯れた沢の底をそのまま下っていけばOK。新しいペナントも巻いてありました。

14:20、これが噂のコリカキ場。→噂の破嵐万丈。by無敵鋼人ダイターン3。地形的にはいわゆる釜となります。たいへん透明度が高く、思わずほうっとため息が漏れました。夏場なんかはザバっと飛び込みたい雰囲気です。

現在地を示す手作りの指導標もあります。あちこち分岐しているようですが、経験談をひとつ。南の上谷尻谷方面へは問題なく行けますが、北の下谷尻谷は絶対! 絶対安易に立ち入ってはいけません。愚かにも安易に立ち入って危うく鈴鹿の肥やしになりかけた記録はこちら。沢登りの経験がないと滝やら釜やらは原則踏破不可能です。つまりそうしたものが出てくるというわけ。くれぐれもご留意ください。

 

さて今回の目玉は大峠への遡行なのでした。上掲の指導標にも北谷尻谷方面に「銚子ヶ口」、「大峠」とありますね。お金明神事変でかなり時間も押してますが、とりあえず北谷尻谷を詰めて、時間がなければ銚子ヶ口へ逃げるというエスケープ計画で進めましょう。銚子ヶ口への直登ルートは過去に2度ほど辿ってますのでね。

道は北谷尻谷の高巻きにつけられています。なかなかの急傾斜をトラバースしていくので、足元にご留意を。初見では道がどこにあるのかわかりづらいでしょうが、とにかく右手に流れる沢を辿っているのだ、と意識すれば多少ルートをロストしても焦らずにすむでしょう。

毎度思うのですが、鈴鹿深部はこの世の果てのような雰囲気ですね。北アの雲ノ平や南ア全域が秘境などともてはやされているけれども、鈴鹿深部も十分秘境感が漂ってます。こんな超山奥が名古屋都心からせいぜい1時間程度で着くんですから、感慨深いものです。

北谷尻谷を詰めること20分ほど、14:40、大峠・銚子ヶ口分岐です。難易度的には銚子ヶ口への登りのほうがはるかに容易ですが、それはあくまで大峠遡行に比べればの話。十分こちらも手ごわい難路です。

 

さてどうするか。すでに15:00を目前にしており、何度も踏破に失敗している大峠遡行をこの時間から敢行するのはいかがなものか。若干トラウマ気味になっており、二の足が踏み出せません。安全策をとって銚子ヶ口へエスケープをば――。

 

ええい、つべこべ言わずにIKEA!

 

北欧家具店にどやされ、大峠遡行を決めたわたし。どうなりますやら。上掲の指導標からほどなくして、白いペナントを目印にして入渓します。以後ずっと直接沢を登っていきます。高巻きを辿れる極楽ルートはここまで。

入渓地点。ご覧のように本当にこっちで合ってるのかしら? と不安になるでしょうが、随所に白いペナントが出てきます。もちろんGPSも参照し、栄光のゴールである大峠を目指します。

雑然とした沢をひたすら詰めていきます。まだこのあたりは沢の幅も広く、それほど苦戦はしません。しかしかなりきわどいへつりなども出始めており、すでに本ルートの本性が見え隠れしてました。

ご覧のように道はありません。踏み跡もなし。完全バリルートです。白のペナントが出合で分岐するたびに巻いてあるので、それを目安に遡行してください。わたしは今度こそ大峠に詰め上げる! という強い意志のもと、GPSでこまめに確認してました。

どんどん沢は狭くなり、シャワークライミングのような場面も。ほぼ沢登りであります。ただこれがやけに楽しいのですね。いままで沢登りにはまったく興味がなかったけれど、沢屋たちの気持ちが少しだけわかったような気がしました。

足場には特に気をつけてください。堆積した枝を踏み抜いて下が水だった、というケースは多いし、歩行スペースが湿った岩しかないということも。この程度の水深であれば水没しても大事には至りませんが、早春に入水は勘弁な!

滝を直登する場面が頻出します。ご覧の通り顕著なフットホールドはないので、不自然な体勢を強いられました。高さも3~4メートルはあり、ルート終盤のクライミングは緊張感があります。

 

大峠もかなり近くなってきたところ、最後の分岐に到達しました。大きく二股に分かれていて、なんと両方にペナントが巻いてある! ジオグラフィカで読図しながら登ってきたとはいえ、ペナントに助けられていたのも事実です。①左俣は緑ペナント、②右俣は白ペナントで、地形図から判断するに右のはず。それに白ペナントはここまでずっとわたしを導いてくれました。

 

自分の判断と白ペナントを信じ、右俣を選択。次第に沢の角度が浅くなり、いつしか水も見られなくなり、特徴的な草原のような植生になり――。

15:30、大峠に詰め上げたのでした。や、やった、ついにわいはやったんやー! (セクシーコマンドー外伝 すごいよ! マサルさんのマチャ彦感)

 

大峠へのダイレクト遡行は実に数年越しの快挙となります。あのころは現行の読図能力では不可能だと悟り、本ルートを攻略すべく読図を磨いた――わけでもなかったんですけど、いつの間にやら成長してたようです。いや、実に感慨深い。

時間も押してます。銚子ヶ口からの下山ルートは序盤に沢をフラフラ通過するポイントがあり、陽が落ちると非常に厄介です。西峰には15:40、着。かなり疲れが出ていますが達成感の惰性でまだ大丈夫。

鈴鹿深部を睥睨します。低山域とは思えない山深さです。なお大峠に詰め上げてからのルートは一般道ですので、難しいポイントはありません。ひたすら脳死で辿っていきます。

銚子ヶ口(1,076メートル)には16:00着でした。この時間帯なら変則的な沢ゾーンも大丈夫でしょう。

 

などと大上段に構えていたら、結局ちょっとウロウロしてしまいました。なんかあのへん難しくない? そこさえクリアしてしまえばひたすら尾根を巻きつつ下っていくだけです。

 

17:05、銚子ヶ口登山口、ダラダラ車道を歩き通して17:40、車回収。8:45発、17:40着なので、8時間55ですか。ほぼ9時間という長丁場にはなったものの大峠遡行を成し遂げ、わたしにとっての一里塚的な山行になりました。悲願達成、やったね!

 

2 コース所感など

本ルートの見どころは最序盤に集中しております。八風谷は鈴鹿とは思えぬ解放的な渓谷美が堪能でき、稜線に移ってからも風光明媚な区間が連続します。

 

朝明渓谷エリアも当然美しく、ヒロ沢に沿って神崎川に合流すれば、思わず感嘆のため息を漏らすでしょう。ただここからがねえ。高難易度の渡渉、鈴鹿深部の攻略、大峠への遡行と三重苦が続きます。ただ人出は皆無ですので、森閑と静まり返った秘境で自分を見つめ直したい方はぜひ。

 

3 反省

 

いやっほう!

 

いやホンマ、大峠遡行を成功させたことが嬉しくて嬉しくて。過去に何度失敗したか知ってますか? 記憶にある限り4回くらいはミスってるのですよ。やればできる、自分を信じろ。by初代ビックリマン 魯迅フッドの師匠(細かすぎてわかるかっ!)

 

自分への備忘録、および後発登山者のために大峠ルートを地形図にて解説しておきます。

コリカキ場からしばらくは比較的道は顕著です(あくまで相対的にですが)。入渓地点からガラリと様相が変わり、本格的な沢登りとなります。途中まで非常に谷が細く、深いせいで足場を探すのに苦労しました。

 

やっと谷が開けてきたと思うと、今度は無数の分岐が登山者を幻惑します。本文にも書きましたが、原則白いペナントを追尾していけばOK。もちろんGPSと併用してください。もし本ルートを紙地図だけで達成できたのなら、あなたの読図能力は申し分ないと自負してよいでしょう。わたしにはとうてい不可能です。GPSさまさまでした。

 

そんなわけでずっと黒星のついていたルートをやっつけることができました。感無量でございます。記念日と称して超高級レストラン「ブロンコビリー」へ突撃し、がんこハンバーグセットを所望、レギュラーサイズのハンバーグを頬張り、サラダバーは3回お代わり、おまけにデザートまで食べてしまいました。まあ悲願達成したからね、たまにはいいよね……。

 

さて次回予告。また鈴鹿山脈にはなるのですが、竜ヶ岳を滋賀県側から登頂し、八風谷で〆るという変則ルートを開拓してみました。乞うご期待。

 

おわり