リトライを!
決行すると前回のブログで宣言しておりました。そして無言実行を座右の銘とするわたしにしては珍しく、早速敢行してまいりました。ウダウダ管を巻いているとまたぞろ山の話題から遠ざかるので、ここは男らしくいきなり山行記録に移りましょう。
1 婚活小噺・肆
山行記録をすぐに載せると言ったな、あれは嘘だ。ちょっとこじれてきているので、備忘録として記載しておきます。
パパ活女性(自分からはほぼ飯代を負担しないため命名)と才媛(高学歴でしかもかわいいため命名)のあいだでわたくし、揺れ動いております。パパ活女性とは付き合っているかのような感じになっていて、お互いの部屋に行ったりしました(まだにゃんにゃんはしてませんが、まあ時間の問題でしょう)。
もうこの娘に決めようかなと思っていた矢先、才媛から会いたいと連絡が。無下にするわけにもいきませんので、これはもう会うしかない。彼女とは付き合う以前のお試しみたいな状態です。したがってパパ活女性と会っているのは浮気ではありません(浮気じゃないよね?)。
しかしわたくし、37年生きていていままで本当にモテてこなかった。ですからそもそも、マッチングアプリが向いていないと思うのですよ。あれって浮気をほぼ推奨してるようなもんでしょ。こういうのがまこと肌に合わない。なぜ浮気推奨マシンと化すのかは、以下のセンテンスを読んでもらえればよくわかるでしょう。
マッチングアプリとは不特定多数の異性のなかからこれだという一人を見つけ出す、いわば干し草から針を探し出すような作業であります。必然的に多数の異性と会わねばならない。そのやり取りが重複しないようにしていては効率が悪いので、どんどん同時進行で片っ端から会っていく。そうなるとどうしても、半分浮気のような形式になってしまう。
いままさにそんな塩梅なのですね。いままでモテてこなかったのに2人も候補者がいて、どっちもこれだという決め手がない。パパ活女性は少しでもご飯代を負担してくれるようになるのなら、もうなにも言うことはありません(こないだなんて夕食、カフェ代全額負担でしたがありがとうの一言すらありませんでした。しれっと先に外出てやんの)。
才媛は逆に完璧すぎて、わたしとまったく釣り合ってないのがあかん。なんで相手してくれてるのか実に謎です。これはわたしのほうに瑕疵があるパターンですが、生まれや育ち、学歴なんかをいまさらどうすることもできないので、すでに厳しい気はしています。
これからどうっすかなあ。なんというか、マッチングアプリはおろか女性と付き合うことそのものが向いていない気がしてきました。いままでの生活習慣は①土曜日に雑事、②日曜日に山で統一されており、これ以上なにか別の用事を入れる余地がありませんでした。ソロ充してしまっていたのですね。この2人がうまくいかなかったらもう、一生独身路線にシフトしてもよいかもしれません……。
2 今回の趣旨
前回の記事では、著者は国見岳直登~国見峠以北の稜線を歩きたいがためにムチャクチャなルートを構築、半死半生、這う這うの体で帰還したという顛末に陥ったのでした。こういう半黒星みたいな山行を放っておくのは山屋としての沽券に関わります。そこでなんとしても、国見岳直登から北進するルートをレギュラー化しなければならない。
そうした意図のもと、GWに1泊の行程を組みました。コースは以下の通りです。本ルートはいままで培ってきたバリルート開拓の、いわば総決算とも呼ぶべき一大事業となりました。
1日め
春日村中郷周辺~とりつき~NYK中継局~791メートルピーク~国見岳~国見峠~虎子山南峰~虎子山~1013メートルピーク~笹刈山~ブンゲン~奥伊吹スキー場リフト最高点~1時間程度の道迷い~品又峠(幕営)
日時 2023年5月4日(木曜日)
天候 快晴 無風、初夏のような暑さ
メンバー 強化人間331(単独)
装備 テント泊一式、ほか
距離 約15キロメートル
所要時間 8時間55分(うち昼休憩30分、その他小休止含む)
備考 リトライ
3 地獄の始まり
今回は1日めを8時間程度、2日めを7時間30分程度と見込んでいました(いきなりネタバレ:2日とも当然のように超過しました)。連泊登山としては若干長いけれど、それほどハードでもない。この通りいけばそうだったでしょうね……。
荷物の準備をしている際、のっけからやらかしました。水筒がしっかり閉まっていなかったらしく、500ミリリットルが1本まるまるあかってしまったのです(岐阜弁ではこぼれることを「あかる」と言います)。このときは軽くなってラッキー程度に考えていたのですが、これがボディブローのようにじわじわ効いてくることに。
8:55、春日村中郷の材木置き場に車を停め、出発。序盤のとりつきは急登なので、うまいこと踏み跡を辿って九十九折に登ってください。じきに傾斜は緩みます。
比較的道はよいです。このへんは前回の記事で詳述しているので、巻きでいきますよ。
9:15、NHKの中継局。ここらへんまでは非常によい道です。どんどん行きましょう。
コメントに困るのが、こういうなにを意図して撮影したのか不明な写真ですね。山行自体が3週間近く前ですし、こんなモン撮られてもどないせいっちうんじゃ……。
10:10、791メートルピーク着。この直前はけっこうキツめの藪でして、うまいこと回避しながら登ってきました。その少し前に尾根が直角に振っている部分もあるので、地形図をよく参照しましょう。
さあ791メートルピークを過ぎると国見岳直登尾根名物、藪とカレンフェルトの岩石ディフェンスが始まります。つい1週間前に来たばかりですので、こうした障害物に驚くことなくスイスイいけます。
前回参照したブログの記事は、本ルートを楽勝だと記載しており、わたしは見栄っ張りが書いたにちがいないと判断していました。ところがどっこい、性急にどんどん行くのではなくちゃんとルートを見極めていったん立ち止まるのを意識すれば、案外進退窮まるようなことはないようです。
前回は適当にガシガシ登っていたので、そのへんの細やかな気配りができていなかった。そうした意味で、山も女性も同じですね。それはそうと850メートル付近、垂直に近い崖のような岩場があるのですが、前回はここでたいへん往生しました。その反省を生かして右に巻いてみるとあら不思議! 割と苦労もなくすいすい行けてしまいました。ルートファインディングって大事なんやなあ。
などと思いながらルートを選定していると、なんと! 見てください、鹿の角ですよ鹿の角! うわあ、柄にもなくムチャクチャ興奮してしまいました。鹿ってあんまり人の通る道に――本ルートが人の通る道なのかはさておいて――出てこないので、死体や骨なんかは深山幽谷の奥深い山にしかないそうですね。
それがこうしていま、こうして目の前にあるんですから、興奮しないほうがおかしい。バリルートを攻略するうえでの役得といえましょう。たいへんよいものを見られました。
下生えのあるか所も。みっちり詰まってますね。太陽光の届きにくい林床はもっとも生存競争の激しい現場であります。われわれはコケやお花を見て「まあ綺麗!」とかなんとか、手を組んで瞳に星を散らしているけれど、当人たちは少しでも陽光のおこぼれにあずかろうと必死です。植物の世界は争いのない、牧歌的な生活などでは全然ありません。
花の多い山域と名高いだけあり、足元をみやると色とりどりの可憐なお花たちが。これはヒメレンゲですかね。よそのサイトをカンニングしてるので合ってるはず。
尾根芯に岩がデデンと鎮座しています。これを右側からうまいこと巻いてください。一見登攀不可な雰囲気でも、よく観察すれば必ず登れそうな道はあります。
この子はおそらくフデリンドウという名前かと思われます。画像検索の結果なのでかなり怪しいですが。みなさんどうやって名前覚えてるんでしょうか? 山屋はみんな植物学を大学で専攻しているのか!?
あれだけルートファインディングがどうのこうのと言っていたくせに、激登り&激藪地帯に突っ込んでしまいました。藪に掴まりながら身体を押し上げ、傷だらけになりながら踏破。前回こんなひどい道を通った記憶はないので、今回はこのあたり適当に登っていたのでしょう。反省。
振り返ると見事な景色が元気づけてくれます。この日は初夏のような陽気で、汗が次から次へと滴り落ちていきます。拭っては水筒から水を補給のくり返し。連泊登山なので水はなるべく節約したいのですが……。
標高1,000メートルあたり、一瞬だけ道がよくなります。これホントに一瞬ですので、「わーい、このままボーナスステージが続くんや」と誤解してはいけません。
ここまで来ればあと一息なんですけど、稜線に出る直前はどこを歩いても藪だらけでけっこう苦労します。薄いところを見繕って突破してください。よっこらせと稜線へ詰め上げたら、5分ほど南下し、
11:55、国見岳(1,126メートル)に到着。出発は8:55なのでまる3時間ですか。あれ、前回は2時間50分で登ってたはず。2回めの慣れた山行なのに10分余計にかかったというのはどうにも腑に落ちませんが、相変わらず眺望に優れていて、
伊吹山方面の大展望、
春日村方面と、国見の名に恥じない景色であります。5月上旬、山々はすっかり新緑一色に染まっていますね。
先は長いですので5分程度で休憩を切り上げ、国見峠へ向かって全速前進です。
国見峠への道にもお花が咲いていました。これは……? わたしのような無精者にはタンポポとしか思えません。十中八九ちがうでしょうから、植物学の博士号を持つ山屋の方、ぜひとも教えてください。
タンポポのような花以外にも白い可憐なお花が。これはイブキハタザオでしょう。画像検索で寸分たがわない写真が出てきたので、ちょっと自信あり(大口叩くなや、ちがってたら恥かくぞ……)。
一度稜線へ出てしまえば道は明瞭、さながらベルトコンベヤであります。ザクザク下っていき、
12:30、国見峠着。かなりお腹も空いてますが、ここからまだまだ長い。前回と同じく南峰まで行ってしまいましょう。この日はGWの中日で絶好の登山日和だったのですが、車の台数はそこそこ。北尾根は普段から人の往来の少ないたいへん静かな登山道であります。
稜線へ出るまでは急登が続きます。すきっ腹を抱えている身としては、非常につらい。
稜線に出てからもけっこう南峰までは距離があって、まだかまだかとつぶやきながら気力で踏破。
南峰の写真はいちいち撮ってませんが、まるで通路のような非常に地味なピーク。到着は13:05でした。ここでランチとし、13:35、発。この時点で水がけっこうなくなってきてて、序盤にやらかしたのが効いてきてます。幕営地の品又峠には地形図上水があるような表記でしたが、もしなければ完全に詰みです。大丈夫なんかこれ……。
13:45、虎子山(1,183メートル)登頂。ちなみに読みは「とらす」です。なんで難読にするかなあ。南峰と異なり、本峰であるこちらは眺望にも優れていて、
奥美濃の眺望がデデンと。前回の記事でもまったく同じ構図の写真をアップしていた気がしますが、何度も撮影したくなるほど雄大だ、と好意的に解釈してください。
三角点を通過し、
はるか北へ伸びている縦走路をひたすら歩いていきます。藪もなくペナントもしっかり巻いてあり、人も皆無。穴場スポットではないでしょうか。
ヤマツヅジですかね(またちがってそう)。
笹刈山手前の急登。堪えるんだな、これが(茨城の魅力を問われた際の模範解答のていで。→ないんだな、これが)。
15:25、笹刈山(1,212メートル)登頂。手作り道標もしっかり完備されてます。
山頂周辺の様子。無理に笹を刈り払い、どうかこうかスペースを作った苦労が偲ばれます。
伊吹山を正面にロック。雄大な光景です。
陽も暮れてきたし、巻きで行きますよ。ブンゲンには16:00着。品又峠には17:00くらいには着いていたい。この日は照りつける直射に耐えかね、ガブガブ水を飲んでしまっていました。この時点で残り350ミリリットル程度、地獄の節水登山の始まりです。
気持ちのよい樹林帯をぼちぼち歩き、
16:20、リフト最高点に。ここからしばらくは幅の広い尾根をゆったりと歩きます。
ブナ林の林立する、非常に解放感のあるエリアですね。踏み跡を辿り、
標高1,000メートル台の景色を楽しみながら、
途端に悪くなる道に辟易しつつも、
ジリジリ進んでいきます。このへんはちょっと道を外すだけで藪地帯に突っ込む剣呑なエリア。適当に軌道修正して県境をトレースします。
16:45、前回春日村へ向けてドロップした小ピークへ到着しました。ここから県境に沿って歩こうとするも、すさまじい藪のディフェンスにあえなく敗退。少し北へ歩いたところに道がついていたので、脳死でトレースします。
10分ほど歩いているうちに、どうもおかしいぞと長年培ってきた強化人間センサーが反応、ジオグラフィカでチェックしてみます。すると現在地は県境ではなく、東へずれた尾根を下ろうとしていることにようやく気付きました。
とはいえこれ以外に道はないし、きっと県境を外しているのは一時的なもので、すぐに合流するだろうと高を括って続行するも、一向にそうした気配がない。どんどん県境から外れていってしまっている。仕方ないのでいったん引き返し、ほかに分岐がなかったか目を皿のようにして探します。
時刻は17:00をすぎ、陽も暮れてきて、水も切れかけている。これまずいのでは? とにかく前回ドロップ地点にまで戻り、ひたすらあたりをウロウロするも道らしきものはありません。種明かしをすると、ここだけ県境尾根を辿るのではなく、スキー場のゲレンデを素直に降りていけばよかったのですが、事前の予習を怠って「とにかく県境を辿りゃいいんだろ? 笑」というノリのわたしにそんなことわかるはずありません。
こうなりゃ強行突破や! と決心し、藪地獄の道なき道をジオグラフィカを頼りに進んでいきます。しかし現在位置がどう考えてもおかしい。地図では県境尾根が品又峠まで続いているはずなのに、現場は尾根が沢に没してしまっている。地形図と現場で著しい齟齬があるのですね。地図――というかジオグラフィカ――だけが頼りのわたしにとって、これは致命的であります。もうどうしようもない。
藁にも縋る思いで情報を検索し、品又峠へのルートをネット上で確認します。電波が入ったり入らなかったりで非常にやきもきしましたが、ようやくわかりました。後発のために明言しておきます。
品又峠へはゲレンデを降りて到達せよ!
備忘録として此度のバターン半島死の彷徨を詳細に記録しておきます。
よろしいですか、ゲレンデの奥にもこうして道は続いていますが、品又峠へ行きたい方はこれを無視し、
ゲレンデをそのまま下ってください。わたしのように県境をなにがなんでも辿るというイデオロギーに支配されていなければ、自然とこちらへ吸い込まれていくはずです。
いったんゲレンデルートに乗ってしまえば、よほどの間抜けでない限りは大丈夫です(ジョジョの奇妙な冒険のノリで。→だが間抜けは見つかったようだ)。そのままザクザクひたすら降りていけばOK。要所にペナントも巻いてあります。
18:00くらいにはテント泊を始めたい。暗くなるとただでさえ億劫な幕営がピラミッド建築並みの重労働と化しますので……。
スキー場の施設らしき建物が眼下に見え始めました。なにやらバイクの排気音があたりに響いており、この日は品又峠界隈に走り屋とおぼしき連中が勢ぞろいしていたようです。
そして18:00ジャスト、ついに品又峠へ到着しました。16:45から道迷い状態に入り、18:00着ですから実に1時間15分も品又峠はどこだあ、とゾンビよろしく徘徊していた計算になります。
品又峠にはスキー場の施設がデデンと鎮座する、およそ峠らしくない殺伐とした場所でした。平坦な地点に幕営し、内部へ転がり込み、あとはそのまま眠る……と言いたいところですが、まずは水を汲んでこなければならない。あらかじめ地形図で沢のあることは確認していましたが、本当にあるのでしょうか。なければこの時点で詰みですが、はてさて。
つづく