アンナ(アガタ・チュシェブホフスカ)はポーランドの戦争孤児で、修道院で育てられた。天涯孤独とされてきたが、修道女になる直前に院長から、おばのバンダ(アガタ・クレシャ)の存在を知らされ、会いに行くことに。アンナはユダヤ人で本当の名前はイーダであることを告げられ、イーダの両親が暮らした家を訪ねる旅に出ることになる。
共産主義だったポーランドを逃れ英国で活動してきたパベウ・パブリコフスキが初めて母国で監督を務めた。バンダは酒と男におぼれる検察官だが、国家の治安を守るため尽力してきた人物。それが次第に明らかになる事実の残酷さに耐えきれなくなっていく様子はあまりにも痛々しい。民族や宗教の谷間で揺れ動く少女の心理をチュシェブホフスカが見事に表現している。正義とは何か、国民国家とは何か。重たい問いかけが白黒の画面から発せられる。それにしても、こんなにも胸に響くラストシーンを生涯に何度見ることができるだろうか。2日から、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開。1時間20分。(櫛)
★★★★★(★5傑作 ★4見応え十分 ★3楽しめる ★2惜しい ★1がっかり ☆は半分)